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第十八幕 政略結婚はwin-winで行きたい物です

 立会いは俺の勝利に終わった。長政は約束通り小谷城を開城した。


 久政が喚いていたが家臣たちが抑えた。皆先行きが心配だったんだろうな。開城条件が久政の出家と美濃の寺での謹慎、長政は近江から尾張へ移され蟄居、家族は同行を許された。家臣たちは重臣たちは領地召し上げとなり織田家に仕えるのならば当面は禄を支給され、今後の働きによって領地を与えるとなっていた。その他の家臣たちは織田家に仕えたくなければ帰農せよということになり大半は仕える事になった。但し仕える者は近江から国替えを承知することとされ其れを受け入れられないものは帰農することになった、其の時武器は手放す事とされ提出した者には当座の生活資金として金や米などが与えられた。


 これは俺が信長に提案した物で刀狩と武士の在地性の排除を同時に行うやり方であり信長も喜んで取り入れていた。これを今後の征服地で行っていけば一揆等の反乱の芽を潰す事ができるので統治が非常にやりやすくなると思われた。


これが浸透すれば何れこの戦国時代を終わらせる事が出来るかも知れないな。


 ☆


尾張国 守山城


 信長の一族織田信次の居城であるこの城に浅井長政達は暮らしている。


「どうしてもついて来ると言う者たち30名だけですが配下としております」


東国へ行くついでに立ち寄ってみると其処には憑き物が落ちたように穏やかな顔をした長政が出迎えてくれた。


 其の中には浅井三代の重臣海北綱親がおり彼が家老になるそうだ。息子も付いてきて居るが彼が海北友松として絵師に成らなかったら日本の美術史が変わってしまうかもな。


 長政は信次預かりと言う事になっており彼らの食い扶持は信長が出しているそうだ。


「放置していた古渡城を改修して完成したら其処に移ってもらう、そこでほとぼりが冷めるまで謹慎という形を取ってから働いてもらう事になるな」


 信長はそう言って「甘いと思っておろう?」と聞いてきた。


 「尼子家も同じような物ですので」と答えると安堵した表情だったな。きっと古参の林や佐久間辺りが文句を言ってるのかもな。


 まあ信長が身内に甘いのは知ってるから驚くほどの事ではない、気になるのは尾張に住むと言う事でもう直始まるあの戦に狩り出されはしまいかと言う懸念である。


「尾張に居られると言う事は伊勢などで戦があれば行く事もあるでしょう、ですが決して功を焦りなさいますな、焦りが命取りと成るのが戦ですゆえ」


 余計な事かもしれないが知り合いが死ぬのはいやだからね。


「気遣っていただきありがとうございます、気をつけるようにいたしましょう」


「そうですぞ、市殿や娘御たちが居られるのですから」


 そう言うと長政はいやあと頭を搔き、傍に居た市殿が微笑んだ、娘たちは……お土産の{人生双六}に夢中のようだ、出世して天下を取るも良し、商人になって大儲けをするも良しの戦国時代版人生双六だ、今まで無かったので飛ぶように売れているうちの新商品である。


 隣の伊勢国との境には長島があり一向宗の一揆勢がおり既に一度小谷城で長政が篭城中に織田勢と戦を行っている。謹慎が解けたら従軍させられそうだしな。いい防具や武器を融通しておくか。



 清洲城に行くと信長が部隊を集めていた。長島攻めをやるようだな。小谷城攻めから直なのに良く働くな。


「長政には古渡に移って自前の兵を集められるようになってから戦に出てもらおうと思う、今回の長島攻めは間に合わんな」


 状況を聞くとあまり芳しくないらしい、長島は大河に囲まれた大きな中州である。川を通じて海から補給が来るので、陸で囲んで兵糧攻めにしても効果が出ない。其の為織田軍も士気が上がらないようだ。


