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国防軍創設

 ベルマギーア講和条約が締結されたことで、一度引き取りを言い渡したテル連邦とメル合衆国の外交官と再び面会。両国は無条件での国交樹立を申し入れたが、世界分割統治案に賛成し日本国からの恩恵、つまり甘い蜜を啜ろうとしていたが、あっさり見抜かれ、傀儡国・自治領・保護領を手放すことを要求され、さもなくばあらゆる手段を投じ再起不能にするとまで脅されたので止む無く要求を呑んだ。

 結果テル連邦もメル合衆国も建国当時の30万km2の領土を完全保証され、日本国と正式な国交を結んだ。


 転移直後はタンタルス大陸の8カ国とだけしか国交が無かったが、今は東方世界およそ300もの国と国交を結んでいる。西方世界とは大日本帝国だけだが、それは向こうにも言える。


 第4・5・6海洋界との貿易は日本にとって途轍もない利益を生み、輸出額は常に輸入額を上回っている。

 外需の多くは福祉、医療、教育に割り当てられ、1億3000万人から減少傾向にあった人口は年々増加しており、タンタルス大陸を中心に、第5海洋界や第4・6海洋界に移住していった。


 そして実質GDPは1000兆円に達した。

 防衛費はこれの約1%、10兆円となったが、東方世界に広範囲に散らばった邦人を保護するには、自衛隊の現在の人員約26万人では圧倒的戦力不足であった。その為柏木内閣は与党単独過半数と、国民の国防への関心が高まっている現状を最大の好機とし『憲法改正』『自衛隊法改正』に踏み切った。

 特に憲法は9条に大きな変更が加えられ、『平和主義』や『戦争放棄』でなく『国家存続』に変更し、内容も一新された。


1、日本国及び国民の内外に於ける人命・財産・利権が脅かされた時、武力を解決の一手段として一考する。

2、前項を確固たる物にすべく、陸海空軍その他の戦力は、保有を認める。それに当たって、国の交戦権はこれを認める。


 主な紛争解決法は、外交交渉であるが、それが失敗したときの保険として武力解決を一つの手段として考慮し、それに当たって三軍及びその他の戦力保有と、交戦権が認められた。


 自衛隊法も『国防法』に改められ、憲法9条と同じく内容も一新された。

 具体的な内容は・・・。

・防衛予算はGDP比5%。約50兆円

・人員は、陸上は本土防衛に30万と各海洋界防衛に20万に予備役の計100万人。海上は総勢50万。航空は総勢30万とする。

・活動範囲は東方世界に限定し、『ネガティブシンキング(~してないけない)』に基き各部隊が対応する。

・部隊外に機密漏洩を図る又は実行したものは、内乱罪が適用され、裁判で即日死刑となる。

 となっており、前世界のアメリカ軍に匹敵するまでになった。そのため、自衛隊は警察なのか軍隊なのかの曖昧な立場でなくなり、『国防軍』に改名することになった。


 批判も噴出したが、一部の野党の容認もあり発議に成功。国民からは「やり過ぎでは」と言う声が上がったが、ボルドアス戦に於ける悲劇とヨル=ウノアージン聖皇国という巨大な『ナチ国家』が存在する以上、これぐらいは妥当とする意見が圧倒的であり、国民も承認。


 そして、転移紀2年(西暦2027年)2月11日。天皇陛下から憲法改正が公布され、ここに憲法第9条改正と第2次世界大戦後初の純軍事組織『日本国国防軍』が設立した。


 国防省・・・。

「大臣、おめでとうございます。」


 防衛省は『国防省』に改められ、経済産業省に『国防備品庁』が新たに設置され、国防副大臣が長官を兼任する。


「祝福を言われる覚えはないが、新装備の調達はどうなっている?」


「02式自動小銃は既に1個連隊分が調達され、既に代替されています。」


 02式自動小銃は89式小銃の後継として開発された。

 口径5.56mm、銃身長430mm、全長850mm、重量3000g、発射速度880/分、銃口初速950/秒、有効射程500m。主要部は堅実な切削加工、外装はプレス鉄板と強化プラスチックを多用し、5.56mm普通弾を使用。機関部はボルドアス戦争で鹵獲した『AK-74』を参考にし、あえて隙間を空けて、発砲などの衝撃で流入した砂塵や水が振り落とされる設計にし、機関内部と銃身内は、腐食や磨耗を防止する為クロムメッキが施されている。またバレル全周、特に上部は機関部上部まで、スコープやグレネードランチャー、フォアグリップを後付できる『ピカティニー・レール』が装着されている。ストックは伸縮と折り畳みが可能である。そして、伝統かどうかは分からないが、銃口下部に着剣機構が備わっている。02式多目的銃剣は89式から刃渡り20cm、全長を30cmに延長した物である。


