勝利を飾りに10
「壮観だな、ロキ」
アルヴェスク皇国の南東、メルーフィス王国との国境の近くにある小高い丘の上。そこから自らが率いる皇国軍を眺めた摂政ライシュハルトは、血の滾りが滲むかのような口調で隣に立つ友人にそう言った。
「まことに」
そう答えたのは、エルストロキア・レダス・ロト・アルクリーフ公爵だ。言葉こそ短くて淡白だが、彼の顔には繊弱と評せられることもあるその容姿に似合わぬ獰猛な笑みが浮かんでいる。
彼らの眼下にある皇国軍は大軍だった。
まず、カディエルティ侯爵やマクレイム伯爵らをはじめとする東方貴族らの連れてきた領軍がおよそ10万と5000。再編された近衛軍からは5万。数としてはもう少しいたのだが、隊としての体を為し、さらに精兵と呼べるものだけをつれて来たためこの数と成った。近衛軍の再編はまだ途中である。
加えて皇王の直轄領である天領の代官らに命じて出させた兵が、もう5万。これらの兵は全て近衛軍のラクタカス将軍の隷下におかれ、これら合計10万の兵がさらに総司令官であるライシュの直属部隊とされている。これが本陣になる。
カルノー・ヨセク・ロト・オスカーはこの本陣で1万の兵を任された。1万といえば立派な軍勢であり、その指揮官ともなれば一角の将軍と言っていい。ついこの前までは騎馬2000騎を率いる部隊長であったから、大幅な出世といえた。
この出世には無論理由があった。一つは先の盗賊団討伐の功績である。さらに10万にまで膨れ上がった本陣を軍勢として機能させるための部隊指揮官が足りなかった。通例であれば近衛軍から仕官を派遣するのだが、生憎と近衛軍は再編中で人材不足。そのためカルノーを筆頭に才のある者を出世させて対応したというわけだ。
『すまんな、カルノー。結婚式を控えているというのに』
カルノーとその婚約者であるジュリアの結婚式は、当初初夏を予定していた。カルノーが留守居役であれば予定通りに式を挙げることができたのだろうが、しかしこの通り彼は従軍することになった。そのため二人の結婚式は延期され、今のところ何時になるのか分からない状況である。
『お気になさらず。それに遠征となれば国家の一大事業。そこに参加できるのは武官の冥利に尽きるというものです』
そう答える未来の義弟の肩を、ライシュは満足げに叩いた。
『式は遠征が終わってからだな。盛大にしてやるから覚悟しておけ』
『……お手柔らかに』
悪戯っぽいライシュの言葉にカルノーは頬を引きつらせた。この友人のことだからやるといった以上はやるだろう。そのようにして祝ってくれることはうれしいのだが、式が盛大になればなるほど主賓であるはずのカルノーの居心地は悪くなっていくに違いない。それを見越した上での、「覚悟しておけ」という言葉だった。
閑話休題。さらに摂政から直々に派兵を命じられたアルクリーフ公爵家からは、当主のエルスト自身が3万の兵を率いて参陣した。これは先の内乱で見事な手腕を見せたエルストの智謀を含め、アルクリーフ領軍の武運を頼ってのことだ。
ただしこれは表向きの理由であり、裏向きの理由としては国内最有力貴族であるアルクリーフ公爵家の力を派兵によって削ぐという目的があった。力を持ちすぎた貴族というのは、宮廷(つまり皇国の政治中枢)からしてみれば不穏分子でしかない。その力を削ぐのは当たり前のことで、そのことはエルストの側も十分に承知していた。
そしてもう一つ。エルストに派兵を命じたライシュにはごく個人的な理由があった。自分が留守にする国内にエルストを残しておきたくなったのだ。
内乱が終わったことで皇国内は安定している。安定しているからこそ、遠征を決断したとも言える。その状況で、いかにアルクリーフ公爵家といえども付け入る隙があるとは思えない。
