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第8話 金貨5枚の緊急依頼に連行される

「探せ。今すぐに探すのだ」

 

 ギルドから遠く離れた東の大地。そこに、大きくそびえ立つ砦があった。

 

「しかし、自分の意思で出ていかれたのでしょう? ならば連れ戻すのはかなり難しいかと⋯⋯」

 

 豪華そうな椅子に、偉そうな態度で座っている者がいる。その前には、膝をつき命令を聞いている部下がいた。

 

「それとこれと、なにか関係があるとでも言いたいのか? あいつは私の娘だ。自由にさせてはたまったものじゃない」

「いえ、そのようなことでは」

 

 部下がそう言うと、大きな音が響いた。

 机が壊れそうな勢いで叩いたのだ。

 

「じゃあどういうことだ? 説明しろ」

 

 凍てつくような声だった。引き離すような、たが、そこには焦りも感じられた。

 

「なら探せ。地の果てまで探すのだ」

「ははっ!」

 

 そう言って、部下が部屋を出ようとしたときだった。砦が揺れた。

 

「なっなんだ!?」

 

 さっきまでの威厳はどこへ行ったのか、間抜けな声がした。

 

「様子を見て参ります!」

 

 部下はすぐさま部屋を出て行った。

 

「このままでは、このままでは、娘にわけを聞けずにこの世を去ってしまう」

 

 誰にも聞こえないような声で呟いた。

 

 ******

 

 あっという間に部下が帰ってきた。

 

「魔王軍が攻めてきたようです! 護衛も全力で応戦しているようですが、まったく歯がたっていないようです!」

 

 その部下の声には、焦りが含まれていた。

 

「義勇軍の応援要請をいたしますか!」

 

 部下は聞くが、答えが返ってこない。どうやら悩んでいるようだ。

 

「報酬が必要なため、莫大な資金が必要になるでしょう。ですが、このままでは、娘さんに会えず仕舞いですよ! 本当にそれでいいのですか?」

 

 部下が1番悔しがっているように見えのは気のせいだろうか。

 

「わかった。応援要請をしよう。報酬もあちら側の言い値でよかろう」

「ははっ! すぐに要請いたします!」

 

 部下は駆け出すようにして部屋を出ていった。

 

 ******


 スレイ一行は中央広場に戻ってきた。

 

「ねぇ見て! 緊急依頼だって!」

 

 ラソラはクエストの看板を見て、言った。

 そこの看板には、それ1枚しか貼られていなかった。

 

「今、ギルドの人影がやけに少なかったのは、このせいか」

 

 スレイは1つの影も見えないギルド内を見渡した。

 

「どうせみんなはこの報酬欲しさにこの依頼を受けたんだな。命知らずなやつらだ」

 

 スレイはそこではっとする。命知らずでは表せないぐらい命知らずなやつが1番近くにいると気づいたのだ。

 

「報酬は1人あたり金貨5枚だって! もちろん行こ!」

 

 ラソラは全員に有無を言わさず、ニコニコでギルドを出ていった。

 もちろん転送魔法で全員が連れて行かれるのであった。


 ******


「無理やりはやめろ! せめて許可を取れ!」

「だって〜、みんな何も言わないから、いいかな〜って、ね?」

 

 ラソラは首をかしげた。まるで自分は悪くない。返事しないやつらが悪いんだと言っているようだ。

 

「ここ、は⋯⋯本当に、ここですわよね?」

 

 スレイとのやり取りなんか気にせずラソラへと質問した。

 

「うん! 東の森に囲まれた砦って書いてあるから、合ってるはずだよ!」

 

 するとユスは、なにか決意を込めたような目に変わった。

 

「それでは私は、狙えるところへ」

「あ、待って!」

 

 スレイが行こうとするビルを引き止めた。

 

「あの銀貨で買ったやつ。遠くの人とやり取りができる優れ物だ」

 

 スレイはビルにそれを渡すと、行くように促した。

 

「行って。なんか気づいたらここから連絡して」

 

 スレイはビルを送り出すと、砦の頂上を見た。

 

「魔王軍からの本格的な侵略が開始されたか。まずいぞ」

 

 少し遠くでは、戦いの火花が散っている。見たことのないような最新兵器が山のようにあった。

 空を飛ぶ物体、大型の攻撃車など、ここからでも見えるものが複数あった。

 

「うわぁぁ! この野郎! くっついてくるんじゃねぇ!」

 

 突然叫んだのはラソラだった。ラソラの頭には緑色の生き物が乗っていた。居心地良さそうにくつろぎだした。

 

「テメェ! この野郎! どっかいけ! 死ね!」

 

 さらっと飛び出す問題発言に、耳を貸している暇はなかった。

 

「クソが! クズ! ゴミクソ! 死ね!」

 

 もう語彙力すらもなくなりつつあるラソラだった。

 

「ラソラ、カエル苦手なんだな」

 

 面白い光景が見られたとスレイは少し煽るように笑った。


「テメェ! こいつどうにかしやがれ!」

 

 スレイは仕方ないなぁとカエルをつまんだ。そして元いた森へ帰した。

 

「あぁ! 苛つく! クズがぁ!」

 

 ラソラはカエルごときに世界を滅ぼすぐらいの目つきをしている。

 ラソラは1人で砦へ突っ走っていった。

 

