第二十五幕 九州の武将たち
高炉が完成し火入れに向けて準備が進められる。高炉は一度動かしたら止められないからだ。燃料のコークスは石炭を乾留して得られるが其のとき石炭ガスを発生する。其のガスを照明に利用しているので美祢には街灯があったりする。夜も明るいと評判になったよ。
鉄鉱石も周防と長門には鉱山があったりする。実は地下資源宝庫だったりするのだ。
「鹿介様、九州に放っていた者たちが帰ってまいりました」
源四郎が音も無く傍に来る、忍者ってどうやってその辺の物音を消してるんだろうね?
「判った、戻って聞こう」
屋敷に戻って防諜を施した部屋で話を聞く、まあ襖で外から見えないようにして周りに見張りが居るだけなんだがね。九州各地に行っていた鉢屋と風魔の者たちが居た、地の利が無くて大変だったろうと言うと商人や巫女、琵琶法師、旅芸人になって行ったそうだ。元々鉢屋は門付けなどで諸国を廻っていたし杵築大社の巫女は遥々九州まで行ってたので疑われないのだそうだ。流石に大隅・薩摩までは行っていなかったので珍しがられたが、杵築大社の遷宮の為に寄進を募っていると返して逆に寄進を勧めたのだとか、やるなあと思ったよ。
「先ず大友ですが耶蘇教(キリスト教)を巡って家臣たちの間で諍いが起きております。当主義鎮は耶蘇教に傾倒しつつあるとの話でそれに反発する家臣たちとうまく行っておりません」
やっぱり安定の大友だった。この世界では毛利が博多を押さえている為、龍造寺と揉めてはいないが結局宗教問題で衰退は決まっていたようだ。このまま島津と日向で争うことになるのかな?
「龍造寺は当主の隆信が強権を振るっておりその情け容赦の無い遣り方に反感が高まっております。家老の鍋島が支えていますが其の鍋島も自分が疎まれているのに気がついており発言行動には気を遣っているようですな」
「ほう? なかなか面白いネタではないか、日頼様が居られたら仕掛けていただろうな」
「いえ、既に仕掛けられていたようです、疎まれているのも鍋島が隆信の嗜虐に眉を顰めていると噂を流したようで」
なんと、流石謀神だね、しかも芸の細かい事に鍋島と親しい者が鍋島が言っていたと話していたのを龍造寺の子飼いが聞いたのだが、その親しい者に鍋島が言っていたと吹き込んだのが毛利の手の者だったようだ。親しい者は其れが鍋島が言っていたと信じ切っていたようだ。鍋島も無実を晴らそうと必死になったが逆に隆信に疑いを持たれるようになったのまで謀略上の計算だったらしい。
しかもこの謀略、小早川隆景が引き継いでいて、鍋島追い落としが実現するまでやる積りらしい。鍋島に出来る事はこのまま仕えて誅殺されるか引退するか隆信を誅して主家を乗っ取るかくらいしかないみたいだ。
大村や有馬は耶蘇教への傾倒が酷いようでこれ又何らかの手入れが必要だという話である。まあ実際スペイン等の植民地獲得の為に片棒を担いでいるのでこの国の仏教と変わりはしないと思うのだが、外からの新しい物に惹かれるのはこの国の人間の性なのかもしれないな。
「して他の国の情勢は?」
「肥後は阿蘇、相良等の勢力が割拠しておりますがどちらも菊池を滅ぼした大友と結んで国内の安定を図っております。日向は伊東が飫肥城を中心に勢力を広げていますが木崎が原での合戦に破れ勢いが落ちております」
「大隅は肝付の勢力衰え、島津に押されております、このままでは服属も時間の問題かと思われます。薩摩は島津が統一しました。このことで島津の勢いが増し大隅、日向を攻めるものと思われます」
こうして見るとマトモなのは島津くらいしか居ないのか?
「それでは島津と商売の話をした方が良さそうだな」
「御意、既にあちらでの伝の方も探しております」
「話が早くて助かるな、島津が欲しがりそうな物を見繕って行くとするか」
あそこが欲しがるのは基本米など食料品だろうけど椎茸や酒なんかは行けるんじゃないかと思う。向こうは鉄砲伝来の種子島を配下にしているから鉄砲なんだろうけど自分の処の分だけで一杯で売ったりはしないだろうな、まだこの時代サツマイモも伝来してないし桜島大根はまだ栽培されていないようだ。菱刈の金山も見つかったのは随分後だし現在の技術で掘れるんだろうか?要研究だな。
取り敢えず九州は島津と取引をするとしよう、九州制覇を目指すと当然毛利や織田とぶつかるだろうけど今のところそれを理由に九州の他の勢力に加担できないんだよね。大友は宗教がらみで厄介だし、毛利と現在も戦争中だし、龍造寺も隆信の気性からパスだな、鍋島が生き残っていたら考えよう。
他の勢力も小さい上に問題がありそうで付き合いがしにくいからね。
☆
鹿介達は博多までやって来た、毛利の支配下になってから博多の復興は目覚ましく来るたびに新しい店や蔵が建っていた。
「以前以上の賑わいを取り戻して来ましたな」
以前の博多を知る商人が鹿介に話しかける。彼は九州における鹿介の店{鴻池}を任されている人物である。鉢屋に繋がりがあったのでスカウトしたのであった。
そこに店の使用人が駆け付け鹿介達に告げる。
「御店に御客様がお見えでございます」
「誰かな?約束はしていなかったはずだが?」
「それが……薩摩の島津家の使いだと名乗られておりまして、勿論店は島津家とは取引しておりません、その為如何せんと来た次第で」
「待っておられるのならお会いするとしよう、だが急な話だな」
何やらきな臭い、そう鹿介は感じていた。
どうやら頼みもしないのに又難問や苦労がやってきたようだ。そう思った鹿介は軽く舌打ちをしながら店へと急ぐのであった。
読んでいただきありがとうございます
感想、評価などをいただけると嬉しいです





