第二十八幕 島津流決闘とハニトラ?
戦いは終わった……
「む・無念……」
杯を取り落とし、歳久はうめき、倒れた。
「勝った……のか?」
飲み慣れた普通の清酒で良かった。これが焼酎や泡盛だったらやばかったかもしれん。
この頃の島津は琉球と交易はしていたが泡盛は貴重だったのか出てこなかった、まだ存在しない可能性もあるな。薩摩の焼酎はサツマイモが伝来したのはもう少し後だから存在しない、無くてよかったよ。
「歳久も相変わらずの拗ね物よ」 と義久が言い。
「照れくさいのでしょうな」 と義弘が笑う。
この二人……最初から弟の内心など読んでいたのか、流石に仲の良い兄弟だけな事はある。
どうやらこの勝負は歳久なりの歓迎だったようだ。実に島津らしい、いや迷惑な歓迎だよ。
無論島津流ロシアンルーレット、火縄銃を縄で吊るし其れを回す中に座ると言う、罰ゲームのような勝負だったら家に帰ってるね。まああれは江戸時代になってからだろうけど。
だがそろそろ限界だ。俺は意識を手放した。
■
「う……朝か」
どうやら朝のようだ、布団に寝かされていると言う事はあのまま潰れて介抱されたようだ。
「おめざめになられました?」
え?布団の中から声がする! 布団を剥がすと中から幼女が現れた!
「誰だ?」
「かめじゅです」
亀寿! って義久の娘じゃないか! なんで此処に居るんだ?
「鹿介様おはようございます! って!!」 「あらぁ♪」
間の悪いことに咲とえんが入ってきた。
「ムキーッ! 鹿介様ったら咲の事を幼女扱いにしていながら真の幼女と同衾するなんてー」
ウガーッと咲が吠える、因みに咲は合法だった。何がとは問うてくれるな。
「島津殿とも義兄弟になられるんですか? いい事ですけど」
えん、兄弟ではなく親子になるのではと思わず突っ込んだよ。
「鹿介殿、おお! 亀寿を貰ってくださるか! これで我が家も山中家と親戚でござるな!」
義久殿……そんなに嬉しそうにしないで下さい。
■
「亀寿がな、どうしても鹿介殿で無いといやじゃというのでな嫁に貰ってくださらんか?」
「義弘殿……」
あの後咲達の誤解は解けたが島津側は亀寿押しの一手である。
流石に数えの五歳ではこの時代でもアウトだろう。
山中鹿介はロリコンだったなんて後世に伝えたくはない物だ。因みに毛利輝元もロリコン疑惑があるが、彼の場合は正室が性格がキツかったので癒しを求めたと言うのがほんとらしい。
「山中殿、可愛い姪の亀寿が薩摩から外に嫁に出るのは哀しいがこれも島津の為、よろしく頼みますぞ!」
歳久君、君も話は最後まで聞いてくださいね。
「しかのすけさま、かめはおおきくなったらしかのすけさまのところにいきます、そのときはおよめにもらってください」
「はっはっはっ、鹿介殿、亀寿は言い出したら聞かぬのでな、なに今すぐでは無い、子供が成せる様になったら頼みますぞ」
義久殿も大概に酷い。これは話を逸らさねば。
「まあ、それは先の事として島津殿にこの薩摩に合った作物を提案しましょう」
「なんと! 其の様な物が?」
「これです、これは唐芋と申して大陸のごく一部の地域で作られていた物だそうです、火の山の灰で作物が育ちにくいこの薩摩でも問題なく栽培できるほど痩せ地でも育つのです」
「なんと! 其の様な物が」
正確にはルソン(今のフィリピン)で見つけたものだけどな。多分あるだろうなと探させてあった時には小躍りしたよ。
「まずは我等の手の者が試しに栽培してみます、うまく行けば薩摩で大々的に栽培なされ」
薩摩の問題は火山灰の土地が多いため国の広さの割りに人口が少ない事である。当然豊後と肥前・筑後に力を伸ばしている大友と比べると歴然とする。
だからサツマイモを栽培させて其の差を埋める足しにしたいのだ。
島津兄弟は芋に夢中である。これで亀寿との事はうやむやにしてしまおう。
「あ、お返しに薩摩の名産送ります。勿論亀寿の事もお忘れなく」
ちくしょう、うやむやに出来なかったぜ。
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