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第八幕 元就との交渉

 尼子の殿たちの返事を持って郡山城に戻った俺たちは再び毛利元就と対面する事となった。


「義久殿は受けてくれたか、重畳であったな」


「はい、これで肩の荷が一つ降りました」


「じゃが、そなたが尼子にも毛利にも仕えないとはな……」


「それは、先日説明いたしました通りです、我らは商いで身を立てて行こうと思っております」


「うむ、そなた達が扱っている品を見れば判らぬでもないな」


「蜂蜜はいかがでしたか?」


「あれは良いものだな、何よりも味が良い」


「蜂蜜は病に良いとされ又戦で受けた傷の手当にも使うと良いと言います」


 実は鉢屋に集めさせた者たちに養蜂を教えて作らせることに成功したのだ、某テレビ番組でアイドルグループが廃村や無人島を開拓するというのがあり、毎週見ていたのでやってみたら成功した。ハチの巣から蜜を取るのには唐箕とうみを改造して作ってみた。唐箕とうみそのものも江戸時代に普及したものだけどね。


 皆がどこでそれを知ったのか不思議がるので美保関に来る大陸からの交易船で手に入れた書物に書かれていたと胡麻化したけどね。


「うむ、干し椎茸にせよ蜂蜜にせよ貴重な物を扱っておりあの澄酒もあるのなら商いで成功するであろう」


 最初に献上した物はどれも本来は量産が出来ていない品物なのでとても貴重な物と喜ばれたようだ。特に蜂蜜はもう数年で死ぬはずの元就かれの病にどれだけ効くか非常に興味がある。


「今は生薬を漬け込んだ酒を製作中です。出来上がったら試していただきたく」


「ほう、それは楽しみじゃの」


 これは養〇酒を再現して見たものである。滋養強壮効果が期待できるからね。


 その後尼子家が賜る領地の選定を行い着々と再興への道筋が出来ていった。


 ■


「叔父上、いかがでしたか?」


「うむ、中々上々の滑り出しだな」


 立原の叔父貴に再興された尼子家の家臣を集めてもらっていた。 あれから2箇月経ち領地も決まり家臣の数も決まったので嘗ての家臣たちに声を掛けてもらっていたのだ。


「領地の石高は2千石と言う話だったからな、募集は少なめにしたのだが如何しても行きたいという者が多くてな、その中で条件に合う者を選ばせて貰った」


 その条件は故里を捨ててでも来たい者、家族が賛成して居る者などの条件をパスした者たちの中でこれからの領地経営に参加できる能力がある者を叔父貴たちが判断して雇ったのだ。勿論落ちた者たちでもうちの仕事を手伝う気があるものはそちらででも雇う事にしているのだ。


「しかし、良いのか? 鹿介には尼子家の家老職と毛利家からは直臣にとの話が有ったのだろう?」


「そこはお話した通り立ち上げた事業がありますから、そちらをしようと思います。叔父上には尼子家のことよろしくお願い申し上げます。折角再興出来たのですから今後の舵取りが大事です」


「判った、その辺りは任せてくれ、尼子の家は潰させるような事はせぬ」


「お願いします」


 叔父貴が家老として尼子家に睨みを効かせれば他家に通じるような事はしない筈、勿論鉢屋衆にも見張らせるし、大友などの他の大名が接触を図るかもしれないので世鬼衆も結界を張ってくれるだろう。さらに福原殿も傍にあって睨みを利かせているから完璧だな。


「ですが此処までやる必要があるのですか?」


 亀井新十郎幸綱が疑問を呈するがそれに関しては手を抜く事は出来ないのだ。


「必要があるからしているのだ。尼子家に異心無くともその存在を利用しようとする者は後を絶たないだろう。毛利は其れが怖いので殿たちを幽閉してきたのだ。消せば反発から旧尼子領で反乱が起こる恐れがある。かといって家臣にしても外の勢力が毛利を狙う限りその存在が利用されるのは間違いあるまい。それを防ぐには尼子家が自ら調略に乗らない事、乗せる隙を見せないことだ。世鬼が見張っておれば外からの接触はほぼ防げるだろう」


 そして声を潜めて続きを話す。


「一番怖いのが大友からの調略だ。奴らは接触しさえすれば尼子家が応じなくても良いのだ。大友が尼子と繋ぎを取っていると言う事を自らの手で毛利に教え殿たちを誅させる。そうすれば出雲等で元家臣団の蜂起があり、大友は九州で毛利に優位に立つことが出来るからな」


「そ・そのような事大友家がするでしょうか?」


「甘いぞ新十郎、今の大友の当主は二階崩れで実の父親と異母兄弟を討ち、毛利の防長攻略には弟さえ見捨てたのだ。尼子家の事など歯牙にもかけまい」


「……」


「良いか? 後10年位はこのようにして過ごしていただかなければ成るまい、10年経てば状況も変わって来よう、その時に備え今は雌伏の時なのだ」


「判りました、義兄上の仰せに従います」


 新十郎が頷くと叔父貴が尋ねる。


「10年後に何が起こると言うのだ? その方が気になるわい」


「それに関しては諸国を巡ったときに感じた事を思いふと口にしたことでございます、何も根拠の無い話ではあります」


「そうか、あの国たちの中に10年後状況を変えうる国が有ったのか、儂にはさっぱりじゃな」


言えるわけがない、織田信長が{天下布武}を唱えて動き出すのはそう遠くない未来であるとは。勿論それに備えることはするけどな。


「話は変わりますが、鴻池からの便りでハチの巣から{王乳ローヤルゼリー}が取れたと報告がありました。あれは金になりますぞ」


「あれは万病に効くと言われる幻と言われるものだと聞いたが本当か? だとしたら凄いことになるな」


「里がまた豊かになりますね」


 叔父貴と新十郎が喜ぶ中俺は次なる手を考えるのであった。



読んでいただきありがとうございます


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