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第5話 追悼の式、長すぎるやつがおる

「1人分、銅貨3枚です」

 

 宿屋から出るため、会計をしたときに言われた言葉だ。

 スレイとユスは昨日わけられたうちの3枚を出した。

 

「あぁ! お金全部借金取りに取られたんだったぁ!」

 

 ラソラの悲鳴が響く。その場にいた全員は耳をふさいだ。

 

「誰かぁ! 助けてぇ! ちゃんと返すからぁ!」

 

 その言葉を聞き、ラソラを除いたチームメンバーはラソラに冷たい視線を向ける。

 

「絶対、絶対に返すよぉ!」

 

 ラソラの言葉にユスが返事をする。

 

「わたくしの高価なる銅貨をあなた庶民のために使う気にはなれませんわ」

 

 その言葉にスレイはため息を吐く。

 

「はぁ。仕方ねぇな。倍にして返せよ?」

 

 スレイはもう3枚を取り出すと、会計の人に渡した。

 

「ありがとっ!」

 

 すぐに機嫌を取り戻した。こいつの脳みその構造を知りたいとスレイは思う。


 ******

 

「じゃあ今日はちょっとお高めの報酬を狙おうよ!」

「わたくしは報酬だけ頂いて差し上げますわよ?」

「働かざる者食うべからずって言葉があるの、知ってるか?」

 

 スレイはユスを煽るように言った。

 

「知りませんわ。どういう意味なのです?」

「働いてねぇのに報酬はやらねぇよってことだよ」

 

 スレイはやれやれと首を振りながら両手をあげた。

 

「そんなのどうでもいいからさぁ、2つのクエストぐらいなら連続で行けるでしょ!」

 

 ラソラはクエストが置かれている中央広場へ向かおうとした。

 

『本日は誓いの儀式があります。もうまもなく行われるため、現在ギルド内にいる方は儀式終了まで、ギルドを出ないようにお願い致します』

 

 ギルド内放送がかかった。

 

「ねぇ! とりあえず広場に行こうよ!」

 

 ラソラは1人で突っ走っていた。スレイですらそんなラソラを無視した。

 

「スレイ様、ラソラ様のことは追いかけなくてよろしいのですか?」

 

 そう声をかけたのはビルだった。

 

「あ、いつのまに」

 

 ビルだけ別の宿に泊まったのだが、集合場所を決めてなかったので探していたときだ。

 

「ちょうど今来たところです」

 

 ビルは存在感が人より薄いなと改めて思うスレイだった。

 

「はぁ。どうせどのクエストにするか迷ってんだろ」

 

 スレイはラソラの行動をなんとなくで予想した。


 ******


 しばらくが経ち、ようやく誓いの儀式が始まった。その時には太陽(フレア)が真上まで来ていた。

 

『ただいまより、第2回誓いの儀式を始めます』

 

 たくさんの護衛を引きつれて歩く、威厳のあるものが歩いてくる。国王だった。

 国王は中央広場の舞台(ステージ)に立つと、拡声器(マイク)を手に取り、広場の人たちに向かって話し始めた。

 

「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます」

「(国王ならもっと傲慢な態度でもいいと思うが、そうでもないのか?)」

 

 スレイの純粋な疑問は、その心に留まっていた。

 

「ただいまより、追悼の式を行う。戦いで命を落とした勇敢な戦士達の魂を正式に送り出し、来世への期待を祈るのです」

 

 この式はなんのために行うかの説明の後、どんなことを行うのかも説明された。

 

「皆様は、亡くなってしまった戦士たちのことを思い、黙想をするのです」

 

 その説明の前にもう始めている人物が1人いる。

 

「ビル、まだ始まってないぞ」

 

 スレイはそう言ったが、ビルにはまったく聞こえていないようだった。

 

「追悼の式、始め」

 

 静かで、力のこもった声が響いた。1人を除いた全員が目を瞑り、両手を合わせる。

 

「ねぇスレイ、なんでみんな寝ちゃったよ?」

 

 ラソラは話しを聞いていなかったのか、何をするのかすらよくわかっていなかった。

 きょろきょろしながら小声でスレイに聞いた。

 

「バカ、黙想だよ。いいって言われるまで目を瞑れ」

 

 スレイはラソラに静かに伝えた。周りの人の迷惑や不快感を与えないために。

 

「はーい」

 

 ラソラは大人しくまぶたをおろした。


 ******


「追悼の式、終わり」

 

 しばらくして、ようやく追悼の式が終わった。スレイは眠くて眠くて仕方なかった。まぁ、それに耐えられてないやつが横にいるんだが。

 そう思いながら、横にいるラソラを揺らす。

 

「ん、んあ?」

 

 ラソラは目をこすりながら返事をした。

 

