薄氷の同盟11
デレスタ子爵率いる第二迎撃軍が解放軍に敗北した。その敗北によってサンディアスはおよそ10万の戦力を丸ごと失うこととなった。戦死者は少なかったが、敗走した兵たちはそのまま離散し、王都パルデースへは戻ってこなかったのである。
そのためサンディアスはほとんど丸裸の状態で、ブロガ伯爵率いる第一迎撃軍の帰還を待たなければならなかった。いつ解放軍の刃が王都に突きつけられるのか分からぬ状況であり、そのためここのところの彼は、食事は喉を通らず、夜も悪夢に苛まれて眠ることができない。彼は瞬く間にやつれていった。
さて、解放軍が王都パルデースまであと一日のところまで来たとき、ブロガ伯爵が第一迎撃軍を率いて帰還した。かろうじて解放軍に先んじることができ、それを察知した彼らはそこでひとまず足を止めた。これによりサンディアスはひとまずの安寧を得た。
とはいえ、「これでもう安心。勝ったも同然」と思えるほど、サンディアスは愚かにはなりきれなかった。第一迎撃軍と解放軍の戦力はおおよそ拮抗している。であれば、堅牢な城壁を持つ王都に篭って戦える第一迎撃軍の方が有利。普通に考えればそうなのだが、しかし第二迎撃軍の敗北は、サンディアスの心に大きな痛撃を与えていた。彼は今のこの状況が、自分に有利だとは思えずにいたのである。
さらにそこへ、サンディアスの危機感を煽る噂が聞こえてきた。
曰く「王太子ユーリアス殿下のもとへ、多くの志願兵たちが集まってきている。ギルヴェルスの臣民は、残虐な簒奪者よりも正統な王位継承者の支配を望んでいる」。
志願兵が集まっているということは、つまり解放軍の戦力が増大しているということである。拮抗していた戦力はいずれ大きく引き離され、王都の堅牢な城壁といえども自分たちを守るには足りないかもしれない。サンディアスはそう思ったのである。
「御下命いただければ、このブロガが見事敵軍を追い払ってご覧に入れましょう」
顔に貼り付けた穏やかな笑み。その奥に自信をのぞかせながらブロガ伯爵はそう申し出た。しかしサンディアスはそれを容れなかった。
「もしそなたらが負ければ、余を守る兵がいなくなってしまうではないか!?」
耳障りな金切り声で告げられたその返答に、ブロガ伯爵は内心で失望を感じた。その程度の覚悟もなく王位を望んだというのか。そうであれば、担ぐべき神輿を間違えたかも知れぬ。しかし今更、神輿を変えるわけにもいかない。
(まあ、考えようによっては好都合かもしれぬ、か……)
サンディアスが愚かならば、傀儡にして影から操るのに都合がよいだろう。さらにデレスタ子爵が戦死したことで、サンディアス派の最大有力者はブロガ伯爵に決まったようなもの。この立場を捨てるのは、やはり惜しかった。
サンディアスの意向もあり、撃って出るのではなく篭城して迎え撃つ方向で話は決まった。しかしそれは解放軍がすぐ近くまでやって来るということでもある。そのことに気付き、サンディアスはまた顔を青くした。
「兵を集めるのだ! 奴らを圧倒する大軍を!」
サンディアスはそう命令した。戦力の増強に反対する者はいなかったので、その命令はすぐに実行された。とはいえ、そうすぐに兵が集まるわけではない。加えて、ユーリアスの存在があるせいか、兵の集まり自体も悪い。そのためサンディアスには心落ち着かぬ日々が続いた。
そんなサンディアスに献策する者がいた。スピノザである。彼はこう言った。
「敵の意気を挫く策がございます。上手くいけば、戦わずして敵を撤退させることもできましょう」
「なに!? そのような策があるのか!?」
思わず、サンディアスは身を乗り出した。そして早くその策を教えるよう、スピノザをせっつく。彼は少々もったいぶってからその策の中身を口にする。
「ユーリアスの妻子の首を刎ね、それを蝋蜜漬けにして奴らに送りつけてやるのです」
ユーリアスが愛妻家であり、また家族を大切にしていることは周知の事実である。その家族が殺されれば、彼は意気消沈とするに違いない。解放軍の実質的な総司令官はエルストだが、しかし旗頭はユーリアスである。彼の戦意を挫けば、解放軍はこれ以上戦うことが出来なくなる。そうなれば、彼らは撤退せざるを得ない。
スピノザはそのように説いた。しかしサンディアスの返答は芳しくない。
「むう……。しかし、な……」