しかし、しかしである。良くも悪くも、ライシュはエルストのことを非常に高く評価していた。さらに彼は友人の野心を薄々ではあるが感じ取っている。なればこそ、この友人であれば自分の思いもよらぬ策謀を仕掛けてくるのではないかと、そう思わずにはいられなかったのだ。
それでも、ここでエルストを殺してしまおうと思わぬのが、ライシュハルト・リドルベル・アルヴェスクという男の高潔なところであろう。ライシュはただエルストに派兵を命じ、さらに彼を全軍の参謀長にして本陣内に置き領軍から引き離した。そうやって彼を無言のうちに牽制したのである。
『頼む、ロキ。野心を捨ててくれ。そうすれば俺たちは上手くやっていける』
ライシュはそう言いたかった。しかし、その言葉を口に出せばエルストとの関係は決定的なものになってしまうだろう。一度抱いた野心をそう易々と捨てることなどできるはずもない。ライシュはそれを知っていた。なにしろ、彼自身がそうなのだから。
まあ、それはそれとして。皇国の遠征軍にはさらに小さな軍勢が加わっていた。それは騎馬5000からなるリドルベル領軍である。これを率いるのはジュリア・ルシェク・アルヴェスクであり、実質的な指揮を執っているのはアトーフェル将軍だった。
当然のことながら、ライシュは妹のジュリアが遠征に付いて来ることを良しとはしなかった。
『母上のもとで花嫁修業をしていろ。何もできない人形のような女など、カルノーの好みではないぞ』
無論、後半部分は言葉をきつくしないための冗談なのだが、ジュリアは笑わなかった。それどころか触れることもせず、ただ短くこう答えた。
『お断りします』
妹のその答えを聞いてライシュは眉をひそめ、次いで深々とため息を吐いた。
『パーティーに行くわけではないのだぞ。戦場へ、しかも他国へ行くのだ。我儘をいうものではない』
『ですが、わたしが一緒に行く方が兵の士気は上がりましょう?』
それはライシュも認めざるを得ない事実だった。ジュリアが戦場に立つことで兵の士気は上がる。そのことは先の内乱で証明済みだ。さらにホーエングラムを手ずから討ち取った彼女は、兵士たちの間では「勝利の女神」とまで呼ばれている。そんな彼女を連れて行くというのは、戦力面を考えれば確かに意味があるだろう。しかしライシュは当初、あまり乗り気ではなった。
『俺では力不足か?』
『そうは申しませぬ。しかしこの遠征は兄上の一大事業。成功させるためにあらゆる手を打とうとは思われぬのですか?』
そう言われ、ライシュは「ぬう」と唸って考え込んだ。メルーフィス相手に負けるとは思わぬ。そもそも兵の士気を頼りにした作戦など最初から考えていない。ジュリアがおらずとも遠征を成功させるための筋道はすでにできている。
しかし、戦とは水物である。必勝の体制を整えたとしても勝てるとは限らない。かくいうライシュも、数の上では圧倒的に勝るホーエングラム相手に勝利を収めた。戦場とはそういうことが起こる場所なのだ。そのことを考えると、ジュリアを連れて行き兵の士気を高めるというのは、非常に魅力的な選択肢だった。
『まったく……。甲冑の着心地と言うのはドレスよりも良いものなのか?』
『ドレスの代わりに甲冑を纏って式を挙げたいと思う程度には』
しれっとそう返され、ライシュはため息を吐きながら頭を振った。なにはともあれ、ライシュはジュリアが遠征についてくることを許可したのである。リドルベル領軍の5000騎は、言ってみれば丸ごと彼女の護衛だった。
『良いか、アトーフェル将軍。こちらを気にする必要はない。いざという時には、首根っこ引っ掴んででもあのじゃじゃ馬を後ろに下がらせろ。よいな』
ライシュはアトーフェル将軍にそう命じた。無論、ジュリアにも「無茶はせぬように」と厳重に言い聞かせてある。彼女は神妙な顔をして頷いてはいたが、それを見てもいまいち安心できないのは、彼女に前科があるためかもしれなかった。