「どうしたのスレイ? 寝る時間おしまい?」

 

 まずその疑問を持つ理由がわからないスレイであった。

 

「は? 今の時間は寝るためにあるんじゃないぞ?」

「え、そうなの?」

 

 やっぱり、ラソラは理解していなかった。

 

「立って寝るなんてよくできるな。俺にはわからねぇ」

「でもみんなできてたでしょ?」

 

 ラソラは完全に勘違いしている。今のは寝る時間だと都合のいいように感じ取っていたのだと思う。

 そしてその後ろにもやばいやつがいた。


「ビル、いつまで黙想してんだ?」

 

 そう聞いても、もちろん返答はない。まだ黙想をしている。

 

「ビルのことだから、ラソラみたいに立って寝たりはないと信じたいけど」

 

 そう言いつつも、少しは不安に思うスレイであった。

 

「で、次はなにするのです?」

 

 ぼんやりと空を眺めていたはずのユスが聞いてきた。

 

「さぁな。俺もこの儀式に参加するのは初めてだから」

 

 スレイは背伸びをして舞台の様子を確認した。みなが目を瞑った時間の前後で変化はないように見えた。

 

「次は、神への(ふみ)を行います」

 

 放送からはそう聞こえた。ざわざわしていたのによく聞こえるのかぁ、と1人で感心しているスレイであった。

 

「皆様、静粛にお願いいたします」

 

 なぜか盛り上がっていた広場には静寂が流れた。

 

「それでは、執り行います。皆様も、願いをお届けになさってください」

 

 すると周りは両手を合わせ、目を瞑った。さっきと同じ光景だ。

 

「(異界生物(モンスター)がいなくなって、とにかく平和になって、なにも気にせずとも生きられる世界にしてください)」

 

 スレイは異界生物を消すことを願った。

 

「(借金がやばくて。借金っていう制度消せない? そしたらお金借り放題だしさぁ!)」

 

 ラソラは借金分のお金をもらうんじゃなく、制度そのものを消すよう願った。なんてずる賢いのだろうか。

 

「(わたくしが世界の頂点ですわ! 全員にそう認めさせるのですわ!)」

 

 すでに自分が世界の中心だと思い込んでいるユスだった。それを広げろとのこと。

 

「(⋯⋯)」

 

 ビルはなにも願わなかった。ある意味、これが正解なのかもしれない。

 

「では最後、皆様のお願いが神に届くよう、聖火で燃やすのです」

 

 国王が聖火の中へ紙を入れた。本当に神に届くのだろうか。

 

「皆様、どうでしょうか? その願いがいつか現実になること、心よりお待ちしております」


 絶対的にお世辞なのだが、そう感じないものもいるとスレイは思った。

 

「やっぱりわたくしが世界の頂点にふさわしいのですわ!」

 

 ユスだ。なぜだか勘違いしている。

 

「今回、祝祭は執り行われません。ご注意ください」

 

 突然そう言われた。周りは、なぜか文句を言っている。

 

「祝祭がないだと!? ふざけんな!」

 

「それのために来たまであるんだよ!」

 

 なぜみなが抗議しているか、スレイには一切わからなかった。

 

「静粛に。国王様が帰られます。拍手で見送りくださいませ」

 

 冷徹だった。全員の抗議なんて一切気にしてないなとスレイは思う。

 国王は皆に背中を向け、王城へ帰っていった。もちろん大量の護衛を従えて。

 

「今回の誓いの儀式はこれにて終了いたします。参加いただき、誠に感謝申し上げます」

 

 そこで、誓いの儀式が終了した。

 

「ビル、そろそろいいか? みんないなくなってきたぞ」

 

 ビルからはまったく返事がない。未だ追悼の式を行っている。

 

「終わりにいたします」

 

 ビルは突如として立ち上がった。

 

「じゃあ、早速クエストをしに行こう!」

 

 ラソラは足早にクエストが書かれた看板へ向かう。

 

「そんなに急がなくてもすぐ着くんだから」

 

 その看板は舞台のすぐ横にあった。

 

「よぉし! これだ!」

 

 ラソラは1枚の紙を取る。報酬だけを気にしながら。

 

「巨大スライム退治だって! スライムなら行けるでしょ!」

 

 ラソラはどうせ後で連れてこれるからと1人でギルドから出た。


 ******

 

「『フリュー・パ・レア』!」

 ラソラがそう言うと、その場には3人が現れた。

 

「お前が報酬しか見てねぇのは知ってるぞ?」

 

 スレイがそう煽るも、まったく効いていない。

 

「銀貨5枚(銅貨500枚)だもんな?」

「『フリュー・パ・レア』!」

 

 ラソラは質問に答えず、全員を転送した。

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