人質にしているユーリアスの妻子は、サンディアスにとっても貴重な手札である。これを手元に残しておけば、どれほど絶望的な状況であっても、サンディアスは彼らとひきかえに自分の命を守ることができるだろう。それゆえ、彼はここで彼らを殺してしまうことを躊躇った。
「エルガンにも意見を聞いてみよう」
そう言ってサンディアスはゾルタークを呼んだ。話を聞くと、彼はすぐさまスピノザの策に反対してこう言った。
「モリード殿の策、この度はよろしくございません」
ゾルタークがそう言うと、スピノザは凄まじい形相で彼を睨んだ。ゾルタークはそれに気付かぬ振りをしながら、サンディアスの「なぜだ?」という問い掛けに、さらにこう続けて答える。
「ここで人質を殺してしまえば、解放軍に攻撃を思い留まらせることができなくなります。彼らがまだ攻めてこないのは、人質が生きているからなのです。人質を殺せば、彼らはまったくの躊躇なくここへ攻め上ってくるでしょう。
それにユーリアスは家族を殺されて、大人しく黙っているでしょうか? むしろ憎悪を募らせ陛下に復讐を誓うのではありませんか。
加えて、あの狡猾なエルストロキアめのことです。人質の死を、兵達の士気を高めることに利用するでしょう。そうなれば彼らは死兵となり、苛烈に攻めてくるに違いありません。
人質を殺せば、解放軍の枷を取り払うことになります。それは利敵行為でございます。どうか慎まれますよう……」
ゾルタークはそのように進言し、それはサンディアスの考えとも合致していた。そのため、彼はスピノザの献策を容れなかった。だがスピノザにとっては、それは面白くない。彼は吼えるようにして大声を上げた。
「それではこのまま何もせず、ただ座しておられるつもりなのですか!?」
スピノザはそう噛み付いた。自らの策こそが至高であり、必ずや上手くいく。彼はそう思っている。だからこそそれが容れられないことが理解できず、また非常に腹立たしかった。
「そうは言っておらぬ。だが、人質は生きていてこそ役に立つ。そうであろう、エルガン?」
「左様でございます。……それにモリード殿。卿の反間の計は、結果だけ見れば外れてしまっています。モリード殿の智謀は疑いありませぬが、しかしあまり自分の力を過信しすぎませぬように……」
今、サンディアスと彼に与するゾルタークらは難しい状況にある。ゾルターク自身の立ち位置は微妙だが、しかしユーリアスが舞い戻りエルストが大きな手柄を立てると困る、という点では利害が一致している。そのため彼は、ひとまずこの危機を乗り切るために、全力を挙げるつもりでいた。
それなのに、スピノザの過激で無謀な策のために情勢を悪化させられては堪ったものではない。しかしあまり強く言えば、彼はへそを曲げるだろう。それでゾルタークにしてみれば、軽く窘めただけのつもりだった。
しかしスピノザの受け取り方は違った。彼は、ゾルタークが自分のことを「無能だ」と言っているのだと受け取った。そのため、彼は憤怒で顔を赤黒く染めた。その場で反論しなかったのは、さすがに反間の計を外してしまったことは言い訳が出来なかったからである。
サンディアスのもとから辞すると、ゾルタークは執務室に戻った。サンディアスは相変わらず王の執務を行おうとはせず、彼がその全てを代行している。そのため仕事は多いのだが、しかし彼はなかなかその仕事が手に付かずにいた。
理由は、言うまでもなくこの情勢である。このままユーリアスとエルストがサンディアスを押し切ってしまえば、「ギルヴェルス王国を完全に併合する」というライシュの野望は潰えることになる。
そうなれば、ゾルタークの任務は失敗したと見なされるだろう。そのとき、彼は不都合な事実を知るものとして、ライシュによって粛清されてしまうかもしれない。粛清されずに済んだとしても、契約が果たされることはないだろう。任務に失敗した者に、ライシュがメルーフィス総督の座を与えるはずがない。
(だが、メルーフィス総督は無理でも、シルディアーナ姫を娶ることは、あるいは……)
ゾルタークにしてみれば、むしろそちらの方が主たる目的である。メルーフィス総督の役職に比べれば、シルディアーナ姫の身柄は軽いとライシュも思うだろう。ギルヴェルスに乱を起こしたのは確かなのだから、願えば彼女だけは与えてくれるかもしれない。ゾルタークはそう思った。
(生き残らねば……!)
