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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
5章【外交編・モットー国】

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58 選択

「〈リーシェさん!ご無事で何よりです。何か、わかりましたか?〉」

「〈しー、静かに。今からここを出ます。すぐに支度してください〉」

「〈え?どういうことですか?〉」


部屋に戻ってきて早々声を潜めてヒューベルトに言えば、途端に険しい顔つきになる。


「〈私達、罠にかかったようです〉」

「〈罠、ですか?ですが、なぜここで……?まさかバレていたということですか?〉」

「〈いえ。それが、たまたま人攫いの罠にかかってしまったようでして。指名手配のことは知らなそうだったので、身元は今のところバレてはいないようですが、じきにバレる可能性があります。その前に脱出しないと〉」


端的にでも説明すれば、察しのいいヒューベルトはすぐに危機的状況だということは察してくれたらしい。


すぐさまキョロキョロと周りを見回して、状況判断しつつ色々と思考しているようだった。


「〈そうですか、承知しました。では、すぐに用意します〉」

「〈はい。あ、荷物は必要最低限のほうがいいかと。ラクダに載せる余裕もないでしょうから。そもそもラクダも無事かどうか……〉」

「〈なるほど。あ、でも……ミリーちゃん、どうしましょうか?〉」


メリッサを見れば、ぐっすりと眠っているようだった。薬を盛られたのだ、恐らくちょっとやそっとでは起きないだろう。


「〈ミリーは……多分起きる見込みがないので、担ぎます〉」

「〈え、それはさすがに……。起こすなら起こしますよ〉」

「〈いや、実は薬を盛られたようでして。ですから多分起こしても起きません。ですから、私がミリーを担ぐので、ウムトさんは……〉」

「〈いやいや、ここは俺が運びます。さすがに脱力した状態のミリーちゃんを担ぐのはリーシェさんでも無理かと〉」

「〈ですが……〉」


ヒューベルトは片腕しかない状態でメリッサを担ぐとなると厳しい気がする。だが、かと言って私が担ぐのも正直厳しいものがあるのも事実だった。


(あまりここで言い合っていてもしょうがない。どうするか)


ここでどう立ち回るのかを想定する。恐らくこのままではいずれバレて戦闘になるだろう。そうなったときにどちらが身軽なほうがいいのか。


(大立ち回りをするならまだしも、ここは私が小細工やら乙女の嗜みやらを駆使して逃走を謀るのが最も効率的かもしれない)


いざというときはメリッサが守れるほうが身近にいたほうはいい。そうなると選択肢は1つだった。


「〈わかりました。ではお願いします〉」

「〈えぇ、お任せください〉」

「〈担ぐためにシーツで括りましょう。やり方は心得ていますので、まずはミリを背に乗せましょう〉」


片腕のないヒューベルトには大変だろうが、ここは背に腹は変えられなかった。寝ているメリッサを転がして仰向けにさせたあと、ヒューベルトに彼女の腕を絡めたあと勢いよく回転して彼の背に乗るようにする。


遠心力を利用したワザだが、上手くメリッサを背に乗せられたようだった。


「〈では、おんぶ紐のように身体を括りますね〉」

「〈お願いします〉」


手早くメリッサを彼の身体に密着させるようにシーツで括りつける。身体が離れてしまうとそれだけ負担がかかってしまうため、ちょっとキツいくらいに彼らを縛りつけた。


「〈痛くはありませんか?〉」

「〈大丈夫です〉」

「〈重くはないです?意識を失っている人を背負うときは重く感じるものなのですが〉」

「〈大丈夫です。ミリーちゃん軽いですし、ヴァンデッダ様ほどではないにしろ普段から鍛えておりますから〉」


(そうよね。ヒューベルトさんだって、立派な軍人なのだから)


ヒューベルトの言葉に自分が失言してしまったことに気づく。比べていたつもりはないが、今の言葉はヒューベルトを無意識に軽んじていた発言だったと自省する。


「〈そうですか。いや、そうですよね、失礼しました。では、早速脱出を試みましょう。恐らくラクダには見張りがいるでしょうが、ラクダがないとこの先厳しいと思いますので、どうにか奪還して国境を目指そうと思います〉」

「〈わかりました。では、まずはラクダ小屋に向かうということですね〉」

「〈えぇ、そういうことです。先陣は私がきります。ついてきてください〉」

「〈わかりました。よろしくお願いします〉」


できれば窓から出たかったが、さすがにメリッサを背負った状態の片腕のヒューベルトには無理難題なので、静かに部屋を出る。


階段を物音を立てず、バレないようにと進みながらまずは玄関からの脱出を目指した。

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