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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
3章【外交編・カジェ国】

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1 船酔い

「ふぁぁあああああー!いい気持ちーーーー!!」

「あ、危ないですよぉ!」


見張り台から遠くを見渡す。周りには、海、海、海……つまり海しか見えない。


海だけ見てもつまらない、ということで見張り担当の船員を何とか説き伏せて、気晴らしに見張り台へと登ってきたのだが、ただの海の景色だというのに、普段と違ってとてもワクワクした。


まず風が気持ちいい。高所にいるため、強い風圧を一身に受け、煽られるのはちょっとしたスリルだ。でも、それがまた良かった。普段味わえない経験が大好きな私にとっては、とても楽しいものだった。


ただ、秋ということで肌寒いことが難点ではあるが、カジェ国は半球が異なるので、そのうち温かくなるだろうと楽観視はしている。


「リーシェさーん!そろそろ戻って来てもらわないとぉ、僕が怒られてしまいますぅー!」

「はーい!」


いよいよ、船員……確かパリスと言ったか、彼が痺れを切らして泣きそうな顔でこちらを見ている。


ほんの少ししかいれなかったのは不満ではあるものの、リフレッシュはできたので、素直に甲板に降りることにした。


マストと縄を使って、まるで曲芸のようにシュルシュルと器用に降りていくと、真っ青な顔をしたパリスが私を見ていた。


「ご、ご無事で何よりですぅー……!」

「あれくらいで心配しなくても、私は大丈夫ですよ」

「そ、そうは言っても、ヴァンデッダ卿にバレたらぁ……」


(あぁ、なるほど。私の心配というよりお咎めの方が恐いということか)


そりゃそうだよね、と思いつつ、パリスを安心させるためにクエリーシェルの状況を教える。


「あの方は、今頃バケツと睨めっこしてると思いますので、大丈夫です。見張り替わっていただき、どうもありがとうございました。いい気晴らしができました。ちなみに船影はなかったです。引き続き、見張りよろしくお願いしますね」

「わ、わかりましたぁ……っ!」


(船員にしては気弱そうだけど、大丈夫かしら?まぁ、見張り任されていたくらいだし、目がいいとかなのかもね)


パリスにお礼を言うと、服や髪の乱れを直す。そして、保管庫などから水やタオルを持ち出すと、クエリーシェルの部屋へと向かった。


「失礼します、リーシェです。入りますよー」


部屋の主に断りもなくズカズカと入っていく。普段はもちろんそのようなことはしないが、現状彼がろくに返事などできないことはわかりきっていたので、あえての行動だ。


「リーシェ、か……。うっぷ、ぐ……っ」


室内に立ち込める、酸っぱい臭い。空気の入れ替えのためにドアを開きっぱなしにして、ドアストッパー代わりに樽を置いておく。


「はい、水を持って来ましたから、ゆっくり少しずつ飲んでください。あとはとりあえず、安静にしててください」

「あ、あぁ、すまない……」


まさに、生気がなくなったかのような青白い顔。口元が濡れているのはつい先程まで、そのバケツに色々と吐き出していたのであろう。


「そのバケツを片付けてきますから、寝れるならそのまま寝ておいてください」

「寝たい……が、もう寝れぬ……」

「では、ちょっと待っていてください。すぐに戻ってくるので」


そう言って汚物の入ったバケツを持っていくと、そのまま外に出て船の後方へ向かい、一気に船の外にばら撒く。そしてバケツを軽く濯ぐと、それを持ってクエリーシェルの元へと向かった。


「体調は?」

「……絶不調だ」

「でしょうね。服装も緩めて、頭部も冷やして、睡眠をとっているので、あとは慣れだけだと思います。落ち着いたら甲板に出ましょうか?風を浴びると気持ちいいですよ。もう少ししたら赤道通過すると思うので、だいぶ暖かくなると思いますよ」


船を走らせて3日。早ければあと2、3日でカジェ国に着くだろう。カジェ国に滞在するのは1ヶ月。その間に、今後の船旅での食糧や物資を確保せねばならない。


もちろん見合いの斡旋も任務のうちに入っているので、その辺りも怠らない。


「もう赤道か」

「ずっと走らせてますからね。それにしても、そろそろ落ち着いて欲しいものですね、船酔い」

「やはり新婚旅行を船というのは却下だ」

「本気だったんですね……」


苦笑しながら、額に置いたタオルを変えると、少しでも気が紛れるようにと、クエリーシェルの頭をゆっくりと撫でるのだった。

3章始まりました!

クエリーシェル初めての長期船旅です。

彼らは一体どんな旅をするのか、お楽しみいただけたら嬉しいです。

感想も随時募集してますので、お気軽に下部よりコメントいただけたら嬉しいです。

また、作者の執筆の励みになりますので、ぜひとも下部にある☆☆☆☆☆での応援をよろしくお願いします!

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