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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
1章【出会い編】

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28 トラブル

「これがニラって食材か?」

「あぁ、それじゃないか?見たことがないから、わからんが」


さて、戻ろうと休憩から戻る途中、晩餐会の支度組だろうか、料理人達がバタバタしているのが目に付いた。


(ニラ)


珍しいものを出すのだなぁ、とつい欲に駆られて料理人達のところへ行く。


「もしよろしければ、ニラかどうか、私判断できますが」

「おぉ、嬢ちゃん。このただの葉っぱはニラで合ってるのか?こちらでは見かけない食材だからわからなくてな」


差し出された葉を見る。確かに、ニラのように薄く長細い形状だが、と思いながら受け取り匂いを嗅いだ。


「これ、ニラじゃないです」

「なに?!」

「というか、これ食べると大変です。下手すると死にます」

「なんだって?!!」


確かにニラによく似ているが、無臭であるということは、恐らくニラによく似た水仙である。これを食べると腹痛や嘔吐などの中毒症状を起こし、最悪死ぬ場合がある。


「これは水仙です」

「水仙って、あの花の水仙か?」

「えぇ、よく間違われるんですよ。他にもあります?ちょっとよければ食材を確認させていただいても?」


もし他にもあったら一大事である。


これから行われるのはただの晩餐会ではない、国賓との晩餐会である。何か不手際があれば、国の尊厳に関わる国際問題に発展するし、下手したら戦争だ。


「あぁ、だが時間がないから手短にしてくれ」

「私も時間がないですけど、さすがに口にするものですから毒が混ざってたら大変ですので、じっくり見させてもらいます。すみません、ちょっとクエリーシェル・ヴァンデッダという貴族にリーシェという女が呼んでいたと伝えていただけませんか?」

「あ、あぁ、いいが。だが、貴族なんてのはいっぱいいるから、どいつがどいつだかわからんのだが」

「あぁ、それなら簡単です。ガタイいい、熊みたいな大男なので、すぐにわかると思いますよ」


リーシェが厨房に入り、今日のメニューを確認しながら食材も確認していると、慌てた様子でクエリーシェルがやってきた。


「呼ばれてきたが、リーシェはまだかとクイードにどやされているんだが」


急いで来たのだろう、額には汗が浮かんでいた。


「すみません、ちょっとトラブルがありまして。晩餐会の時間を遅らせてもらうよう、国王にご助言いただけないでしょうか?」

「なんだ急に。何があったんだ」

「ちょっと、毒物が混ざっているようで」

「毒物?!」

「しーっ、声が大きいですよ。バレたら国際問題ですから内々に処理しないと。ですから、こっそりと国王にお伝えください。食材とメニューに関しては、私が処理致しますので。よろしくお願いします」


領主は何か言いたげではあったが、「とりあえずわかった。あとで詳しいことは聞くからな」と言うと慌てて戻っていった。


さて、とにかく今は晩餐会を開催するためにはメニューをいじらなくてはならない。メニューは予め決められていることが多いが、晩餐会のメニューの食材として本来ニラと玉ねぎ使用されるところに水仙の葉と球根が混じっていた。


ニラと水仙の葉は自生場所も似ているため区別がつきにくい、また玉ねぎと水仙の球根も非常に似通っているので、収穫後はなかなか区別がつきにくいのだ。


(はたしてこれは故意なのか、事故なのか)


故意であれば相当な悪質なものだ。だが、実に巧妙に仕組まれているところを見るに、過失というよりも故意であることが予想できる。


もし、誰かピンポイントで狙ったわけでなく、食事を振舞われた全員が中毒症状ないし死に至った場合、国際問題だけではない。不特定多数を狙ったとなれば国王の身も危なく、計略した者は極刑は免れないだろう。


一体何が目的なのか。そして、こんな大それたことを計画しているのは誰なのか。


(本当、行く先々で問題が起きるなぁ)


自分の不幸体質を嘆きながらも事前に防げたことは良しとしよう、と好意的に捉えてまずはメニューの変更をする。


自分の知ってるレシピと今ある食材でどうにかする方法を考えて、料理人達には準備に取り掛かってもらった。

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