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 日野近辺で腕に覚えのある隊士の勧誘をしてから三日がたち、土方と真純が江戸に戻る日が来た。真純は昨年京で会った富沢忠右衛門に挨拶することができた。

「歳三、あんたはやっぱり隅に置けないわね。」

 のぶが土方の横に来てささやく。

「なんだ、急に。」

「綾部さんのことよ。新撰組にも女の隊士がいるとはね。」

「どうしてそれを…。」

「あんたの姉だもの。綾部さんは、あんたのこと、将来歴史に名を残すなんて言ってたわよ。」

「あいつが?」

「ずいぶんかいかぶってるなぁとは思ったけど、あんたのこと、ちゃんと見てくれる人がいて安心した。まさかとは思うけど、綾部さんとの恋の道で迷うようなこと―」

「ねぇよ。あんな短髪は俺の好みじゃねぇ。」

「へぇ。綾部さんだって、あんたみたいなわがままな鬼副長はお断りでしょうけどね。」

 土方姉弟は、明るく笑って別れた。

 

 土方と真純は試衛館に戻り、伊東、藤堂、斎藤とともに上洛する隊士たちを選考した。その後、最終的に52名の新加入隊士を連れて江戸を出発した。

「姉が、あんたによろしくと言っていた。」

 列のしんがりを務める斎藤が、斜め前を歩く真純に向かってつぶやく。

「大した話もせず、皆で食事をしただけだがな。」

 真純が後ろを振り返ると、遠くを見て知らんふりをしている斎藤の姿があった。

「斎藤さんも、土方さんもお姉さんがいるんですね。」

「そういやぁ、総司もだな。」

 藤堂が会話に入ってくる。

「みなさん、お姉さんには頭が上がらなそう。」

「総司の姉さんもすごい性格きついらしいからなぁ。そういえば、真純、せっかく江戸に来たのに家族に会わなかったのか。」

「はい…家族はいないんです。」

 この時代には、と心の中でつぶやく。

「じゃぁ、ずっと親戚か知り合いに世話になってたのか?」

「えぇ、まぁ…。」

「ふーん、俺と似たようなもんだな。」

 藤堂は以前、酔った席で自分が津藩主・藤堂和泉守のご落胤だと言っていた事があった。顔立ちも気品があるし、藤堂家の刀工に作らせた高価な刀「上総介兼重」を所持しているので、真純も信じていた。

「藤堂さんは、お父さんと一緒に暮らせなくて淋しかったですか。」

「ん…昔は、自分の境遇を恨んだり、母親が気の毒にもなった。昔はな。今は気にしてないさ。」

「新撰組が家族みたいなものだからですかね。近藤さんがお父さん、土方さんがお母さん、長男が永倉さん、次男が原田さん、弟が沖田さんと藤堂さん―」

「一君は?」

「ご隠居のおじいちゃん?」

 真純と藤堂は大笑いし、話を聞いていた新入り隊士もクスクス笑っている。

「俺は近藤さんよりも年老いて見えるのか。」

「いえいえ、斎藤さんが経験豊富で貫禄があるってことですよ。」

 真純は真に受けている斎藤を必死になだめる。それをまた他の隊士が笑っている。

「でも…いつまでもそんなふうにはいられないよな…。」

 空を見上げながら、藤堂がつぶやく。心地いい春風が藤堂の長い髪を揺らしていた。

 


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