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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
2章【告白編】

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42 バレス皇帝

何気ない昼下がりのことだった。バラムスカが公務をするため1人で庭園を歩いているとき、バレス皇帝がいるのが見えた。


(こんなところにいるなんて、珍しい)


彼は気難しい。だから、なるべく彼に気づかれないように、密かにその場を離れようとしたときだった。


ーーあぁ、これでやっと我の悲願が叶う。


この声がバレス皇帝の心の声だと、すぐにわかった。そっと彼を木々の隙間から見ると、うっとりするように葡萄の蔓に触れていた。その様があまりに異様で、ひっと小さく息を飲む。


今まで、見たこともないような恍惚とした表情。ただ嬉しそうにしているのではなく、内面の禍々しさが滲み出るほど惚けた様子が何ともおぞましくて、肌が粟立ち身体が震える。


その場から立ち去りたい衝動に駆られるが、脚が竦んでうまく動けない。皇帝は私に気づいていないのか、そのままいくつも葡萄の房ではなく、蔓を集めていく。


(何をしているの?)


動悸が治らないのを、どうにか深呼吸して落ち着かせる。すると、彼の心の声がどんどんと私の中へ流れ込んできた。


ーーこれでやっと、我はまた生まれ変わることができる。


ーー随分と時間がかかってしまったが、まだバラムスカも全盛期の状態と言って差し支えないだろう。


ーー我の思惑通りに、ペンテレアの呪術が最も優れている者を引き入れることも叶った。


ーーこれで我の転生計画(・・・・)も盤石だ。


(転、生計画……?)


理解できない言葉ばかりが流れ込んでくる。だが、理解できないなりにも彼の心の声を聞く限り、これが自分にとってあまり良くないことだということはわかった。


(ペンテレアの呪術が優れているって、きっと私のことよね、一体どういうこと?)


この縁談は誰よりもバレス皇帝が望んでいた、それは周知の事実だ。ということは、彼にとって私は何かに使える駒だということだろう。それが恐らく、彼の言う『転生計画』ということだろうか。


ーーこれであの娘が子を孕めば。


ーーいや、待てよ。あぁ、そうだ。バラムスカの子の誕生など待たなくてもいいじゃないか。我が転生してから子を孕ませればいいではないか。


ーーそうだ、どうして私はそのことを失念していたのだろうか。


ーーまぁいい、準備が整い次第始めれば良いこと。あの娘もまさか自分の夫の中身が入れ替わるなど思いもしないだろう。


バレス皇帝は誰もいないからか、多くのことを逡巡しているようだが、それが全て私の中に流れ込んでくる。


(入れ、替わる……?)


これは先程感じた通り、良からぬことを計画していることを確信する。だが、どうするか。まずは証拠や何かを集めなければ。……でも、どうやって。


(バレス皇帝の警戒心は非常に強い。自室に人を入れることなど滅多にないし、何よりその付近は立ち入り禁止だ)


だが、恐らく証拠などは彼の自室にあると見て間違いないだろう。それなら私が1人で忍び込んだり、何か策を企てたりするのは難しい。


(誰か、協力者がいれば)


しかし、自分は嫁いできた身。何人かのメイドは連れてきたものの、こちらでの行動が制限されている。他の味方の心当たりといえば、バラムスカしかいない。


(でも、バラムスカに何て言えばいい?)


バレス皇帝の心の声を聞いたなど、信じるわけがない。例えその申し出をするのが新妻であっても、恐らく疲労か何かで精神がおかしいと思われてしまうのが関の山だ。


(でも、あまり悩んでる時間もない)


そう、彼は計画を早めてバラムスカをどうにかしようとしているようだった。さすがに今日明日に何かするわけではなさそうだが、それでも、どうにか早めに行動を起こさねば。


とりあえず、バレス皇帝からバレないように庭園を抜ける。城内に着くと、汗がドッと噴き出してきた。


「なんとか、しなくちゃ」


(こんなとき、ステラならどう行動するかしら)


あの子は賢く、勇敢だ。いつも何か思案して、知識を得ては私に教えてくれた。それを役立てるときが今なのかもしれない。


(まずはどうにか『転生計画』について調べないと、何かあって手遅れになってからじゃ遅いわ)


私は覚悟を決めると、パタパタと駆け足で自室へと戻った。

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