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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
2章【告白編】

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16 遭遇

「リ、リーシェ、どうしたのだ?!」

「あ、いえ、何も……」

「何もない顔ではないだろう!いいから私の部屋へ来なさい」


ロゼットの部屋からの帰り道、自室に戻ろうとしたら運悪く?クエリーシェルと鉢合わせてしまった。先程、嗚咽まじりに泣いていたときより幾分かマシにはなっているだろうが、それでもきっと未だ目は泣き腫らしていることだろう。


(というか、そもそも何で私の部屋の前に)


私のことを待っていたのだろうか。何か用事があったのかと不思議に思いながら、涙が鼻からも垂れてきそうになるのを堪えながらついていく。


というか、腕を掴まれてしまっているので、逃げることすらできずに、ただ連行されるがまま彼の部屋へと連れて来られた。


「そこに座りなさい」

「はい」


椅子に座らせられると、彼はそのまま自室を出て行ってしまう。


(なんなんだ、わざわざ呼んでおいて)


不思議に思いながらも、勝手に退室してはまた連れ戻されるだけだろうと思い、そのまま部屋の主を待つ。


「待たせたな」

「いえ、それほどでも」

「明日は登城だろう、そんな顔で行っては変に勘繰られる」

「そう、ですね」


そう言って渡されたのは温めたタオル。あぁ、目元を温めておけ、とそういうことかと納得し、温んだタオルを目元に当てておく。


目を塞いでいる状態なので全く前は見えないが、特に何かされることはないだろう、と気を抜く。


「で、どうしてそんな顔をしていたんだ」

「いや、ですから、ケリー様には関係な「関係ないとは言わせないぞ」」

「随分と強引ですね」


彼の表情は見えないが、恐らくきっと憤っているのだろう。彼は最近、隠し事されることを嫌う傾向にある。かと言って、私にはどこまで話してよいものか正直わかりかねるので、判断のつけようがなかった。


「そんなに私は信用ないか」

「いえ、そういうわけではなく」

「では、どういうわけなのだ?」


追及されて言葉に詰まる。言われて確かに、はぐらかしているということは、つまりは信用に値しないと言っているのも同義である。


(そうか、私は勝手に自分で周りに壁を作っていたのか)


素性が明らかになったことで、変に意識してしまって、壁を作ってしまった自分を恥じる。彼のそばにいたいと思っていたのに、私がこんな態度では誰が信用しようものか。


(人には人馴れしろだの、領主としての役割を果たせだのなんて偉そうなこと思いながら、自分はどうだって言うのだ)


己の行いが恥ずかしい。そうだ、この人は信頼に値する人物である。だからこそ、私はここに留まりたいと願い、ここに置いてもらっているのではないか。


「申し訳ありませんでした。ケリー様のことは信頼していますし、信用してます。泣いていた理由はこれです」


そう言って、ポケットから先程ロゼットにもらった肖像画を差し出す。クエリーシェルは素直に受け取ると、そのままじっくりと目を通したようだった。


そして、肖像画と私を交互に見やると、何かに気づいたようで口を開ける。


「これ、まさかとは思うが」

「私の家族です」

「そうか、よく似ているな」


食い入るように見られ、だんだんと恥ずかしくなってくる。当時の私は恐らく10歳くらいだろう。幼いときの自分を知っている人物など限られているので、彼に知られることがなんだか面映ゆかった。


「そろそろ返してください」

「あ、あぁ、すまない。ありがとう」

「いえ」


沈黙。この城は森林に囲まれているので、たまに獣の声や虫の声などが聞こえるくらいで、静寂そのものだった。だから、この沈黙が余計にその静寂さを引き立てる。


「先程、ロゼットさんからもらったのです。クォーツ卿が持っていたらしく」

「あぁ、それでロゼットは日中席を外していたのか」

「そうなのですか?」

「誕生日会の用意は戻ってきたらすぐやるから、と言ってな。慌てて何処かへ行ってしまったから何事かと思っていたのだが、そうか、こう言うことだったのか」


わざわざ私のために用意してくれたことに、再びじんわりと涙が滲む。恐らく、これらのものは王城へと押収されていただろうから、急いで取りに行ったのだろう。


許可も取らねばならないといけないだろうし、そもそもクォーツ家の娘、あらぬ疑いも掛けられたのではなかろうか。


「また、明日改めてお礼をします」

「あぁ、そうだな。それと、せっかくだ、そのまま持っていても仕方ないだろう?額を用意しよう。部屋に飾っておけるように」

「ありがとうございます」

「リーシェは母親似だったのだな」

「昔はよく言われました」

「そうか」


(やはりこの人は優しい)


その優しさが身に染みる。ロゼットもクエリーシェルも、皆、優しすぎるほど優しくて、涙がほろほろとまた溢れ出すのだった。

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