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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
4章【外交編・サハリ国】

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48 裏切り者

「城内に裏切り者がいてな」

「え!?」

「バレス皇帝と内通している。いや、正確に言えば内通しようとしている、が正しいか」

「……どういうこと?」


寝耳に水の情報に、意味がわからなくて彼を見る。その表情はどこか苦々しく見えた。


「ゴードジューズ帝国から書簡が回っているというのはキミも知っているな」

「え、えぇ」

「それを見て、キミを(かどわ)かそうとしている者がいるということだよ」


(なるほど、そういうことか)


私には莫大な懸賞金がかけられている。その金に目が眩んでも仕方がない話である。失礼ではあるが、特にサハリの国のような最近成り上がってきた国には喉から手が出るほど欲しい金額であろう。


しかもここで私という貢ぎ物をすれば、バレス皇帝より優遇してもらえる可能性もあるわけだ。だとしたら、私を捕まえようとするのもあり得ない話ではない。


だが、なぜそれを私に言うのだろうか。一応私に協力してくれるというし、彼を信頼してもいいのだろうか。


「そして、先程言ったキミへの懸賞金に関しての書簡は一部の人間しか閲覧できない」

「え?」


一部、というのは恐らく上層部のみだと言うことだ。


「それって……つまり」

「あぁ、キミを拐かそうとしてるのは僕の両親さ」

「サハリの前国王夫妻が……?」

「身内の恥で申し訳ないがね」


(どういうこと……?)


まぁ、前国王夫妻が国を想ってそのように行動するのは理解できる。以前姉と共にこの国に来訪した理由が、この国の行く末を憂いて改善できることがあれば指南して欲しいということだったのだから。


だが、以前来たときはブランシェを甘やかすほど溺愛していた気がするのに、ブランシェの言い草的にはブランシェと対立しているということだろうか。


「王としてはキミに話す話でもないかもしれないが、個人的に聞いてもらいたい」

「私でよければ聞くけど……」


先程まであった自信たっぷりな表情が翳る。私は彼の前に椅子を置くと、そこに腰掛けブランシェの話に耳を傾けた。


「そもそもペンテレア国、キミの国の方々を呼んだのも僕の両親の保身のためなんだ」

「保身……?どういうこと?」


訳が分からなくて、オウム返ししてしまう。保身とは一体どういうことだろうか。


「あぁ。元々この国は不毛の地。だから今までは知恵を絞って困難を乗り越えてきた。だが、両親は知恵を使って乗り越えるではなく、ただ今まで培ってきたものを浪費することしかできなかった」


ブランシェ曰く、彼の両親はあまり知恵(・・)を持ち合わせていなかったらしい。持っていたのかもしれないが、それを使うことはしなかったという。


「資財を切り崩すだけの生活では、国はどんどん疲弊してな。特に両親は湯水の如く消費をしていったから民からの批判や負の感情が高まっていたんだ」


確かに、当時訪問したときにブランシェに観光がてら市井(しせい)に案内されたときはどことなく殺気満ちていたというか、無駄に冷めた眼差しを向けられていたように思う。


「そこで、キミ達ペンテレア国の優秀な占い師……つまりキミの姉を呼び、この国の行く末を占うということを表向きに、自分達の後ろ盾……自分達の正当化を試みようとしたんだ」


(正当化)


ブランシェの話を脳内でまとめる。前国王夫妻はどういうわけか働きたくなくて、貯め込んだ国の資産を使っていった。だが、民からの圧力等々を向けられ、自己保身のために我が国を利用して自己正当化しようとした、と。


以前お会いしたときはニコニコと常に笑みを絶やさずに恰幅が良かった気もするが、そういうことだったのか。


そういえば確かに、ブランシェが「もう国に来るな!」と言ったときも近くにいたのに咎めるどころか、ニコニコしていたしな……。


今更ながらに当時のことが思い出される。最初こそ歓迎されていたというのに、私が色々ブランシェに進言するにつれて表情が引き攣っていたのがそのせいだったのか。


(てっきり、大事な跡取りであるブランシェに悪態をついたり手を上げたりしたことが原因だと思っていたが)


しかも、彼の話から察するに利用しようとした私達……主に姉もバカにされていたと思うと腹立たしくなってくる。


わざわざ遠方から遥々赴いたというのに、自らの不始末を正当化させるために呼ばれたと思うと、沸沸と怒りが沸いてきた。


(姉様が最も優れた千里眼の持ち主だということを知らなかったのか……!)


百発百中、彼女の予言はピシャリと当たる。で、有名だったのだが……。もしかしたら姉のことだ、こういう事態も全てお見通しだったのかもしれない。


(本当、姉様だけは敵に回してはいけないお人ね……)


一体姉はどこまで見えていたのか。きっと彼女に聞いても答えてくれないだろうが、改めて姉の凄さを再確認するのであった。

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