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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
2章【告白編】

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38 ジレンマ

最近、クエリーシェルが変だ。いや、変というかなんというか、やけに接触が多い。


今まで私の帰りが遅いこともあったのに、常に私の帰りを待っていてくれるし、見送りもしてくれる。その際にやけにくっついてくるというか、腰を持たれたり、腕を差し出されたり、となぜかエスコートされることが多い。


なかなか顔を合わす機会がないときは、わざわざ私の自室に寄ってくるし、自室に招いて1日あったことの会話などをする。


一緒にいてくれるのは嬉しいが、周りも私達の様子に気づいたようで、バースには「今日もお待ちくださっていましたよ」と帰り際にからかわれるように言われたし、ロゼットにも「まるで忠犬のようで、可愛らしいですね」と微笑まれた。


なんとなく指摘されるのは不本意で、ちくりとクエリーシェルに抗議はしたものの、私がリーシェと共にいたいのだ、と言われてその後は何も言えなかった。


(何でこんなに急に)


そろそろ旅支度も佳境である。資源物資や食糧、武器や献上品など大体のものは用意した。


船もさすがに国王の大きな船で行くわけにはいかないので、元々あったものを再利用してそれなりの船に仕立ててあるが、秘密裏の旅路であまり目立ちすぎてもよくないので、それなりに装備は軽量化し、最近やっと完成した。


(やることがいっぱいで、あんまり他のことを考えたくないのに)


船旅前に関係をギクシャクさせたくはないのだが、クエリーシェルがガンガン距離を詰めてくるのに、少しずつひいてしまっている自分がいるのに気づいて自己嫌悪に陥る。


嫌いなわけではない。寧ろ好きだ。それは自覚した。だから距離を詰めてくれるのは嬉しい。でも、こんな身の上の死神のような私にでなくていいんじゃないか、とも思う。


(先日の件で、お腹に大きな傷だってできているし)


これはジレンマだ。好きだからこそ拒絶したくなる。彼には幸せになってもらいたい。だからこそ、私とは結ばれないほうがいい。


薄々気づいていた、彼が少なからず私に好意を抱いてくれていること。だから、わざと気づかないフリをしていた。でも、そろそろ限界だ。


(私はどうすればいいんだ)


好きなのに、好きになってはダメな人。嫌いになれたらいいのに、嫌いになれない愛しい人。


今まで感じたことのない感情に揺さぶられる。私は自分が理知的な人間だと思っていたが、案外そうではなかったらしい。


(成人したところで私は私のまま。全然何も変わらない)


成人したら、大人になったら、もっと成長していて色々なことを知って、色々なことができるようになっていると思っていたのに、現実はただ私が年を取っただけだった。


中身は私のまま、何も成熟なんてしていない。あの生意気で寂しがりの小娘が、ただ年を重ねただけだった。


(こんなとき、姉様ならどうするんだろう)


漠然とそんなことを考える。私にはない意見をくれたのはいつも姉だった。私という存在を一番に理解して、先行きを照らしてくれたのが姉だった。だが、その姉はもういない。


これ以上考えたくなくて、布団に潜り込む。明日もまた、クエリーシェルに会うんだろう。そしたら、どんな顔をすればいいのか。


またまた、そんな考えがぽこぽこ浮かんできて、その考えを払拭するように頭を振ると、ギュッと瞼を閉じた。


(余計なことは考えない、考えない、考えない!!!)


そして私は寝ることに意識を集中させる。寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ、と自分に言い聞かせるように何度も何度も心中で唱える。するとだんだんと思考に靄がかかってくる。


そして、疲れも後押しして、スッと身体が軽くなる感覚を得てそれに身を委ねると、いつのまにか意識を失っていた。

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