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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
1章【出会い編】

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47 ステラ

占術と神秘の国と呼ばれるペンテレアは、ここコルジールより東北の島国として存在していました。ステラはそのペンテレア国の二女として、生を受けました。


姉のマーシャルとは12才離れていて、彼女はとてもおっとりしていて慈悲深く、愛嬌もあり、誰からも愛される存在でした。


また、彼女には母からの血筋である占術の能力として幼少より「千里眼」を持ち合わせていました。


ステラは姉からたっぷりと愛情をもらいましたが、いつでも周りや両親から構われるのは姉ばかりと嫉妬をし、姉とは違った分野で活躍しようと占術以外のものを自ら学びました。


戦法・体術・気象・気功術・薬学・錬丹術など、ありとあらゆる興味を引くもの全てを吸収するかのごとく、知識として吸収していきました。


ある日のこと、姉のマーシャルは婚約をしました。


相手はゴードジューズ帝国のバレス皇帝の息子、バラムスカです。バレス皇帝が占術を好んでいたこと、またペンテレアの動植物の豊かな土地に目をつけたのだと思います。


ペンテレアとしても、強大な力を持つ帝国との同盟によって国が安泰することは、願ったり叶ったりでした。


そして姉とバラムスカは結婚。彼らは政略結婚と言われましたが、とても仲睦まじいカップルでした。


しかし、その幸せは続きませんでした。


姉は夫バラムスカの死を千里眼で予見しました。本来ならそこで真実を伝えねばなりませんでしたが、彼女は嘘をつきました。


バラムスカへの愛ゆえに、自分の能力を否定し、予見した未来とは違ったことを伝え、彼を死から回避させようとしました。


しかし、運命とは残酷なもので、彼は死を回避することができず、亡くなってしまいました。


そして、この事実を知った皇帝は激高し、マーシャルが息子バラムスカを殺した、と大義名分をつけ、何もまだ用意も対策もできていないペンテレアを攻め込みました。


一昼夜のうちにペンテレアは陥落し、ステラのみ、姉のマーシャルの手助けによって運良く逃げ延びることに成功しました。


ステラは逃亡先にペンテレアの王妃の遠縁、マシュ族を頼り、マシュ族と共に生活しました。彼らは占術を生業とし、ステラはそこで狩りや料理を身につけました。


しかし、マシュ族との生活も長くは続かず、マシュ族の長は薬物中毒になってしまい、薬物に対する知識がないマシュ族の者へ汚染はどんどん広がっていき、やがて内部で争いが起き、彼らもまた滅んでしまいました。


ステラは再び行き場をなくしましたが、マシュ族との同行の際に出会った貴族の主人に能力を買われ、迎えられることになりました。そこで、ステラはメイドの業務を一通り学びました。


主人が亡くなるとその息子が跡を継ぎました。


ですが、私がマシュ族出身であること、そのマシュ族が内部抗争で(つい)えたこと、拾ってくれた主人が私を拾ったあと半年で亡くなっていることなどを理由に、ステラを気味悪がりあの例の旧領主の人身御供をこれ幸いと私を差し出しました。


「以上がステラの人生です。マシュ族に入った頃より、ステラの名を捨て、リーシェとして生きて参りましたが、このように私の行く先々では不幸なことが起こります。恐らく、私は不幸な星の下に生まれたのでしょう。だから安らかに死を受け入れるように努めていたのですが、結局はダメですね。結局、私の周りでは不幸が起きる」


今回のバルドルの件もそうだ、私がいるところいるところで災いが起きる。死者も出た、負傷者も出た、私は女神のような姉を嫉妬し羨んだことで、死神を引き連れてしまった。


「そんなことはない!」

「……ケリー様?」


急に大声を出されて、ビクッと身体が跳ねる。そしてそのまま何故かギュッと強く抱きしめられた。


あまりの強さに息が苦しく傷が痛かったが、彼の温もりになんとなく離れがたくて、敢えて抗議はしなかった。


「少なくとも私はリーシェがいることで救われた。人間嫌いだった私が舞踏会に行こうと思ったのも、リーシェのおかげだ。領主の仕事をきちんとしようと思ったのも、リーシェのおかげだ。私はリーシェはいない生活は考えられない。私に、リーシェは必要な存在だ!」

「ふふ、なんだかプロポーズみたいですね」


声を出して笑えば、動揺したのか顔が赤い。この人は年の割に初心(うぶ)である。それが面白くて、可愛くて、愛しかった。


「あ、いや、その、とにかく!リーシェが不幸にしたわけではない。たまたま不幸があるとこに飛び込んでしまっただけだ。少なからずこの国は元から戦乱の火種はあったし、燻っている状態だった。だから今回の件も気にしなくて良い。寧ろ我が国は救われたのだ、リーシェのおかげで助かった命はたくさんある。ダリュードもその1人だし、大公も大変感謝していた」

「そう、ですか」

「そうだ。だから何も責を感じる必要は何もない」

「ありがとうございます」


クエリーシェルの優しさに、じんわりと涙が滲む。泣くまいと思っていたのに、感情を殺すと決めていたのに、彼のそばにいるとそれもままならない。


やはり姉は何でもお見通しだったことを思い知って、悔しくて嬉しくて、さらにぽろぽろと涙が溢れるのだった。

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