第7話 なんか連れてきちゃった!?
「こいつ、なんなんだ?」
スレイの目に入ったのは、うじゃうじゃと構えているスライムだった。
「まさか、物理攻撃が効いたのか!?」
スレイが絶縁涯脈を放ったあと、スライムは無傷だと思っていた――が、違った。
そこには、小さなスライムが複製されたかのように存在していた。
「うわぁ! お友達がたっくさ〜ん!」
その一方、ラソラは無邪気に友達が増えたと勘違いしている。もちろんその大量の極小スライムのところへ、両手を広げながら突っ込んでいった。
「ラソラ! まとわりつかれるぞ!」
スレイはなんとなくだが信憑性のある言葉を発する。それもラソラがには届いていなかった。
そして案の定スライムにまとわりつかれるラソラがいた。
「うげぇぇ! 気持ち悪いぃ!」
ラソラはなんとか自分の体からスライムを引き剥がそうと腕や足をブンブン振り回していた――が、無駄だった。
「テメェらはやく離れてぇ!」
無邪気なラソラと恐怖のラソラが混ざり始めてきた。これは人格が変わる合図だと最近理解してきたスレイだった。
「テメェ! クソがよぉ! 液体ごときが私の体に触れるんじゃねぇ!」
ラソラの口が完全に悪くなる。まさに暴言の祭りだ。
「テメェらなんか、存在ごと消してやるよ!」
ラソラがそう発したときだった。不思議なことが起こったのだ。
なんと、くっついていたスライムたちの中心から青白い光が照りだしたのだ。
「なんだこれは?」
それは小さく丸いものだった。全てのスライムが光っている。
「核か!?」
スレイがそう言ったときだった。1つの弾丸が、無慈悲にも青白い光を貫いたのだ。そして、そのスライムは蒸発したように消えていった。
「今、ビルの弾丸が効いてたか?」
スレイは確認するように後ろを振り返る。だがそこには何もなかった。
「わたくしが試して差し上げますわ! 『光閃矢』ですわ!」
ユスがその矢を放つと、それは光のような速度でスライムの核を貫いた。
「攻撃が通りましたわ!」
ユスがスレイに伝えた。
「なぜ急に物理攻撃か効き出したり、核が光始めたりしたんだ?」
スレイは思考を巡らせ始めた――そして、1つの答えにたどり着く。
「呪々靈迎の効果か?」
スレイが召喚した『影』がスライムを襲ったのかもしれない。そう考えたスレイだった。同時に、自分に被害がなくてよかったと思うのであった。
「もう満足ですわ」
ユスはそう言うと、周りを見渡した。
「いい椅子がないですわ。スレイ、わたくしの椅子になるのですわよ!」
いいご身分だなとスレイは思う。
「無理だ。もしここで動けなくなったら、スライムに吸収される確率が99.9%まで跳ね上がる」
「わたくしはその0.1%を引いて見せますわ」
ユスはなぜか自信ありげに言った。
「0.1%などあなたみたいな庶民がわたくしに巡り会えるぐらいですわよ?」
なぜそんなに自分のことを上げて見られるのだろうか。スレイにはまったくわからないことだった。
「こんな無駄話している間にも、生存確率は右肩下がりだ」
スレイはそう言うと、ユスのことを置き去りに、スライムのところへ向かった。
「椅子がなくては、いいティータイムにはなりませんわ」
ユスは仕方なく弓を持ち、歩き出した。
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「『颪射』」
ビルは弾丸を詰め込むと、そう言いながら射撃した。
その弾丸は、風をまとい、とんでもないような速度で、残酷なまでにスライムを撃ち抜いた。そして、そのスライムは気体となったように消えていった。
「命とは、どんな相手でも、尊いものでございます」
ビルはそう言うと、両手を合わせる。それと同時に、黙祷を捧げた。
あたりには、静寂が流れた。
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ラソラとスレイは共に大量のスライムを迎え撃っている。
「ザコはザコなりに働け!」
ラソラは、スレイに大声で放つ、凍てつくような言葉。
「仕方ねぇな。『舞』――風舞円頓!」
スレイはそう言いながらスライムの方へ攻撃を仕掛ける。
軽やかな動きで何体ものスライムを切りつける。スライムたちを切りつけた後、必ず風の刃のようなものが発生していた。
「テメェらなんかにやられるザコなんかどこにもいねぇんだよ! 『インフィジャール・カリス』」
ラソラが杖を振ると、轟音と共に火花が散った。その後、黒煙が立ち上る。
スレイの攻撃を受けたスライム、それは見事に核を両断され、完全に液体となり土へ返った。
ラソラの攻撃を受けたスライム、それは完全に無傷だ。火は液体であるスライムには効果がないようだ。
「ラソラ! 液体に火をやってもほぼ意味ない! 他の技にしろ!」
スレイは呼吸を整えながら言った。