生き残らなければ、どのような恩賞であれ貰えるはずがない。仮にサンディアスが負けたとしても、幸いにしてゾルタークには生き残るための方策がある。ライシュから受け取った、玉璽の割り印である。これさえあれば、彼がライシュから密命を受けて、サンディアスのところに潜り込んでいたのだという事を証明できる。それが分かれば、エルストとて彼を殺しはしないだろう。
ゾルタークは誰もいないはずの室内を見渡してから、懐に手を入れて封筒を取り出す。そしてそこに入っている玉璽の割り印を見て安堵の息を吐いた。
「ゾルターク殿、それは一体なんですかな?」
不意に響いたその声を聞いて、ゾルタークは文字通り飛び上がって驚いた。慌てて声のした方に目をやると、そこにいたのはなんとスピノザであった。
「モ、モリード殿……。せめてノックをしていただきたいですな……」
「それは失礼いたしました。ですがゾルターク殿、それは一体なんですかな? 差し支えなければ、是非拝見させていただきたい」
ゾルタークは話を逸らそうとするが、しかしスピノザは彼の手に握られた白い紙に視線を固定して動かさない。先ほどまでとは違い、彼はまるで獲物を見つけた蛇のような笑みを浮かべている。
スピノザがゾルタークの執務室へ来たそもそもの理由は、自らの策に賛成するよう彼を説得するためであった。そして同時に、何か彼の粗捜しが出来ないかとも考えていた。彼を貶め、あるいはその弱みを握り、自らに賛同させるためである。
それでスピノザは、部屋の扉がわずかに開いているのを見つけたとき、これ幸いと息を殺し中の様子を窺っていた。そこで彼はゾルタークの不審な挙動と、彼が懐から一通の封筒を取り出すのを見たのである。
(密書だ!)
