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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
2章【告白編】

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37 男達の作戦会議

「は!やっとその気になったか。いい加減、この中途半端なやり取りには飽き飽きしていたところだ」

「お前の場合は、ただ面白おかしくしたいだけだろう」

「悪いか?今、昨今の情勢のせいで娯楽など大したものがないのだから、仕方ないだろう」

「私達のことを娯楽と認識するでない」


語気を強めにすれば、「あぁ、コワイコワイ」とわざとらしく肩を竦めてみせるクイード。そして、席につくと「お前も座れ」と促される。


「で、どうするつもりだ?」

「どうする、というのは具体的にはないんだが」

「何だそれは。いいか、あの女は比較的面倒な女だぞ?やるなら徹底的に囲い込むくらいしないと進展しないぞ」

「……どういう意味だ」


リーシェを面倒な女だと揶揄されて、思わずムッとする。だが、クイードは「まぁ、落ち着け。私の話を聞け」と、さも知ったような口ぶりだ。


「ちなみに先に言っておくが、お前が懸念している他の男に取られる、という可能性は限りなく低いぞ」

「どうしてわかる」

「よく考えろ。出自もそうだが、彼女の性格上『立場を弁える』ということがよく分かっているだろう?実際、元皇女だというのに、現在もクエリーシェルを主人として、メイド奉公しているではないか。敬語も動作も常に(へりくだ)っていることが多いし、私に対してだけでなく、身分で言ったら限りなく彼女よりも低いお前にも、だぞ?」

「た、確かに」


言われている内容に心当たりがあって、素直に納得する。


「あの娘は人一倍責任感が強い。だからこそ、この国のために無理難題を課せられても頑張って働いてくれているが、あれはほぼほぼキャパオーバーだ。現国王をしている私が言うのだから間違いはない。おおよそ、何かに尽くすことで自分の生を見出しているのだろうよ。ある意味健気よな」


自分よりも過ごしている時間が短いはずのクイードに、彼女の性質や思考を言われて動揺する。国王の立場から、人を見る目は幼少より養われているのは理解している。


だが、それでも自分が一番に理解していたかったというジレンマが脳内をぐるぐると回って、勝手にモヤモヤしてしまう。


実際、疲労が見えているのは事実だったが、ここのところすれ違いが多くてあまり話していなかったせいか、気遣いが足りなかった。


(こういうところが、私はダメなんだな)


人付き合いをしてこなかったせいか、やけに人と壁を作りがちな自覚はある。そのせいで、現状上手く距離を縮めることができていないのは自業自得ではあるが、だから自分ではなかなか解決策が思い浮かばなかった。


「クイード的にはどうすればいいと思う?」


珍しく弱気で頼ってくるクエリーシェルに、クイードも真面目に取り合うことにした。腐れ縁で繋がっていたこの男がこうも何かに執着するのは珍しい。そして、独占欲という人間じみた欲求を持ったことに興味を持った。


(そういう意味では、あのリーシェという女は凄いやつだな)


自分では、こうもこの男を変えることはできなかった。それがなんというか口惜しい。自分ではできなかったことをあの女がやってのけたことは癪だが、苦労し、無駄な人生を送っていたこの男にとって良かったことだとも思う。


(この初恋は叶えんわけにはいかんな)


「まぁ、このままでは一生結ばれることはないだろうな。このまま、ではな」

「というと?」

「先程言った、現状他の男に言い寄られて奪われる可能性は限りなく低いと言ったが、可能性はなくはない。それは何故か。彼女の責任感を揺らがせることができれば、可能だからだ」

「なる、ほど?」


よくはわかっていないながらも返事をすれば、見透かされたように溜め息をつかれる。


「ちゃんと理解しろ、実際にあの女はよく言い寄られている。それは事実だ。周りがよく噂しているし、私が目にしたこともあるくらいだからな」

「そ、そうなのか?!」

「あぁ、だからもしリーシェの気持ちが少しでも揺らいだら一気に畳み掛けてくる可能性もなくはない。あの女の好みは知らんが、見た目や生活、趣味など人には自分と似た者を好む傾向がある。だから、リーシェと好みが抜群に合う者がいたら、そいつに心揺らぐ可能性はなくはないぞ」


色々と知らぬ事実が次々に出てきて、正直自分もキャパオーバーだった。だが、ここで混乱しているわけにもいかない。心揺らがせるのが他の男でなく、自分でなければならないのだから。


「心揺らがせるにはどうすればいい?」

「まず自分はどうされたら心が揺らぐ?」


質問を質問で返されて考え込む。自分がされて揺らぐ、動揺するといえば接触するときだろうか。あとやけに距離感が近いとドキドキする。


「接触されたときとかだな」

「そうだ!接触!ようは肌を合わせることだ!」

「声が大きいぞ、クイード」


だんだんと声が大きくなるクイードに釘を刺す。というか、この文言だけ聞かれたら、恐らくあらぬ誤解を産むことになる。


「要は前回きちんとしなかったキスとかだな。今度こそ口にしろ、いいな?」

「口って、唇、ということだよな?」


当たり前のことを確認すると、クイードがあからさまに目を吊り上げた。


「当たり前だろう!ムードを作って唇を奪う!絵本でも描かれていることだ。いいか、これを旅立ち前までにしろ!それが課題だ」

「旅立ち前って、あと半月じゃないか」

「それで決着つけんと、船旅というイレギュラーな空間でどんどん調子づくやつはたくさんいるぞ?だから、先に関係を作っておけ。関係さえはっきりさせれば、そこは律儀な女、余所見することなどないだろう」


言われて確かに納得することは多い。だが、いきなり口づけをするだなんて、セクハラにならないだろうか。それで嫌われたりなどしたら、目も当てられない。


「ふん、何を考えてるか何となく想像はつくが、キスを拒まれた時点でお前の脈はなしだ。その時点でスッパリ諦めろ」

「な!なぜだ!?」

「当たり前だろう、ここまで一緒にいて関係もそれなりに良好だというのに、キスを拒まれたら恐らくそれは生理的に無理ってやつだ。女は好きな者に対してならそれなりに強引なことをされても受け入れる。それを受け入れないということはつまりそういうことだ。ということで頑張れよ」


ポン、と肩を叩かれる。進むも進まぬも地獄ならば、進むしかない。


「わかった、頑張ってみる」

「タイミングや状況はきちんと読めよ」

「あ、あぁ、そうだな」


クイードに言われたことを、何度も何度も頭の中で反芻する。


(大丈夫だ、やれる。いや、やらねばならぬ)


覚悟を決めると、クイードに別れを告げ、家路に急ぐ。時間は限られている。ならば、できる限り足掻いてみよう、とそう思った。

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