第4話 『熊は死して皮を留め』
実は、文章を書く時間と、サブタイトルを決める時間があまり変わらなかったりします。
朝早く。
寝惚け眼をこすりながら、二人は何時ものようにフラフラと出掛けていった。
まず仕掛けてある罠へ赴き、何もかかっていないことを確かめると、そのまま川へ行き水浴びを始める。
母親から教わりながら作った、角鎧鹿の革でできた服を乱雑に脱ぎ捨てると、それとは打って変わった様子で、ザブザブと丁寧に体を洗った。
そうして眠気と人臭さを流し終えると、水際の泥に刻まれた足跡や、葉先だけが齧られている草などを目星に獲物を探し始めるのだ。
しばらく森を駆け回り、ようやく見つけた。
久し振りの大物、その名も大勇熊。
少し開けた場所にドッシリと腰を下ろし豪快に木の実を頬張るビッグベアを尻目に、二人はお互いの顔をチラリと見ると、示し合わせた通りに左右へと分かれた。
ビッグベアは皮下脂肪が異常な程分厚く、防御力に優れ、また、重さは力であるためその体躯を裏切ることなく、攻撃力も申し分なかった。
正面から相対して持久戦を挑むのは無謀。少し前ならば成体のそれ相手に決して挑む事は無かった。
「セェェェィアァッ!!」
メキャッ…
「ゴァッ!?」
ーーーしかし、今は少年がいる。
母が隠れていた茂みから勢い良く飛び出し、ビッグベアの顔面目掛けて上体を捻りながら思い切り木剣を振るう。
頬張っていた木の実ごと顎の骨が砕け、ビッグベアは驚愕と怒りが入り混じった悲痛な声をあげる。
「ガァァッ!!」
「フッ!」ガコッ
ビッグベアは崩された体勢を反動として利用し、右腕を憤怒に燃やして叩きつける…が、木剣の迎撃によって受け流されてしまう。
「ッァァアアアアッ、ラァッ!!」
ゴシャッ…
「ガァ…ァ…」
込めた力を充分に吐き出せず、暴走する腕に振り回されグラリと大きく前によろめいた、その瞬間。
バッ!っとビッグベアの真後ろから、今か今かと機をうかがっていた少年が勢い良く駆け出す。
地を踏みしめ、背を踏み切って跳び上がり、天に振りかざしたその大剣で、驚き振り返るビッグベアの脳天を叩き割ったのだった…
縦読みPDF、良いですよね。