第1話 国王に呼び出されたんだが?
ラソラとスレイは、この星のギルドに到着した。
「ねぇ、なんかみんなバタバタしてない?」
ラソラは首を傾げながらスレイに聞く。
「どうせ最近、突然現れた異界生物のことだろ。俺もよく知らん」
スレイはまだ工事中の建物が数多く並ぶギルドにいる。ここは、最近このあたりの支配者が作った新しいギルドらしい。
「ねぇ、私さ、なんでここに来たんだっけ?」
「知るか。どうせお前のことだから、魔法使い試験でも受けに来たんだろ?」
ラソラはその言葉に首を傾げるが、そんなことは気にしないスレイであった。
「まだ勇者試験まで余裕があるな。この間をどう過ごすか」
スレイは手にあごを乗せて考える。
「あそぼーよ! 私すごく暇なんだけど」
「魔法使いの試験はもうすぐだぞ。はやく会場に行ったほうがいいだろ」
スレイの言葉に、ラソラは首を傾げた。
「会場ってどこにあるの? 一緒に行こ」
「いやだ。俺は今からこのギルドを見て回るんだよ」
ラソラはキラキラと輝かしい目でスレイを見る。
「おねがーい!」
「あーもう、わかったよ(もしここでこいつを怒らせたら――)」
スレイはそれ以上考えるのをやめた。
スレイは渋々了承した。
そのときにはもう、太陽は真上まで昇っていた。
******
「あー、なんとか間に合ったな」
魔法使い試験の会場についたのは、開始ギリギリであった。
「じゃあね! 行ってくるから!」
ラソラは大きく手を振り、スレイとわかれた。
******
「うわぁ。ここ、大きい〜!」
ラソラはその建物の内部を見渡し、勝手に感動していた。
「えー、『ラソラ』さんで、間違いないでしょうか?」
受け付けの人が、ラソラの顔を見て聞いている。
「私? 私はラソラだけど」
「間違いないですね。じゃあお通りください」
ラソラは、奥に通された。
「うわぁ。さっきのところより、もっと大きいや〜」
そのとき、あたりに声が響いた。普通の人間では出せないような大声が響く。拡声器を使っているようだった。
「本日は、魔法使い試験に来てくださり、誠に感謝申し上げます」
丁寧な挨拶から始まった。
「この試験は、最近突如として現れた異界生物を撃退するための試験になります。これは、最近現れた異界生物の黒幕をどなたかが倒すまで行われます」
まず初めは、この試験の概要についての説明がされていった。
「この試験に合格いたしますと、合格証、及び魔法使いを示す腕輪をお渡しいたします」
この試験の終わったその後のことも長々と説明された。
「それでは、会場に移動します。皆様を転送いたします故、床に描かれている赤い円まで移動してください」
皆、慌てて円の中に入った。ラソラも例外ではなかった。
あたりが、まばゆい光に包まれる。
******
移動した先は、広い、広すぎる草原だった。
「室内で行いますと、建物の破損が予想されたため、屋外で行うようになっております。ご了承ください」
1人ずつ順番に行うようだ。魔法の出来を見定められるようだった。
「私、できるかなぁ? うーん、難しいからなぁ」
ラソラが不安な表情を浮かべながら独り言をしゃべっていると、横から声がした。
「お主みたいなひ弱な者、我にかかれば余裕でござるな」
変な語尾のやつがラソラを煽るように言った。
「えぇ? うん。私、弱いよぉ」
「そんなのは見ればわかるでござる。我の魔法術を見ているでござるぞ。この、とても弱い、ザコ」
「はぁ? テメェ、舐めてんのか?」
ラソラの急な態度変換に、変人は怖気づいたものの、すぐに戻った。
「負け惜しみはみっともないでござるぞ。素直に負けを認めるでござる」
「あぁ? テメェなんかスライムに威嚇されただけで怖気づくザコじゃねぇかよぉ!」
******
そう言い争いをしていると、変人の番になった。
「我の素晴らしい魔法を見ていろでござる」
ラソラはその言葉に怒りが爆発し、誰にも聞こえない声でこう発した。
「『ン・グル・ヴォルガ』」
ラソラはそう呟くと、まぶたを閉じ、集中する。
変人の番だったが、その間、変人は一切口を開かなかった。