「ですが、いかに春夏秋冬、東西南北の日本各地で性能試験を実施した所でカタログスペックの実証にしかならず、やはり実戦データに劣ると言わざるをえません。」


「何言ってる、実戦データなら取れるであろう?」


 兵器は演習や訓練の成果での評価は勿論有るが、戦場での評価はそれと関係ない。銃弾飛び交う戦地で己の命を預けるわけであるからいざと言うときに使えなければ単なる鈍器である。


 国防大臣が実戦データが取れるといったのはどう言う訳なのか、副大臣には分からなかった。

 第5海洋界のみならず東方世界は日本国が実質的な支配者である。不穏な動きは極僅かながらキャッチしているが、大儀が無い以上攻め込んだら国内外からの批判は避けられない。


「しかし、第5海洋界含め、東方世界において我が国と敵対する国など・・・。」


「失礼します。」


 海軍参謀長、つまり元海上幕僚長が現れた。


「第3艦隊配置に付きました。あとは命令を待つだけです。」


「よし。作戦を開始せよ。」


 国防大臣と海軍参謀長だけで話が進み、すっかり置いてけぼりになってしまった国防副大臣。


「一体何をするおつもりですか?」


「なぁに。奪われたものを返してもらうだけだ。」


 壱岐の島沖約160㎞ 第3艦隊旗艦『ひゅうが』・・・。

「本省より入電、『作戦開始せよ』。」


「海軍の名前を再び名乗れるようになって、初陣がまさかの領内とはな。」


 艦隊司令官、井上は少々落胆したが、これは奪われたものを取り返す名誉ある任務である。そう自分に言い聞かせ僚艦『みょうこう』に指示を出す。


「みょうこう、攻撃開始。」


 みょうこう艦橋・・・。

「ひゅうがより伝令。攻撃開始。」


「うちーかたー始め!」


 艦長の命令を受けた射撃員が、主砲の手動射撃装置を取り出し引き金を引く。

 毎分35発の速度でオート・メラーラ127mm砲は榴弾を発射する。

 目標は何の変哲もない白い長屋だ。


 長屋を破壊した後、輸送艦『おおすみ』から発進した『LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇』2艇から300人の陸軍兵が海岸線に向かう。

 銃撃戦もなく無抵抗の人間を桟橋に跪かせていく。


 その様子はみょうこうの艦橋からもよく見えた。


「しまいだ。あの忌々しいプレートを吹っ飛ばせ。」


「了。」


 みょうこうCICの射撃管制官のディスプレイにガンカメラの映像が映し出され目標となったプレートにピントを合わせ、『韓国領』と掘られた部分に十字の照準線を合わせる。


「照準良し!」


「ッえぇっ!!」


 打ち出された砲弾は狙ったとおりに命中。その衝撃波で太極旗が掲げられた旗ざおも根元から吹き飛んだ。

 そして桟橋では、捕縛した『独島ドクト守備隊』約40人をLCACに乗せようとしていたが・・・。


「オラッ!サッサと乗れ!!」


「〇△◇※!!」


 韓国語は分からないが、泣き崩れその場から動こうとしない。陸軍の兵士は怒号を浴びせ、両腕と両足を掴んで無理矢理LCACに放り込んだ。


 その日、島根県庁前で配られた号外の見出しは・・・。


『国防軍初陣!竹島奪還に成功!!』


 とあり、用意した1万部は20分と経たずに全て無くなった。


 独島守備隊の40人はその後島根地裁にて『不法入国』『銃刀法違反』などの罪に問われ、終身刑が言い渡された。


 竹島は、不法占拠された1952年から75年と言う長い時を経てようやく日本国の下に戻った。

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