さて、なにはともあれ以上の24万が陸上を行くアルヴェスク皇国遠征軍の全戦力となる。さらにこの他に海軍が準備を整えており、その中にはブランメール伯爵ら南方貴族の軍艦も含まれている。無論、この後ろには補給部隊と予備戦力が控えているが、こちらはいわゆる戦力の範疇には入っていない。
全軍の準備が整うと、ライシュは出撃を命令した。全軍の先頭を行くのはカディエルティ領軍であり、その後ろに東方貴族たちの軍勢が続く。さらにその後ろに本陣があり、アルクリーフ領軍は一番後ろの後詰だった。なお、リドルベル領軍は本陣に組み込まれている。
やがて、遠征軍はメルーフィスとの国境を越える。これを阻むメルーフィスの国軍は見当たらない。宣戦布告の話は伝わっているのだろうが、準備が追いついていないのだろう。
(なかなか、侮りがたい相手のようだな)
ライシュはそう思い気を引き締めた。中途半端な戦力を配置しても叩き潰されるだけとはいえ、敵軍が進入してくるとなればこれを阻む戦力を置きたくなるのが人の心情をいうものだ。メルーフィス王国の上層部は今、その気持ちを押し殺して決戦のための戦力を集めているに違いない。
つまり、メルーフィスは諦めていない。どのような展望を持っているのかは分からないが、ともかく一度はアルヴェスクと事を構えるつもりでいる。それが賢い選択であるかはともかくとして、そういう相手がライシュは嫌いではなかった。
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時間は少し遡る。アルヴェスク皇国からの宣戦布告が皇国駐在大使によって伝えられると、メルーフィス王都〈プレシーザ〉の王宮は騒然とした。宣戦布告の理由である私掠船についてこの時初めて知ったものも多く、それが事態の混乱に拍車をかけていた。
「私掠船など……。なぜそのような浅はかな真似を……」
「露見すればアルヴェスクの逆鱗に触れることぐらい、子供でもわかる理屈ではないか!」
「そもそも、そのように重大なことをなぜ我らに相談しなかったのか!?」
「責任者の首を差し出せ! それでアルヴェスクも矛を収めるはずだ!」
王宮内のそこかしこでこのような声が上がったが、どれもこれも建設的とは言い難い。それどころか現状をどのように切り抜けるのかという点についていえば、まるで役に立たない議論ばかりだった。
「静粛にせよ」
動揺する廷臣たちを諌めて静かにさせたのは、メルーフィス王国国王のアルバート4世だった。醜態をさらす臣下たちを不機嫌そうに見回して黙らせると、彼は玉座に座りながら居住まいを正した。
「まず、私掠船に関してであるが、最終的な許可を出したのはこの余である。それゆえこの首差し出せば確かにアルヴェスクは軍を止めるやもしれぬが、どうか?」
どうかと問われてもすぐに答えることのできる廷臣はいなかった。先程まで「責任者の首を差し出せ」と騒いでいた貴族も、その責任者が他でもないアルバートであることを知って顔を青くしている。王である彼に面と向かって死ねと言える者は、この場にはいなかった。
「まあ、奴らが欲しいのは余の首ではなくこの国全てだ。この首を差し出したところで軍を止めるとは思えぬがな」
「左様ですな」
そう言ってアルバートの言葉に同調したのは、宰相ゾルタークだった。歳はすでに五十を越えており、頭は額から頂点にかけての広い部分が禿げてきている。美丈夫とは言い難い男だったが、彼の真価は外見ではなくその政治的な手腕の方にある。宰相の地位にあることからも分かるように、アルバート4世の片腕として辣腕を振るっていた。
「さて、ともかく今後の方針を決めねばならぬ。つまり、戦うのか、それとも降伏するのか、だ」