******
制限時間がやってくるまで、変人は1つも呪文を言わなかった。
それと同時にラソラは集中を解き、まぶたを開く。
「口が開けなかったでござる。というより、意思をもてなかったような気がしたでござる」
「(テメェみてぇなクズ、これが1番正しい仕打ちなんだよ!)」
ラソラはざまぁみろと思うだけであった。自分が洗脳して、口を動かないようにしていただけだというのに。
「ラソラさんの番です」
ラソラは呼ばれ、歩いていった。
「思う存分、魔法をお使いください」
そう言うと試験官が立ち去っていく。そこにはラソラだけが残るのであった。
「『ハヴィズル・ヴァウダー』」
ラソラがそう詠唱すると、近くの草むらに1つの光が現れた。おそらく異界生物だろう。
その光が、草むらから出てくると、ラソラに攻撃をしかけようとする。
「『インフィジャール・カリス』」
そこには赤い炎と黒い煙、そして、あたりには轟音が響き渡り、鼓膜まで被害を受けそうになった。
そこにあった草はすべて消え失せ、土が丸見えになった。
「『クルエール・メイデン』」
今度はそう呟くと、左右を見渡し、どこか混乱していた異界生物は、首を伸ばしたまま固まった。
「『ハウアー・イアー』」
そうつぶやくと、その異界生物は突然姿を消した。どこかへ転送されたのだろうか。
「『カ・ヴァ・アルワーハ』」
ラソラがそう言うと、さっきのとは別の1匹のスライムが現れた。そのスライムの上には、『Lv.1』と記載されている。その下に、攻撃力や防御力、素早さなどのステータスも表示されている。
「(ザコがよぉ)」
ラソラは自分で召喚したスライムを鼻で笑う。
「『アザーブ・ダル・イアーヴァ』」
地面に半透明の薄緑色の円が出てきた。その場所にスライムが行くと、スライムは透き通るような緑に囲まれた。回復をしているようだ。
これで技を出し切った。
ラソラは地面にぶつかりそうな勢いで頭を下げた。終了の合図だ。
制限時間にもギリギリ間に合っている。
「あのクズ、今度会ったらぜってぇぶっ殺す」
ラソラはまだ、あのことを根に持っているようだ。
******
「ふぅ。余裕を持って来られたな」
スレイは、しっかりと開始の少し前には会場に着いている。
「よぉし。行くか」
スレイは覚悟を決め、進むと、ゲートに通された。
「大丈夫か? 俺は自信ないぞ」
スレイは、どこかおどおどした様子だった。
しばらくして、説明会が始まった。どうやらここでは、全自動ロボットの上の果物を切り落とすことができたら成功らしい。
「成功不成功あるんだなこういうのって」
スレイは、驚いた様子だったが、すぐに我に返った。
その果物は、手の位置から少し高いところにある。ロボットを傷つけても失敗になるようだ。
その場所に案内された。ロボットはどうやら逃げるだけらしい。ただそれがとにかくすばしっこいのだと。
そして、スレイの順番がやってきた。
「あぁ、もう俺か」
スレイはバトルゾーンに入る。
スタートの合図とともに、ロボットが動き出す。
「やるか」
スレイは剣を取り出し、構えた。
「(ロボットの移動速度から考えるに、このタイミングで技を放てばきれいに切れるはずだ)」
スレイのその判断には、1秒たりとも、狂いはなかった。
「『戮』――殲戰殺告」
目にも留まらぬ速さで駆け回っている。
果物の断面が見えた。ただ、切り方がかなり歪で、無様に切り裂かれているような感じだった。
周りからは、少々大きな歓声がしたが、スレイは気に留めなかった。
「意外と簡単じゃんかよ。みんな難しそうにやってるから、期待したのになぁ」
スレイは肩を落としたが、すぐにもとの様子に戻った。
試験が終わった。
スレイはもちろん合格だ。白い腕輪を受け取り、スレイは出ようとしたが、呼び止められた。
「国王様がお呼びのようです。こちらへお越しください」
周りの空気が一段と冷えた。
視線をたくさん感じる。周囲がざわついていた。
「え、わかりました。(嫌な予感がする。)」
スレイは、国王のところへ向かうことにした。