スピノザはすぐにそう直感した。恐らくはエルストかユーリアスからであろう。「人質が殺されないように手を尽くして欲しい」とか、きっとそんな内容であるに違いない。だから彼は人質を殺すことに反対していたのだ、とスピノザは考えた。
(それに……)
それに、密書の内容がなんであれば、やましい事柄に違いはないのだ。ゾルタークの不審な挙動からそれは一目瞭然であるし、またスピノザはそういうことに関しては鼻が利いた。
スピノザは酷薄な笑みを浮かべる。ここでゾルタークを蹴り落せれば、サンディアスの側近で最も発言力があるのは彼になる。彼が失った全てのものを取り戻すには足りないが、しかしそのよい足がかりにはなるだろう。それゆえ、彼は追及の手を緩めない。
「モリード殿、私のことはエルガンと……」
ゾルタークは割り印の押された紙を封筒の中にそっと戻し、スピノザの注意をそこから逸らすべく話題を変えようとする。しかしそれはあまりにも見え透いていた。それゆえスピノザもその手には乗らない。
「そんな事はどうでもいい。やましいことがないのであれば、今すぐそれを見せろ」
吐き捨てるようにしてそう言うと、スピノザは無造作にゾルタークの傍へ歩み寄る。そして彼が持つ封筒に手を伸ばす。
ゾルタークにしてみればこれをスピノザに見られるわけにはいかない。それで彼の手を避けて身体をよじって抵抗する。
「ひ、人を呼びますぞ!?」
「呼びたければ呼べばいい! それで困るのは、果たしてどちらかな!?」
スピノザとゾルタークはもみ合いになった。そして体力と腕力ならば、若いスピノザのほうに分がある。やがて彼はゾルタークを振り払い、その手にあった封筒を奪った。
「がっ……!」
力一杯に振り払われたゾルタークは、悪いことに机の角に頭をぶつけた。頭から血を流して意識が朦朧とする中、彼はそれでも封筒を取り戻そうと手を伸ばす。しかしそのときすでに、スピノザは封筒の中を改めていた。
「くっくっく……! あーはっはっはっはっは!!」
封筒の中を改めたスピノザは、堪えきれなくなったかのように身体を仰け反らせながら大きな笑い声を上げた。そこに入っていたのは、密書などよりもはるかに危険で重大なものであった。
「これは何ですかな、ゾルターク殿!?」
そう言ってスピノザは封筒の中に入っていた紙をゾルタークに突きつける。それは玉璽の、アルヴェスク皇国の皇王が用いる、現在は摂政ライシュハルトが管理しているはずの玉璽の、割り印。それはゾルタークがアルヴェスクと通じていることを示す、何よりの証拠であった。
「そうか……。私を誘ったのも、カルノーに売り渡す算段であったのだな……!」
スピノザがサンディアスに仕えるようになったのは、ゾルタークに誘われたからである。その裏に隠された悪意に勘付き、スピノザの顔が憎悪に染まる。そして憎悪は殺意へと繋がり、彼は腰間の剣を抜くと高々と振りかざした。
「この……、裏切り者が!!」
振り下ろされた刃は、弱々しく手を伸ばすゾルタークの身体を斜めに一閃して切り裂いた。言うまでもなく、致命傷である。彼はわずかに血を吐き、そして絶命した。
「モ、モリード殿、これは一体……!」
騒ぎを聞きつけた兵士たちが、部屋の中に駆け込んでくる。そしてゾルタークの死体と血の滴る剣を持ったスピノザを見て絶句した。一方のスピノザはむしろ堂々としたもので、剣についた血を払って鞘に収めると、絶句する兵士たちに事情を説明してやる。
「これか? 裏切り者を粛清したまでのこと」
「う、裏切り者……? エルガン殿が、ですか?」
「そうよ。それがその証拠よ」
そう言ってスピノザは玉璽の割り印を見せた。ギルヴェルスの一介の兵士が、アルヴェスクの玉璽が押された書類を見ることなどまずない。それで、それが何なのか、兵士たちには分からなかったであろう。しかし、スピノザはこれ以上もなく堂々としている。そのため兵士たちは彼を捕らえることを躊躇った。
スピノザがゾルタークを「裏切り者」と呼び、そして彼を斬り捨てたという話は、すぐさまサンディアスの耳にも入った。それで彼はすぐにスピノザを呼び、事の次第を説明させた。
「モ、モリードよ。エルガンが裏切り者であったというのは、まことか?」
