お題:早朝の床の上/溺れる/足音/もどかしい恋
目を開けたら、明け方の薄青い世界。フローリングに横たわった身体が軋む。そういえば、床で眠っていたのだと理解する。肩と腰に鈍い痛み。苦笑しながら 白い天井を見つめて、古びた天井のしみを数える。ひとつ、ふたつ、みっつ。小鳥の囀りと、静謐な空気が心地よい。少しだけ寒いのが難点だけれど。そうやってぼんやりしていたら、キッチンのほうから近づいてくる足音が聞こえる。とん、とん、とん。小さな木製のテーブルにマグの置かれる鈍い音。そして、私を覗き込む優しい瞳。
「お早う」
「……お、はよう」
思ったよりも声が掠れていて、いつもみたいにうまく言葉が滑り出てこなかった。そんな私を一瞥して、彼は口の端をもちあげて笑う。その仕草に、いちいちときめいてしまうから、もう、取り返しが付かない。
愛しい、と思う。それ以上に、 彼という存在にどこまでも溺れていく自分を、どこか滑稽にも思うのだ。優しい、けれど残酷な貴方。時折怖くて、無口で、そのくせ子供らしい貴方。いっそのこと、一緒にどこまでも溺れて行けたらいいのに。そんな思いを秘めながら、今日も私は貴方に笑いかける。ああ、なんて、不毛な恋。
(貴方のその指輪を、飲み込んでしまいたいのに)
「ところで何それ?」
「ん? ココアだけど。甘いのすきでしょ?」
「……うん」
「飲ませてやろうか、口移しで」
「ばっ、馬鹿じゃないの!?」
雰囲気小説。3~5ツイートでやろうと思ったらこうなった。






