婚約破棄までこぎつけない残念な2人
「カリール!今日こそ俺とお前との婚約を破棄しようじゃないか!」
「まぁ、嬉しいですわ!どなたが新しい婚約者の方ですの?」
********************
上の会話をしているのは、自分が仕えているカリ侯爵家子息カエス様と、その婚約者であるモノ侯爵家令嬢カリール様です。
申し遅れました。自分、カエス様付き従者です。
あぁ、さっきの話ですか?アホな会話かと思いますか?実際、聞いてるだけだとアホとしか思えませんけど。
当人たちはいたって真面目なんですよ?
「それで?今回のご令嬢は?」
「ハッポウ侯爵家令嬢ビージンだ!」
「…はじめまして。ビージンです」
そう言って礼をしたのは、美人と巷で有名なビージン様。
「なんて…なんて美しい方なのっ!物腰も柔らかいし、カエス様の身長ギリギリとどいてない…ステキな条件がそろった方じゃない!」
カエス様、低身長なんです
「しかも俺たちと違って性格も良いし、身分は同じだ!」
「すばらしいわ!!私たちと違って性格が良いのね!!」
この2人が良くないだけでしょう。性格、ほんとに悪いんですよ
「ところで…あなた方はどうして婚約を破棄したいのですか?とにかく婚約破棄がしたいように思えるのですが」
「「…それは…」」
あ、ビージン様、聞いちゃいましたね。実はですね、ここだけの話…
「私とカエスだと、結婚したら国が無くなるからですわ」
「現に、今までに一個城潰したし」
「…は?」
あ、言っちゃいましたか。面白くないのー。
「実は私たち、『魔力』持ちなの。しかも強大な」
「ぇ…えぇー!」
ビージン様が驚くのも無理がありません。
この世界は『力』というものが豊富です。たとえば『商売力』、『攻撃力』、『防御力』、『自家製産力』などがあります。
これはもう1人1人の性格とか性質によるので、多種多様なんですが…
カエス様とカリール様は、珍しい『魔力』持ちです。しかも強大となると、コントロールが大変でして…
「俺たち2人でいるとするだろ」
「話をするでしょ」
「最終的には言い合いになってきて」
「情緒不安定になり」
「「コントロールできずに『魔力』暴走となるわけ」」
「前はどっかの城をぶっ壊しちゃって、反省して修行してるけど…」
「結婚とかしたら、どうなるか目に見えるし」
「だったら結婚しなかったらいいじゃないとなって、だから」
「新たな婚約者を探しているってわけ」
「………そうなのですか……。
ところで、私で何人目ですの?」
お、ビージン様聞いちゃいますか。驚くなかれ…
「俺は6人目」
「私は9人ですわ」
「!そんなにですか…」
「みんな逃げちゃうのよねぇ」
「うちの国、『魔』とか敬遠してるからな。時代遅れめ」
別に、おふたりに落ち度があるわけじゃないんですよ?
カエス様はイケメンで剣の腕も良いし、カリール様は可愛らしくて頭が良いと評判なんですよ?
決してウソじゃありませんよ?
ただ皆様『魔力』に怯えて逃げてしまうだけなんですよ?今の時代、結構便利な『力』ですのに…
大事なんでもう一度言いますが、ウソじゃありませんよ?
「そんなわけで、どうですか?カエスと婚約してくれませんか?」
「大変申し上げにくいのですが…
私、婚約者がいるのですわ」
「「………え?」」
え?ちょっとまて、カエス様人はしっかり選んでこいよ…!あ、敬語が抜けました。
でも、婚約してる人連れてきちゃダメでしょ。
「実は、家同士でしか話しておりませんでしたので、事情を聞くまではとりあえず婚約していないことにしておこうと…もうしわけありません」
「いえいえ!こちらが悪いんです!うちの事情に付き合わせてしまって」
「ほんと、悪りぃな」
「いいえ、私はいいんです」
なるほど、世間に知られていなかったわけですか。でも、隠さなくてもいいんじゃないですかね?
「あの、お相手はどちらなんですか?言えなかったらいいんですが…」
「あ、今日のパーティーで発表されるはずなので大丈夫です」
「今日のパーティーって、国主催の…ってまさか!」
「我が国、テキトーの第二王子のコーリナイ様ですわ」
「「まじっすか」」
「まじっすよ」
********************
そんなわけで、ビージン様はお帰りになられることになりました。
そして、最後に爆弾を落としていかれました。
「そんなに婚約を破棄したければ、理由を説明してさっさと破棄なさればよろしいのでは?それに、隣国のマッテー国だと『魔力』持ちは喜んで迎えていただけると思いますよ?確か、魔術師がいるらしいですから。うちの国みたいに魔術師が無いっていうのは珍しいらしいですよ?」
「「……あ。」」
今ごろ気がついたらしい、カエス様とカリール様。
…実はそれ、自分も思ってました。
読んでいただきありがとうございました!