私掠船についての責任論をいささか強引にではあるが封じ込めると、アルバートはそのように話して廷臣たちの意識を目の前の事態に集中させた。彼のその言葉を皮切りにして、廷臣たちは再び議論を始める。
「仮に戦ったとして、そもそも勝てるのか? 相手はあのアルヴェスク皇国だぞ。国力差は圧倒的だ」
「左様。それに一時の勝利を得たとしても、アルヴェスクは再び軍を差し向けてくるだろう。大国の面子にかけて、我らを滅ぼそうとするであろうよ」
「ならば降伏すべきではないのか。国境の幾つかの州をくれてやれば、それで矛を収めるのではないか?」
「いや。陛下の言われたとおり、アルヴェスクの望みはメルーフィスの全て。例え国の半分をくれてやったとしても、それで満足するとは思えん」
「無能者め! それを何とかするのが交渉であり貴様らの仕事であろうが!」
「なにを!? 罵倒するだけなら猿でもできるっ! 人を無能呼ばわりするのなら、それ相応の結果を残してからにしてはどうだ!?」
「止めよ、見苦しい」
アルバートのその声は殊更大きくはなかったが、騒がしい議場によく響いた。今にも掴み合いを始めそうだった廷臣たちが、彼の一言によって静かになり荒々しくではあるが腰を下ろす。そして全員の視線が自分に集まったことを確認してからアルバートは再び口を開いた。
「ラグナス将軍。今から兵を集めたとして、どれほど集められる?」
アルバートから尋ねられ、一人の男が立ち上がった。鎧を身に纏っているわけではないが、その佇まいは完全な武官である。もっとも、彼を一目でも見れば文官と間違える者はいないだろう。
彼は隻眼だった。左目を大きな眼帯で隠している。昔、戦で矢を左目に受けたのだが、矢を引き抜いて眼球ごと投げ捨てそのまま戦い続けたという逸話を持つ猛将である。
「……およそ10万、でしょうか」
立ち上がったラグナス将軍は、一礼して少し考え込んでからそう答えた。メルーフィス国軍の総戦力は全部で40万と言われている。しかしそれは数だけであって、実際問題として40万の兵を集めることなどほとんど不可能である。そもそも今回は時間が圧倒的に足りない。ラグナス将軍が口にした10万という数字も、なるべく多く見積もった上での数字である。
「足りんな……」
アルバートは思案げに顎を撫でながらそう呟いた。アルヴェスク皇国の遠征軍がどれほどの規模になるのかは分からない。しかし20万は超えるだろう。それを相手に、10万ではどう考えても戦力が足りなかった。
「では、降伏なさいますか?」
「そうだな。よい落しどころが見つかれば、それでも良いかもしれん」
頬杖をつき、どこか自虐的な笑みを浮かべながらアルバートはそう言った。アルヴェスクの目的がメルーフィスの全てである以上、双方が納得する落しどころなど存在しない。
「では、姫君のどなたかにアルヴェスクへ興し入れいただくというのはいかがでしょうか?」
貴族の一人がそう発言した。要するに人質である。これによってメルーフィスは事実上アルヴェスクの属国になってしまうが、全てを失って併合されてしまうよりは幾分ましであろう。
「誰に、誰を嫁がせる?」
「それは……」
発言した貴族が言葉を詰まらせる。候補者は二人、つまり皇王フロイトスと摂政ライシュハルトだ。しかし二人とも誰かを嫁がせるとなると問題が出てくる。
フロイトスには年齢的に釣り合う王女がいない。アルバートには娘が何人かいるが、全てフロイトスよりもかなり年上だ。歳の離れた婚姻は政略結婚では珍しくないが、しかしこの場合アルヴェスクの方が圧倒的に優位なのだから相手を選ぶであろう。年上で、まだ幼いフロイトスを傀儡としそうな相手は断るはずだ。
