第三十五幕 帰ってきたら勢力図が変わっていた
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やっと畿内まで帰ってきたが随分雰囲気が変わっていた。
「本願寺が和睦を申し入れた?」
「ええ、加賀の一向一揆が崩壊したのと伊勢長島が開城したのが堪えたみたい、石山本願寺を引き渡すことと今後政に口を出さないという条件で織田方と和睦して顕如は紀伊国へ落ちていったわ」
えんが知らせてくれた事は其れだけでは無い、公方足利義昭も逃げ出し(事実上の追放らしい)最初は毛利を頼ったが断られ、無理に来たら織田方に引き渡すと脅されたらしい。仕方無しに紀州へ行ったが顕如たちに迷惑だと言われてほうほうの体で出ざるを得なかったようだ。なんか哀れな事になったな。
「大友は落ち目なので最初は島津を頼ろうとしたんだけど……」
島津にも断られた訳だ。
「{来て下さりやがったら、鬼界ヶ島に招待所を建てて歓待する}って返事が来て卒倒したらしいわ」
島津コエー。あいつらホンとにやりそうだからな。
「仕方ないので出家して織田家に謝罪、今は等持院で逼塞してるそうよ」
「そうなの? 信長良く許したな~」
「京都所司代の村井貞勝殿に命じて監視付きの庵に入れてるから外とは連絡は取れないようにしてるんだって、でも義昭を担いで叛旗を翻す大名はいないと思うよ」
まあこの世界マスコミは無いけど話が伝わる速さは想像以上だものな。良い評判も悪い評判も。本願寺と義昭の敗北はもう殆どの地域が知りうる事になってるだろうな。
兎も角毛利とは縁戚になって友好を結ぶ事になっているし、九州は島津、東は武田・上杉・北条が味方するので後は四国と九州の真ん中あたりと毛利との間にある国の連中、北条より北の関東と陸奥・蝦夷地だ。最上は多分織田方に付くはずだけどね。
そんな訳で、現在は毛利との間の播磨・備前・但馬・等の攻略を行っている。後は四国へ向かうようだ。
「四国攻めの総大将に明智殿が任じられたとか、重臣の斉藤殿の妹が長宗我部元親殿に嫁いでいるので長宗我部と組んで阿波・讃岐・淡路を攻めるようですよ」
えんばかりに良い格好させたくないのか咲が鉢屋衆が集めた情報を披露する。この世界では光秀が四国攻めの大将か、本能寺の変は起こらないかもしれないな。藤吉郎が播磨を通って備前攻めをしており此方も直ぐに終わりそうだ。其のまま彼は但馬等を抑えていく事になるようだ。紀州は滝川が反織田勢力を駆逐している。本願寺が恭順したので雑賀は滝川に従っており滝川の鉄砲隊は凄い事になりそうだな。
「此の侭行けば織田家の天下統一は近いのでは?」
「このまま行けばな……」
かなり早く統一はなるけど果たしてそう旨く行くのであろうか?
□
「悔しや、こないな所に押し込められてしまうとはのう」
「大樹様……」
「だっ!誰や!」
「お静かに願います。所司代の連中の目を掻い潜っているので。大樹様、御迎えに上がりました。」
「おお、そうか、して何処の手の者じゃ?」
「はっ、………で御座います」
「おお! 感謝するぞ」
「では、急ぎます故に此方へ」
こうして彼らは闇の中へ消えていくのであった。
■
「元公方が逃げた!」
「京の所司代を始めとして織田家は蜂の巣を突いた様になってます」
「誰が逃がしたんだ?」
えんが伝えてくれた話では見張りの所司代の手代たちは皆殺されていたそうだ。
「誰の仕業か判るか?」
「流派は良く判らないけどあれは忍びの手口だわ。でも武田や上杉の忍びの手口ではないわね。徳川の伊賀とも違うわ」
えんが答えると現場から帰って来た咲も口を開く。
「西国の流派でもないよ。鉢屋や世鬼、九州の修験者達でもないよ」
「一体誰が……」
「誰でも良いわ」
「! 信長様」
いつの間にか現れた信長に驚いたが彼は意外と冷静なのに気がついた。
「どこの手の者なのか判ったのですか?」
「知らぬ、だがあの公方の事、手紙でもって大いに触れ回るであろう、それしか道はないからな」
「確かに……」
彼の言う通りやがて反信長の旗印をもって立ち上がるだろう。もしかしたら彼はそれを待っているのかも知れない。
公方の激が全国に舞ったのはその一か月後であった。
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