「まことでございます。これをご覧下さい」
そう言ってスピノザは裏切りの証拠である玉璽の割り印を差し出した。サンディアスは王子であるから、その玉璽が押された書類を何度か見たことがある。それで、それがアルヴェスク皇国の玉璽であるとすぐに分かった。
「まさか、本当に……」
アルヴェスク皇国の玉璽の割り印。それはゾルタークの内通、つまり裏切りを疑うには十分すぎる物証であった。
「恐れながら陛下に申し上げます。エルガン、いえゾルタークがライシュハルトより何かしらの密命を受けていたことは、もはや疑いようがありません。私も奴が生きていれば、遠からずアルヴェスクへ引き渡されていたことでしょう。奴のこれまでの言動は、全て利敵行為であったのです。
ときに、奴は『人質を殺してはならない』と言いました。しかし実際のところ、それは陛下の御為を思ってのことではなく、むしろユーリアスの為だったのです。人質を殺せば敵軍の士気に影響が出ると、彼は知っていたのです。それで、躍起になってそれを阻止しようとしていたのでございます。全ては、我々を貶めるためなのです」
スピノザのその言葉を聞き、サンディアスの顔が怒りに染まる。彼の脳裏に忠臣面をしていたゾルタークの顔が浮かぶ。澄ましたその顔の裏で、自分を貶めるための陰謀を張り巡らしていたのかと考えると、腸がねじくれ返る思いであった。
「奴の死体は犬に喰わせてしまえ! いや、切り刻んで豚の餌にしろっ!」
怒髪が天を突く鬼の形相でサンディアスはそう命じた。彼の怒気に当てられて顔を青くした兵士たちが、足をもつれさせながら出て行く。やがて、サンディアスの命令は忠実に実行された。
「……それで、モリードよ。これからどうすればよいと考える? 思うところを述べよ」
怒りの収まりきらない様子のサンディアスだったが、彼はそう言ってスピノザに献策を求めた。それに対し、スピノザはすぐさまこう述べた。
「それでは、今すぐユーリアスの妻子の首を刎ねますように。そしてその首を敵軍のところに送りつけてやるのです。さすれば、ユーリアスは己の愚行を深く悔いることでしょう。彼が意気消沈とすれば、敵軍の士気も大いに下がります。彼らは戦える状態ではなくなり、きっと瓦解してしまうことでしょう」
スピノザの献策はさきほど彼が述べたことと同じだった。しかし、先ほどとは状況が大きく異なっている。ゾルタークの裏切りが明るみに出たため、彼の献策、つまり「人質を殺してはいけない」という言葉が、これ以上もなく悪いことのように思えるのだ。そしてその逆の献策、つまりスピノザの「人質を殺すべし」という言葉が最上であるように思えてくる。
そこへ、スピノザはさらにこう付け足した。甘い毒を吐くかのような口調であった。
「それに、ユーリアスの愛妻家ぶりは広く知られております。妻が、そして家族が死んだことを知れば、彼は後を追うのではないでしょうか。
ユーリアスさえ死ねば、全ての問題は解決するのです。アルヴェスクは介入する理由を失い、ギルヴェルスの全ての臣民は陛下の王権と威光の前にひれ伏すでしょう。
戦わずして勝つ。これこそが最上の策ではないでしょうか?」
スピノザのその言葉に、サンディアスの心は大いに揺れ動いた。一度戦になれば、その勝敗は結局のところ終わってみるまで分からない。つまり、多少なりとも負ける可能性があるということだ。
デレスタ子爵が負けて以来、サンディアスは常に恐怖を覚え、それに苛まれていた。彼は負けることが怖かった。それでスピノザの言うとおり、戦わずして勝てればそれが一番良いと思った。
「……良かろう。お主に任せる。良いようにせよ」
「ありがたき幸せにございます」
スピノザは蛇の笑みを浮かべながら平伏した。
サンディアスの許しが出ると、スピノザはすぐさま行動を起こした。その日のうちにユーリアスの妻子、つまり妻のフレイヤ、長男のトレイズ、次女のメルディアを幽閉されていた地下牢から連れ出し、刑場で彼らの首を刎ねたのである。スピノザが手ずから、彼らの首を斬った。
彼らの首は蝋蜜漬けにされ、そして解放軍に送られた。後の歴史家は言う。「この瞬間、エルストロキアの謀略が加速した」と。
余談になるが、スピノザが斬った人の数は、戦場よりもその外での方が多い。