次にライシュだが、彼の場合は立場が微妙だった。摂政というのは、確かに皇王に次ぐ高い地位だ。しかし、皇王ではない。しかもライシュの場合、その地位にいられるのはフロイトスが20歳になるまでと決まっている。
そのような彼にメルーフィスから王女を嫁がせればどうなるか。フロイトスが20歳になっても摂政位に居座るための、あるいは皇王になるための地盤固めと見なされ国内から反発が出ることが予想される。その状態でこの婚姻を強行すれば、アルヴェスクは再び内乱状態に陥りかねない。ライシュはそれを望まないだろう。
(ならば、アルヴェスクに譲歩してもらうほかあるまい)
政略結婚と言う手は使えそうにない。ならばアルヴェスクから譲歩を引き出し、それによってメルーフィス王国を存続させるほかない。今まで通りの形で存続させることは難しいだろう。しかし、メルーフィスという国家をこの世に残すためにはこれしかない。
とはいえそれで上手くいったとしても、アルヴェスクは国力を増しメルーフィスは逆に国力を減らす。隣に、いわば飢えた虎を置いた状態で一体どれほど国を維持できるのか。この現状を切り抜けたとしても、待っているのは厳しい未来であるようにアルバートには思えた。
(将来のことは、将来のことだ……!)
アルバートはそう思いなおす。ともかく今を切り抜けなければ、その厳しい未来を迎えることさえできないのだ。
「ゾルターク、大使を選んでアルヴェスクと交渉を行わせろ。落しどころは見つからぬだろうが、時間を稼げ」
「御意」
「ラグナス将軍。交渉によって時間を稼いでいる間になるべく多くの兵を集めよ」
「御意。ですが、それでも十分な数が集まるかは……」
「分かっておる。そこでだ……」
そう言ってアルバートはもう一度ゾルタークのほうに視線を向けた。
「ゾルターク、クシュベガへ行け。かの地の民を傭兵として雇う」
クシュベガの民を傭兵として雇う。実は、これは戦時におけるメルーフィスの常套手段だった。
クシュベガの民は、優れた騎兵集団でもある。彼らの生活の中で、馬は欠かせない存在だからだ。遊牧と共に狩猟も行う彼らは、弓の扱いにもまた長けている。これがクシュベガの略奪隊が周辺諸国で恐れられている理由の一つだった。
そのクシュベガの民を、メルーフィスは度々傭兵として雇ってきた。メルーフィスに精兵は少ないが、しかし交易によって得た莫大な富がある。この富によってクシュベガの騎兵隊を雇ってきたのである。そして、その手を今回も使う。
「クシュベガの族長たちと話をつけろ。金を惜しむな」
「畏まりました」
そのようにして戦力を集めてアルヴェスクに決戦を挑み、そして勝つ。勝ち続けることは不可能だろうが、最初の一戦だけ勝てばよいのであれば可能性は十分にある。そしてその勝利によってアルヴェスクから譲歩を引き出すのだ。メルーフィスの生き残る道はこれしかない。
アルバート4世によって明確な方針が示されると、メルーフィスの王宮は動揺を抱えつつもその方針に従って動き始めた。その中でも特に忙しかったのは、宰相のゾルタークであろう。彼は交渉役の大使に誰を任命するのか考えながら王宮の廊下を早足で歩いていた。
(早急に大使を決めねばならぬ。そして、それが決まったら金をかき集めてクシュベガへ……)
アルバートはアルヴェスクと一戦交えることを決断した。しかしメルーフィスの戦力だけでは、到底アルヴェスクにはかなわない。つまりアルヴェスクとの決戦に勝利できるかは、全てゾルタークがどれほどの騎馬隊を集めてこられるかに掛かっているといっても過言ではない。そのことに、彼は思わず肌が粟立つほどの興奮を覚えた。
(もし、万事が上手くいったその暁には、シルディアーナ姫をこの手に抱くことができるやもしれぬ……!)
そう考えると、年甲斐もなく彼の胸は高鳴るのだった。




