第十五話「第1フロア クエスチョン『パレード』」
―――【FIRST STAGE】 Question『parade』&Big『Lion』
戦 闘 開 始
鏡夜の問いへ呼応するように、『パレード』は真正面から、小細工一切なく鏡夜へ向かってきた。光学迷彩は半分故障しているが、それでも陽炎のように不確かな存在。動きは読みづらい。
かぐやがいるからこそクエスチョン『パレード』はさらに弱くなる、かぐやの光に照らされて『パレード』の影がより鮮明になる。そしてかぐやは駄目押しのようにレーザーで彼を撃ち抜いた。光の線は『パレード』の身体の表面で滑って逸れる。かぐやは不愉快そうに言った。
「光の屈折で姿を隠してるから、光も屈折しちゃってるのね。故障してるのにすごいわ……屈折の演算を局所的に割り振ってるのかしら? いい脳みそ積んでるのね!」
かぐやはレーザーの射出をやめて、通常の光で照らすことに集中する。そちらの方が有益な仕事だ。
『パレード』と直に対峙する鏡夜は《鏡現》を即席の空間に固定された盾にする。『パレ―ド』の突きは鏡に当たり弾かれる。しかし『パレード』もさるもので、即座に鏡の盾の横から回り込むように鏡夜を刺そうとする。
鏡夜はヒョイッと突起を避け、さらに《鏡現》の盾を攻撃に合わせる。
鏡の盾と回避を活かして鏡夜は『パレード』の猛攻をしのぐ。
大獅子は鏡夜の方ではなく華澄と桃音とバレッタの方へ向かった。言っては悪いが、大獅子はカモだ。強者である桃音と華澄とバレッタが取り組めば、すぐに片付く。
鏡夜の分析は正解だった。大獅子は落ち着いて戦えば新米冒険者でも倒せるようにデザインされていた。
ただ、無音の暗殺者によって無理難題になり果てていただけなのだ。
光学迷彩によって透明な八面体が頭・身体・右腕・左腕・右足・左足を構成している人間型兵器。柔らかい荒野の土に自重で八面体の鋭角を刺す。沈むように刺さった足は、途中で自然に止まる。腕も同じだ。そう。人体に対しても、生物に対しても、機械に対しても。鏡夜に対しても。
お前を暗殺で刺し殺す。ただ一点を突き詰めたロボット。クエスチョン『パレ―ド』。
その殺意を刺す刺す刺す刺す。
数多の《鏡現》が『パレード』の、その凶器を防ぐ。鏡夜は鏡の後ろからステップターンして、回り込むように蹴りをいれるが、『パレード』はまるで武術家のように流していなし、返すように刺す。
鏡夜は回避・防御しつつ、恐ろしく思う。本当に強い。まるで最初から鏡夜の性能や異能を把握しているようだ。
こんな高性能の殺人機械が、姿を隠し、大獅子と連携していたのだ。勝てないのも道理だろう。
しかし、残念かな。『パレ―ド』は死に体であり、見えている弱点へつけこまないほど鏡夜は甘くはない。
鏡夜は『パレ―ド』の足元に小さな《鏡現》を空間に固定するように作り出す。『パレード』は足をつっかけて身体を傾けた。
鏡夜は《鏡現》のナイフを手の中に作り出す。
先ほどの華澄の首への斬り込みは、しっかり大ダメージになっているのだ。
(【首】が弱点になってる。つまり―――)
鏡夜は全力で『パレ―ド』の首を鏡のナイフで真横に切り裂いた。極限まで鋭い刃によって『パレード』の頭が音もなく千切れた。後ろに飛んだ頭がおちる。
そしてパレードは頭とは逆方向、つまり前のめりに倒れた。
「私の鏡の方が鋭いようですね?」
同時に大獅子は鏡夜以外のパーティメンバーによって跡形も残らないほど鎮圧されたのだった。
――――【FIRST STAGE】 Question『parade』& Big Lion――――
Clear!
《またお前か。間に合わせとはいえ一月は持つと思ってたんだがな》
完全に破壊されたはずの『パレード』頭部から声がした。歪な音声。男か女かもわからない意図的に杜撰にされたボイスチェンジャー。
その声は鏡夜に向かって言った。
《誰も追いつけないほどに走ったところで、誰もお前を褒めてくれない。少しくらいは、歩みを緩めてもいいんじゃないか?》
「『パレード』?」
《残念。〈Q‐z〉首領 キー・エクスクルだよ》
鏡夜はものすごく嫌そうな顔をしながら『パレード』の吹き飛んだ頭部を見る。〈決着〉の前に立ち塞がる最大の障害、その親玉だ。好意を感じる方がおかしい。
鏡夜は舐められないように……それ以上に決意を込めて言った。
「……妨害なんて無意味ですよ、きっと。私が踏破しますから」
《ははは。いいさいいさ、どんどん挑戦するがいい。希望の火を絶やすことを、俺は目的にしていないからな》
「……?」
言ってる言葉が要領を得ない。会話が成り立ってる――のだろう。おそらく深い意味をこめてキー・エクスクルは喋っている。しかし鏡夜には当の深い意味がまるで理解できなかった。人間性の欠片すらつかめない。本人がいれば紅眼を通して弱点を見通せるのだが。
煙に巻かれているような気分だ。……どうであろうと、鏡夜のスタンスは変わらないのだけれど。
「私は必ず、〈決着〉へたどり着きます。残念ながら、歩みを緩める予定はありませんね」
《“愛が大きければ心配も大きく、いささかなことも気にかかり、少しの心配が大きくなるところ、大きな愛もそこに生ずるというものだ”》
「は?」
《お前は止まるよ。確実に――それだけ言いたかった。なに、勝ち誇るための予告だ。流せよ!》
そう大きな声でエクスクルは言って、『パレード』の頭部は爆散した。破片から《鏡現》で自分を守りつつ、鏡夜は呟いた。
「ろくでもない……ですねぇ」
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