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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
6章【外交編・ブライエ国】

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54 邪魔者

「〈おかえりなさい……っ!〉」


ブライエ国の城の前。遠くから小さい物体がちょこまかと動いているのが見えたと思えば、そこにいたのはメリッサだった。


「〈メリッサ!ただいま!!〉」


彼女は物凄い速さでこちらに向かって駆けてきたと思えば、その勢いのまま飛びかかってくる。


受け止めようとした私は腕を広げて構えるも、さすがに自分と頭一つ分くらいしか変わらない大きさのメリッサの勢いには耐えきれず、彼女を受け止めたはいいものの、思いきり尻餅をついてしまった。


「〈ご、ごめんなさい!ステラ、怪我はない!?〉」

「〈えぇ、大丈夫よ。メリッサこそ大丈夫?痛いところはない?〉」

「〈うん〉」


ステラが帰って来たのが見えて嬉しくってつい走ってきちゃった、と苦笑するメリッサを優しくギュッと抱きしめながら頭を撫でる。するとメリッサは呼応するように私に抱き締め返してきた。


「〈よかった。ステラが無事で、本当によかった〉」

「〈約束したでしょ?必ず帰ってくるって〉」


心なしかメリッサの身長が前よりも伸びた気がする。さらに以前よりも肉付きがよくなったらしくしっかりした身体つきになっていて、さらに髪も伸びたせいかどことなく大人びた印象を受けた。


「[がっはっは。熱烈な歓迎だな、嬢ちゃん!]」

「[シグバール陛下もお帰りなさい!]」

「[おぉ、ブライエ国語が多少話せるようになったか。感心感心。さすがはあやつの孫娘だ]」


拙いながらもメリッサがブライエ国語で話しかけると、シグバール国王は目を細めてメリッサの頭を撫でる。その瞳は師匠の忘れ形見であるメリッサを慈しむような眼差しだった。


「[まだまだ勉強中ですけど。ちょっとだけなら覚えました]」

「[よいよい。何事もコツコツと積み重ねることが大切なのだ。すぐに手を抜くうちのアホどもとは違って、嬢ちゃんは見込みがあるぞ]」

「[へへ。ありがとうございます]」


メリッサが嬉しそうに笑うと、シグバール国王も嬉しそうに微笑む。それにつられて私も微笑み、心が温かくなった。


「[さて、立ち話もなんだ。嫁達にうちのボンクラどものことを話せねばならんから、とにかく中に入るか。嬢ちゃんも疲れただろ?夕飯までゆっくりしておれ。客間を用意しておくから彼と人目を気にせず好きなだけ盛り上がってもよいぞ]」

「[シグバール国王!!!]」


がっはっは、と笑うシグバール国王に顔を真っ赤にする私。


メリッサは訳がわからずと言った様子でキョトンとした顔をし、クエリーシェルも何か言われたことだけはわかったようだが、さすがに内容まではわからなかったようで困惑した表情をするのだった。 





「はぁ……、さすがに疲れましたね」

「あぁ、そうだな。とはいえ私は遠征を何度も経験しているから慣れているが、リーシェにとっては大変だっただろう?脚が痛んだり、日に焼けたりはしていないか?」

「そうですね。脚は多少痛みますが……日焼けも思ったほどはしていないかと」

「ならよかった。だが、日焼けは油断ならんからな。本当に大丈夫かどうか確認しておこうか?」


ベッドに腰掛けているクエリーシェルに腕を引かれて膝の上に乗せられる。少しずつ伸びてきた髪をかき上げるように持ち上げられると、なんだか変な気分になってくる。


「ケリーさまのえっち」

「なっ!?別にそういうつもりでは……っ」


あからさまに動揺するクエリーシェル。


「ふふ、冗談ですよ。ちょっとからかってみました」

「全く。リーシェは……」


呆れるような声を出しつつも、クエリーシェルの表情はどこか穏やかだった。やはり戦場から離れられたことでだいぶ気が落ち着いたようだ。


「ケリーさまは大丈夫です?マッサージとかしましょうか?」

「いや、いい。束の間と言えど、せっかく二人きりでゆっくりとできるのだから寝てしまってはもったいないからな」


クエリーシェルはそう言うと、ゆっくりと私をベッドに押し倒す。上に覆い被されて、恥じらいつつもその大きな背に腕を回すとだんだんと距離が近づいてきた。


「リーシェ」

「……っん……」


ゆっくりと唇が降ってきて、目を閉じると柔らかい感触。胸がドキドキして、きゅうんと甘く疼いた。


「ケリー、さま……っ」

「どうした?苦しいか?」

「あ、いえ、そうじゃなくて……、久しぶりだから、その……なんだか恥ずかしくて……」

「愛らしいな」

「ん……っふ……」


ちゅっちゅっと唇が何度も重なる。だんだんと浅いものから深くなっていき、息が上がっていった。


「んむ……」

「はぁ、……リーシェ……」


コンコンコン……


「!?」


不意に聞こえるノックの音に、ドキリと心臓が跳ね上がる。私はのしかかっているクエリーシェルを慌てて押し退け、ガバリと身を起こすとそそくさと身嗜みを整えた。


「は、はぁい!?」

「お休み中のところ申し訳ありません。ヒューベルトです。お話がありまして、少しお時間よろしいでしょうか?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいね!」


勢いよくベッドから立ち上がっておりると、急いで姿見に向かい、乱れた髪や服を直す。


「……全く。いつも邪魔ばかり入る」

「もう、拗ねないでくださいよ」


ベッドの上で不満げな顔をしているクエリーシェルの腕を引っ張り、身体を起こすと渋々といった様子で彼も立ち上がったのだった。

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