「テメェなんかに指示される筋合いはねぇんだよ! 『ハヴィズル・ヴァウダー』!」
ラソラがその技を放つと、同心円状に広がっていった。敵を探知しているのだろう。
そして、大量のスライムたちは例外なく光りだした。
もうスライムは、脅威ではなく、ただ処理めんどくさいだけになっていた。
「ん? 待てよ」
スレイは光りだしたスライムに異変を覚えた。それは、ずっと分裂をしているような光が見えたからだ。
スレイはそれに気づくと、ラソラにこう言った。
「ちょっと待ってろ。近づいたらお前も被害受けるからな」
それだけ言うと、スレイはラソラから離れ、異変があった場所へ向かう。
「あいつ、生意気な口聞きやがって」
そう言いつつも、スレイの言葉に従うラソラであった。
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スレイはスライムが分裂し続けている場所まで来た。
「よし、やるか」
スレイは覚悟を決めた。そして剣を取り出し、技を放つ。
「『戮』――殲滅壊滅!」
スレイは縦横無尽に飛び回った。とてつもない速度で飛び回る。
そこにいたスライムはもちろん、草までもなくなり、土が丸見えになっているだけでなく、そこにあった切れるもの全てが切られていた。
「あんまこの技は放ちたくねぇんだよ」
スレイは技が終わり、そう発した。そこには、切り株が残り、岩が小さくなり、とにかく無惨なほどになにも残っていなかった。
直上の太陽は、問答無用に照りつけている。
「ラソラ! 行くぞ!」
「あ! 待ってぇ!」
戦いが終わったらケロッとなる。これも最近スレイが覚えたことだ。
「ユス! はよ行くぞ!」
「わたくしに命令しようなど、とんだ無礼者ですわ!」
スレイはユスのその言葉をガン無視し、ビルの元へ向かった。
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「さて、そろそろいいですかな」
ビルの黙祷は、ようやく終わりを告げた。
覗き穴を覗くと、そこからは信じられないような景色が広がっていた。
「スレイ様、あそこまで動ける方だったとは」
ビルでさえ、あの技には絶句している。
もう狙うべき相手はいないと悟ったのか、ビルは静かに武器をしまった。
そして、スレイたちと合流するために、まっすぐ歩き出した。
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そのときは、意外と早く来た。
「あ! ビルいた!」
無邪気で明るい声がビルの耳にも届いた。
「やっほー!」
「わたくしはもう疲れましたわ!」
ユスは小走りをするラソラを見て、言った。
「よぉし! 帰ろう!」
4人が集合した。
「『フリュー・パ・レア』!」
そこにあった4人の影は消え、風が吹いた。
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「到着〜!」
ラソラはその言葉と同時にギルドへ入っていった。
「おい! ちょっと待て!」
スレイは独り占めをしそうなラソラを追いかけ、換金所へ向かった。
ユスはあくびをしながらその光景を眺めていた。
ビルは何を考えているかよくわからない顔で見ていた。
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「討伐証拠品は、ございますでしょうか?」
換金所の人にそう言われたとき、スレイは困った。
すべて跡形もなく消し去った自分を後悔した。
「ねぇ見てぇ! 私の服の中からこの子が出てきたんだけど?」
ラソラの手に乗っていたのは、さっき消し去ったはずのスライムの小さいスライムだった。
そのスライムは、手のひらの上で嬉しそうに飛び跳ねている。
「この子でいい?」
ラソラは満面の笑みで聞いた。
「照らし合わせますので、そこに乗せていただけますか?」
換金所の人は、優しく返してくれた。
スライムは、その言葉の意味がわかったのか、自ら飛び乗った。
「わかりました。報酬をお支払いしますね」
そう言って出されたのは、銀貨5枚だった。
「ありがとうございます」
スレイはお礼をしながらスライムに来るよう促したが、スライムは言うことを聞かない。
一方、ラソラが手を出すと、喜んで飛び乗った。よほどラソラのことが気に入ったのだろう。
「仲間が増えたぁ!」
ラソラは手を上に掲げ、飛び跳ねている。
そこに、ユスとビルもやってきた。
「そのスライム、どうしたのです?」
「かわいいでしょ? 私についてきてくれたの!」
ラソラは自慢げに言ったが、ユスはさほど興味ないらしい。
「あらそうですの?」
そして、報酬をみんなに分け与えた。
「残りの取り分は、どうするのです?」
「俺が管理する」
その言葉に、誰も反論しなかった。それほどスレイが信用されてきているのであった。




