四十九話 満願成就はなったのか?
遅れてすいません。
なかなか予定通りに行かないものです。
慶長5年(1600年) 9月15日
「どうしてこうなった……」
俺の目の前には総勢十万と言われる敵勢が布陣している。
小高い丘に布陣している我が手勢の五倍は居るだろう。
「ここでの戦いは我らの今後を決める戦い、まさに天下分け目の決戦と言えるでしょう。さあ、御下知を、我ら皆山中殿の元戦いまするぞ」
傍に立つ浅井長政殿が明るく声を掛ける。ホント、なにこれ夢だよね。
☆
新大陸に上陸してからは順調に開発は進んでいた。原住民達とは概ね友好的に共存している。彼らは部族単位で生活しており、国家という概念が無かったので族長と交渉して農地の開拓を行い、出来た作物を交換するなどしている。彼らはインディアンと呼ばれ、その名前を付けたのはコロンブス等南蛮人なのだが彼らは主にカリブ海の島々や中米辺りに進出しており現在はメキシコ辺りまで来ていたがこちらが上陸したカリフォルニアの地は支配していなかった。
新加州と名付けられたその地では、金が発見されて採掘が行われている。そして東へ向けて進んで行く。最上義光達が先発して辿りついた地に向けて最初は馬車で、今は石炭を見つけたので美祢で開発した蒸気機関車を使っている。蒸気機関は船にも積まれて居るので輸送効率は格段に良くなり、ハワイ経由で移民は既に数十万までになっていた。
そしてついに東海岸まで着いたのだが其処には既にイスパニアの連中が居て色々な事がありこの日ついに決戦となったのであった。
★
「敵は騎馬隊を先鋒として攻めて来るようです」
「判った。鉄砲隊に射撃準備をさせろ」
「射撃準備! 命あるまで撃つな!」
馬防柵の内側に整列した鉄砲隊が銃を構えて、後ろには予備の銃を持った者が控えている。鉄砲組頭は迫ってくる敵騎兵が予め決められていた地点に来た時に命令を下した。
「放て!」
一斉に響く轟音に棹立ちになり乗っている兵を振り落とす馬。地面に落ちた騎兵たちの幾らが鉄砲の命中で落ちたのか。続けて発射された鉄砲は切れ間無く発射されて前面の騎兵を討ち取っていく。
「後方の歩兵部隊接近! 予定地点に入りました!」
「よし! 加農砲撃て!」
「撃ち方~始め!」
小走りで迫ってくる向こうの歩兵部隊に我々の後方に控えていた加農砲砲が火を吹く。その数は100門を越える。因みに鉄砲隊は5千程だが装備しているのは単発式ボルトアクション式小銃である。製作に成功した職人の名を取って村田銃と名付けられた。本当に偶然なんだがこのことを知るのは俺だけなので逆に誰にも言えない悩みを抱えることとなってしまった。
此処まで技術が発達したのは日本が平和になり職人たちが新しい事に挑戦しやすくなったということもある。だが驚いたのは職人たちだ。
俺の中途半端な知識から蒸気機関や元込め式の加農砲に果てはボルトアクション式の小銃まで作ってしまうのだから。前世で幕末の頃前原巧山が断片的な知識で蒸気機関を作った事を思えば不可能ではないと思うけれど、この時代の職人たちも侮れん。
「弾着~今!」
敵陣の真ん中に着弾した砲弾が爆発して敵兵を吹き飛ばしていく。榴弾も作れるなんて末おそろしいなと思っていると浅井長政殿が傍の使番に下知を下している。
「両翼の別働隊に突撃ののろしをあげよ!」
のろしが上がると両翼から騎馬隊が敵勢に襲い掛かる。こちらとインディアン達の混成部隊だ。
「ポウハタン族の騎兵が左翼より攻め掛かり、スー族は右翼より。それを伊達殿の騎馬鉄砲隊が援護、敵は総崩れですな」
副将を勤める浅井殿の報告を聞きながら、呆けた顔で立っている南蛮人に声を掛ける。
「ヴァリニャーノ司祭、これで判ったであろう。この地でのイスパニアの支配は終わると。あれだけの兵を失ってはもはや此処ばかりでなくアステカなどの地も守れぬと判る筈だ」
アレッサンドロ・ヴァリニャーノ司祭は声を掛けられたことに気が付きピクリと肩を震わせて振向いた。
「なんということを、主は嘆き悲しまれていますぞ」
「南蛮人が死ねば悲しむがこの地に住む者たちは信者で無いから死んでも構わんか。そなた達の神は随分と了見が狭いようだな。仏は生きとし生けるもの全てを慈しむし我が国の神たちもその様な事は言わぬがの」
「……」
「司教、そなたを此処に招いたのは戦を見せ、このことをローマ法王に伝えるのだ。新大陸への手出し無用とな。そなた達南蛮人がこの地を含め世界を分割する事は許さぬし、あたわぬ。各国の王にもそう伝えよ」
「神の罰を受けますぞ」
「我らはそなた達の神の信者ではないゆえ罰も与えようがなかろう。望むのならば海を渡りそなた達の本国まで出向くがいかが?」
そう言うと顔色を青くさせて黙り込んでしまった。
これで改心…するわけ無いので準備が必要だな。大西洋を渡る船を作る為、準備せねば。
なにかちっとも楽にならないのだが矢張り三日月の誓いのせいなのだろうか?
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