「おいよせ! せめて一緒に行動するぞ!」

 

 スレイはそれを追いかけた。ユスも珍しく後に続いた。


 ******


 近づいてみると、砦の周辺は火の海と化していた。見渡す限り真っ赤に染め上がっていた。

 

「何だよこれ。一瞬にしてこうなのか?」

 

 スレイは上空を飛んでいる飛行物体に目をつけた。

 

「あいつらが爆弾みたいなものを落としてる! あいつらがいる限り一生戦況は変わらんぞ!」

 

 砦の周りには、首から上がない異界生物(モンスター)や、人間の指と思われる物、ましてや生首なんかも転がっている。

 

「これは、これしかねぇ!」

 

 そう言いながらスレイは剣を出し、掲げる。

 

「『(まい)』――濤纏擲踊(とうてんてきよう)!」

 

 すると黒雲が立ち込め、晴天だったはずの天気は一瞬で豪雨地帯へと化した。

 

「これなら、火が消えるはず!」

 

 慎重派のスレイですらも焦りを見せるぐらいだ。相当まずい状態になっている。

 あたりの赤色は人の血だけに変わった。上空を飛んでいた物体も、豪雨には敵わないのか、そそくさと逃げてしまった。

 

「感謝いたしますわ」

 

 ユスは小さくつぶやくと、色んな死体が山積みになっている上を通り抜け、入り口へ向かった。

 

「門番がいるぞ!」

 

 スレイは顔をのぞかせた。入り口のところには門番が立っていた。

 

「おそらく援軍も直ちに来て一瞬で死ぬだろう」

 

 スレイは別の道はないかと探し始めた。

 

「こいつら、クソが! 『ニベーディム・プラヤ』」

 

 ラソラは死体の駆除を始めている。相当邪魔なのだろう。カエルの怒りはまだまだ収まっていないように見えた。

 

「人間は溶かすなよ?」

 

 スレイは念の為言っておく。ラソラのことだから、なにがあるかわからない。

 

「正面からの突破は厳しい。ならばあの裏口なら行けるかもしれませんわ」

 

 ユスは誰にも聞こえないような声でぼそっとつぶやくと、まったく別の方へ突っ走っていった。

 

「ユス! どこ行くんだ!」

「確認してきますわ!」

 

 それだけ言うと、ユスは見えなくなった。そこには大雨が降りつけていた。

 

「ラソラ! 右から来る! 敵の援軍だ!」

 

 スレイはラソラに伝える。

 

「俺は混じってくる! 時間稼ぎは頼んだ! 『()』――久達装身(きゅうたちそうしん)!」

 

 スレイは剣を掲げると、さっき蹴散らしたザコ敵の1人になった。

 

「じゃあ! 内側からやる!」

 

 スレイは敵側に合流した。まったく敵に攻撃されていない。バレていないのだろう。

 

「これで私の攻撃が当たっても知らねぇからな! 『インフィジャール・カリス』」

 

 ラソラは手加減無しに爆発魔法を連呼する。あたりには轟音が何回も響いた。

 

「数が多すぎるんだよ! 『シュヴェドゥメ・ムツクレリ』」

 

 そこには半透明の壁が設置される。それを境に、世界が青色に染まった。その奥から、どんどん倒れていく様子の敵達だった。


 ******

 

「『(しゃく)』――灼火情辛(しゃっかじょうしん)!」

 

 スレイは敵側の1番後ろに陣取った。中央付近だと大量攻めに遭うと考えたためである。

 あたりの敵はスレイの火を帯びた一撃で瞬殺されていた。業火の炎だった。

 

「『(れい)』――琉河邏零(りゅうがられい)!」

 

 最初の攻撃に気づいた数体の敵が攻撃を仕掛けてくる。それを冷たい刃で対抗する。それは、一度受けるとかなり体温が低くなる技だ。

 

「『穿(せん)』――亂心亂穿(らんしんらんせん)!」

 

 スレイは近づいてくる敵にも容赦なく突き刺しを始めた。刃は貫かず、途中で止まって次の手に進んでいる。

 そのことから、貫通ができない代わりに、回数が多く、さらに攻撃速度もかなり早いのだ。

 

「こんなにたくさん技を連続で放ったことはないぞ」

 

 スレイは息を整えた。久しぶりにこんなに体力を消費したからだ。それと同時に、スレイはラソラの元へ戻っていった。

 

「なんなんだこいつら! キリがねぇ!」

「クズどもがぁ!」

 

 スレイとラソラは、共に次々とやってくる異界生物を倒し、疲弊していた。

 

「『()』――薄壁脆崩(はくへきぜいほう)!」

 

 スレイは、時間稼ぎに薄くて脆い壁を何重にも設置した。

 

「仕方ない。ラソラ! 回復を準備しておいてくれ!」

 

 スレイはラソラにそう言うと、敵のいる方へと走っていった。もちろん、スレイまんまの姿で。

 

「はぁ? 何いってんだテメェ?」

 

 そう言いつつも、回復を準備するラソラであった。

 

「『アザーブ・ダル・イアーヴァ』!」

 

 ラソラの目の前には半透明の緑色の円が出てきた。


「あれを、やるしか、それ以外に、方法はねぇ!」

 

 スレイは覚悟を決めて、剣の柄を握っていた。ブルブルと、震える手で握っていた。

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