第二十四幕 兄事
安芸 吉田郡山城
元就が亡くなって葬儀等諸々の行事が終わった後、鹿介は輝元に呼ばれて訪れていた。
人払いされた部屋には輝元と叔父の吉川元春、小早川隆景しかいない。
「鹿介に来てもらったのは他でもない、この輝元たっての願いがあったのでな御足労願ったのだ」
「成る程、して願いとは?」
「儂の兄になってくだされ!」
「!? はぁぁぁぁぁあ?」
一瞬の間を置いて鹿介は絶叫した。
☆
「驚かせて済まぬな、これは亡き日頼様(元就の法名)の最後の願いなのだ」
そう謝る元春が語った話では……
輝元は鹿介が元就と会った後に元就に呼ばれていた。
「輝元よ、この先天下統一へ時代の流れは代わって行くだろう、毛利家はそれに備えなければならぬ」
「はい、其れまでに力を付け領土を大きくするのですね」
「それは悪手じゃな、大きすぎる事はこれから危険になるであろう」
「何故です? 力を持つ為には領土を増やすしかありませぬ」
「これまでならそれで通っただろうな、だが、天下布武……其れを唱えている男には単なる肥えた獲物に過ぎん」
「なんと!」
「輝元よ{毛利は天下を望まず}は何故だと思う?」
「それは……天下の担い手になるには毛利は非力だからです」
「それだけではない、儂は遂に見つけられなかったのだ、天下を切り回す術をな」
「天下を切り回す……」
「鎌倉の幕府も足利氏の幕府も天下を切り回したとは言えんな、有力な家臣たちによって振り回され力を失っていった。今までと同じ遣り方では同じ道を辿るのみ。直に戦国の世に逆戻りじゃ、じゃがあの男、織田信長は違う。奴は我々が考え付かなかった方法で天下を纏めようとしておる。輝元よ、織田家を敵に回してはならん。其の為には山中鹿介の助力が是非共必要なのだ」
「では、家臣に勧誘を」
「無理じゃな、あの男は地位や金では動かん男じゃ、それ故にあの織田信長も心を開く、故に味方にしなくてはならんのだ」
「ではどうやって?」
「尼子家を抱えて居るから毛利家は他家よりも有利じゃ、旧主家を粗略に扱わねば鹿介は味方してはくれよう、じゃがもう一つ押して置きたい」
「それはどうすれば?」
……そうして告げられたのが輝元が鹿介の弟に成ると言う物であった。
☆
毛利元就……流石に謀神と言われるだけの事はある。とんでもない事を考えてくれるよ。義兄弟というわけか、あの元就三国志演義でも読んでたのかな?中国王朝が明になった頃にはあったはずだから伝わってても不思議はないが。
輝元も必死だが他の二人もなんか必死さが滲み出てるな、そんなに俺との繋がりを持とうとするのだろう?確かに信長や家康、浅井や北條なんかと仲良くしているからなのかもしれないけどね。
まあ、尼子家や大内家を庇護してもらってるからこちらとしても毛利家と仲良くはしておきたいんだけどね、でも{やはり、縁組しないといけませんな}と言われて毛利一族から嫁が来るのは勘弁してほしい、奥さんは三人でも多いくらいなのだよ、誰だろうねハーレムなんか欲しがる奴は、大変さが判らない妄想厨に違いない。
仕方がないので承知したら狂喜していたよ、但し縁組は勘弁というと残念な顔をしていたね、主に吉川元春が。三人の中で娘を含めて子供があるのは彼だけだしね。因みに彼女の嫁さんは不美人だという説があったがそんな事はなかったよ。あの説の元になった資料は彼女の実家熊谷家を安芸武田時代からの同僚だった香川家がディスった物だったようだ。戦国時代の敵は江戸時代で取るみたいで執念を感じるね。
という事で俺は毛利輝元を義弟として持つ身になった。こんな事になるなんて想像もしたこと無いけど此れも七難八苦の一つなのだろうか?
☆
そうして久々に美祢に戻った俺を待っていたのは巨大な建造物であった。
「とうとう出来たのか! 炉は、煉瓦は大丈夫なのか?」
ここを出立前に任せた土師器作りの男が答える。
「高熱に耐えられる煉瓦作りに難航しましたが、材料を色々試したところ最適な組み合わせを見つけることが出来ました。既に小さな模型で試験に成功しております」
そこにはこの国初、もしかしたら世界初になる煉瓦式高炉がそびえたっていた。
高炉はこの時代作れないと思うかもしれないが煉瓦式の物ならば十分作れると判断した。西洋では十二世紀位にスウェーデンで作られていたそうだし、お隣の中国では紀元前に作られていたそうだからだ、勿論石炭を乾留して作るコークスを使う炉は高温になるので中々出来る物では無いその理由としては熱に耐えられる煉瓦が作れるかどうかにかかっていたのだ。
そして鉢屋衆の伝で土師器作りの一族に繋ぎを付けて試作してもらっていのだ。彼らとしても新しい技術が学べるので非常に喜んでいた。炉に空気を送り込む鞴は水車を当分は使うけどその内蒸気機関を作って効率化する予定だ。
いつもいつも苦労や難儀ばかりではやってられないからね!
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