第三十二幕 越後の龍はやはりうわばみ?
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其の為此処にてお断りしておきます。
この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
さて、武田が戦を手仕舞いにしたくても簡単にはいかない、まずは正面の織田・徳川連合軍との戦闘状態を何とかしなくてはいけないからだ。元々武田と織田は友好関係を結んでいて織田信忠と信玄の娘松姫との婚約が為されていたが両者手切れで自然消滅している。
信玄存命中に関係改善をした方がいいだろうから使いを送ることを進言しそれは容れられ使者が岐阜に送られる事となった。
家康君の方は織田方との交渉次第ということになる。彼には気の毒だがこの世界獲ったものを簡単には返せないからな。
問題は北条・上杉だな。この時期はどちらとも関係は修復されており其れがあるから西上作戦を敢行した訳なのだが、それは一時的なもの、今後の事を考えると関係は強化して置きたい所である。
「北条とは同盟の強化を働きかけねばな、頼信の室は亡くなって居るゆえ、室を迎えるという話で纏めようと思っておる、じゃが問題は上杉じゃな」
「貴家と上杉家は何かと因縁がありますからな」
「そうじゃな」
川中島での数次の戦いに代表されて両家は何度も矛を交えている。今回は共通の敵である織田家と戦うために手を結んだ感が強いな。
「ですが此度は三家が同盟して対抗せねばなりますまい」
「確かに……織田の力我らは甘く見ていたからな、本願寺との戦いが終われば次は我等になりかねぬ、西国は毛利は織田とは争わぬと聞いたが」
「毛利は領国内の浄土真宗の寺に本願寺に味方せぬように申し渡しております。同じ真宗の高田派に鞍替えを始めている寺も出てきています」
「そこまで手を打っているのか……我等の方は比叡山の再興を考えていた位だからな」
「国家鎮護として本来の意味を持つのであれば良いのですが僧兵を抱え神輿を奉じて強訴する有様では百害あって一理無しと織田殿は考えて居られるのでしょうな。また一向宗の様な民百姓を{死ねば極楽}と煽り権力を志向する者たちは本来の宗教を逸脱するものと一番嫌って居られます」
「その様な相手と戦うのもこの乱世の習いとはいえ辛いものよな、だが我が領国はこのままでは立ち行かぬ故にこうするしかないからの」
これには俺も反論はしがたい、室町から戦国時代は世界的に小氷河期と呼ばれる地球規模の寒冷化が進んでいた時代で日本も冷害等が襲っておりさらに山国の甲斐は貧しい土地であった。農業改革で改善されるのは世の中が平和になった江戸時代からでそれでも天災の前には無力な訳なので自国が貧しいなら外から持ってくる、すなわち奪うのがこの時代の標準的な認識で故にヒャッハーな戦国時代な訳なのだ。
「織田の方は本願寺等との戦いがありますから今なら講和は出来るでしょう。後は縁組等を進める事です。信忠殿の下に松姫様を輿入れされてはいかがですか?後人質にしている信長殿の子に姫を娶わせてはいかがですか?その上で武田一族の名跡を継がせるとかすれば……」
「万一の時にも武田の血は残るというわけか」
なんでもない風につぶやいた一言に頼信は目を剥いた。
「その様な事が!」
「落ち着け、武田の当主とあろうものがうろたえるな! 家を護ると言うことは其処まで考えねばならんのだ。そうすれば武田の血はどのようなことになっても残る。良いな、万一の時は太郎は逃がすのだ。その時は山中殿を頼るのだ」
うん、知ってた。北条に続き武田家の面倒も見なくてはいけないのね。
そして当然の事ながら幼い娘を嫁がせようとしてきたから、「織田家やその他の家との縁組に必要になりますから」と華麗にスルーさせていただいた。早々幼女を使った罠、ロリトラは効かないのだ、ま、咲がものすごく警戒しているとも言う。
☆
越後 春日山城
こちらが着いた時には、既に荷物が届いていた。
「早かったな、もう少し先かと思っていたが」
「これも航路開拓をしてくれたからですよ」
答えるのは鴻池の一部門、鴻池海運の幹部を務める奈佐日本ノ介が笑う。
商売拡大の為に自前の海運部門を作るにあたってスカウトしてみたら応じてくれたのだ。
海賊と呼ばれるが彼らの実態は武装商人の側面が強く、大陸やその半島に出向いて私貿易をしている、その過程で敵対者や商売敵と戦っていたら海賊認定されたのであった。
鴻池に来てもいいのかという問いに対して、小資本の自分たちより面白そうなという事と彼らの本拠地の領主である山名の凋落振りが酷くこのままでは巻き添えになりそうだったのでというのには驚いた。
まあ歴史でも山名は毛利の勢力に飲み込まれかけそして新たに来た織田に攻め滅ぼされるんだけどね。それに薄々気が付くのは凄いんじゃないだろうか。
「この航路は先は蝦夷地まで繋がっていますからな、蝦夷地の物は大層喜ばれるので仕入れに行くのも楽しみで」
「成程」
「それに蝦夷地でも鉄製品や酒などが非常に珍重されて交換材料としても最高でして、笑いが止まりませんよ」
「そうか、荷物の方は受け取った、ご苦労だったな」
そう言って彼らと分かれる、彼らはこれから日本海沿いに北へ向かい最終的に蝦夷地に行ってくるのだ。
さて今度はこの荷物をこの先の城の主に持っていくだけだ。俺の視線の先には春日山城がその威容を見せている。
☆
「久方ぶりじゃな、頼んでいた物は無事に着いたか、楽しみじゃな」
「お久しぶりでございます弾正少弼様」
目の前に居るのは上杉不識庵謙信である。
前回東国を回った時に献上した酒が気に入り度々注文が届くようになった。
北行きの積み荷には必ずと言っても良いほど不識庵行きの酒樽が積まれている有様である。
そんなに飲んで倒れても困るのでつまみに塩や辛いくらいの梅干をつまむのは止めるように勧めている。高血圧対策の減塩製品を開発する羽目になった。
「前回良い塩鮭が手に入ってな一杯やりながら話そう」
「減塩の奴でしょうな?」
「ま・まあ、偶にはいいではないか」
どうやら辛い奴に嵌っているらしい。減塩を進めなくてはな、側近には注意しておこう。
越後は米のいいのが獲れるから此処に酒蔵を置いてもいいかもな、鮭も遡上するからか工場を作ってもいいし。その前に目の前のうわばみを何とかしないとドツボに嵌りそうだな。
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