「しかし、坊主共よくやる、どうするべきと思うか?」


 思わず信長が弱音を吐いた。まあ気持ちは判らなくも無い。どうしたらいいか……もしかして。


「朝廷に和議を持ちかけてもらいましょう、本願寺側は農民等を戦に加わる様に説いていますが、これは本願寺八代宗主である蓮如上人の説いた{王法為本説(社会を出離した世界では仏法が基本だが、社会では正しい王道(法)が基本だという説である)}とは相容れない教えです。此処を突いて本願寺側に此方に従うよう朝廷に持ち掛けさせ、従うならば良し、従わなければ朝廷に弓引くものとして討てばよろしい、そうなれば彼らに従う者達は減ることになると思います」


「成程な、それを全国に広めれば奴らに味方する者は全て朝廷に弓引く者となるか、本願寺の者たちも蓮如の説いた教えに叛くのを良しとしない者も出るだろうからな」


 信長も妙案だと頷いている、史実での犠牲を幾らかでも減らせればいいのだが。


「それはそうと毛利に打診して欲しいことがあるのだが……」


 信長が毛利に対して俺に聞いてくるのは珍しいな、別に直接交渉できるはずなんだが。


「この先の事を考えて毛利と縁戚を結んでおきたいのだ」


 なるほど、いきなり公式な線で交渉しにくいと考えたか、史実でも両家が縁戚を結んだことは無いし不思議には思っていたんだ。最も信長の場合浅井で失敗しているからその後は余り結びたくはなかったのかもな、武田とは必要があって結んだっぽいけどね。この世界では浅井は滅んでいないし今後の展開では親族衆で返り咲きもありそうだから縁組に前向きなんだろう。


 最も今から東国へ行かなくてはいけないから、手紙で御隠居もとなりに知らせておこうか、輝元とうしゅにはもう正室がいるから、御隠居もとなりの息子か娘の誰かかになるだろうけど、丁度年の釣り合いの取れた人が居ればいいんだけどね。


>>>>>>>>>>


安芸国 吉田郡山城


「大殿、何かございましたか?」


「我らを召されたという事は一大事でも?大友が攻めて来たのですか?」


 限られた家臣を集めて評議をする間に輝元と元春、隆景が揃い元就の前に並んで座った。


「鹿介より書状が届いてな、織田信長殿より非公式にではあるが当家と縁組したいとの希望だそうだ」


「何故、鹿介経由なのですか?」


「輝元、少しは頭を巡らせてみよ、公式な筋から話を持って行って断られては、両家の関係に罅が入る、それを嫌っての事なのではないですか」


「隆景よ、それは判るが織田家が我が家と縁戚を結ぶ理由が判らんな」


「恐らくは信長は西を目指す積りなのじゃな、畿内を完全に抑えるには四国の三好を叩かねばならん、淡路はもちろん阿波、讃岐、場合によっては伊予や土佐もな、そして丹波、播磨を抑えるつもりじゃな」


 元就の読みに輝元たちは瞠目した、流石に老いたりとは言えその判断力には曇りが無い。


「では西に向かうが毛利われらと事を構えたくないと」


「そうも取れるが……隆景よ、鹿介の手紙には続きがあってな、これは毛利の今後の行く道を決める事になるだろうとの事だ」


「それは如何なることで?」


「一向宗の事じゃ、安芸は元々念仏宗の強い国じゃ、最も同じ浄土真宗といえど教えの違いから加賀や長島の者たちとは違いこの地の宗門は我ら国を治める者たちに協力的じゃ、これは蓮如上人の教えを守っているからだが、もし織田が加賀や長島、そして本山たる石山に攻め寄せてきた場合それに呼応して彼らに合力せよと迫ってきかねん、そうなれば織田とは手切れ、戦となろう。向こうはそうなりたくない故に縁戚を結び両家の繋がりを強めたいと願っているとの事だ。だからここで決めねばならんのだ、織田と和するか戦うかをな」


「「「……」」」


 いきなりの難題を突き付けられた輝元たちは言葉に詰まり直ぐには応えることが出来なかったのであった。



読んでいただきありがとうございます


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