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第11話 口が軽いこいつ、なぜクビにならないのです?

「で、なにかわかるか?」

 

 スレイとリデソは次の部屋へ入っていた。そこは、もぬけの殻だった。

 

「え、でも、どうせ僕みたいな底辺の人間が言っても、どうせ信じてもらえないから⋯⋯」

 

 リデソは後ろめたいことを言う。

 

「誰の部屋か、とか分かる情報は言ってくれ。わからなければ一緒に考えればいい」

 

 スレイはリデソの後ろめたいことをかき消した。

 

「多分、司令官の部屋。ほら、これ無線機。でもどうせ僕の答えなんて、僕の答えなんて⋯⋯」

 

 リデソはそう言いながら、窓の付近にある無線機を指さした。

 

「司令官はここで殺された形跡はなさそうだけど⋯⋯」

 

 その部屋には、血痕や荒らされたような形跡など、まったくなかった。

 

「もしかしたら、司令官が暗殺⋯⋯?」

 

 スレイはそう聞いた。

 

「どうせ僕の考えなんか誰も認めないんです。だって。どうせ間違ってるから」

「どうなんだ?」

 

 スレイは諦めずに問いかけ続けた。

 

「多分、司令官は暗殺してない。するとしても誰かにやらせるかな。司令官は武器を持つことを許されてないから」

 

 スレイは真剣にリデソの話を聞いていた。

 

「司令官自体に対抗するすべはない。戦況を見て、攻めるか守るかとか、決めるだけだから」

「うーん、わかんなくなってきたぞ。あとは1つの部屋しかないな」

 

 スレイとリデソはとりあえず隣の部屋へ向かった。


 ******

 

「まずは、これが誰の部屋か、だが」

 

 スレイはボソリとつぶやく。それに反応するものもいる。

 

「うーん、多分だけど、鑑定師じゃないかな?」

「なんでだ?」

 

 スレイはまだ全体を見渡してしかいない。それでもう誰の部屋かわかっているからだ。

 

「ほら、あそこのモノクル、あれで見ると細かく見えるものだよ。あとはあの専門器具もかな。確か台座に乗せて見ると大きく写ったようなやつかな。名前は覚えてないけど」

 

 すぐ見抜くリデソをすごいとスレイは思った。

 

「よくそんなすぐ見抜けるよな」

 

 リデソは、スレイの話など一切聞かずに、専門器具のところへ向かっていた。

 

「で、この部屋にも痕跡はなさそうだけど?」

「うん。痕跡はなさそう」

 

 リデソはスレイの質問に答えた。

 

「となると、怪しくなるのは⋯⋯って、なんで犯人探ししてんだ?」

「確かに。あーやっぱ僕はだめなんだ。だめなんだ」

 

 リデソは頭を抱えだした。

 

「まずは上に行くのが先じゃねえのか?」

「う、うん。そうなんだけどね」

 

 リデソはなにかを考え始めた。

 

「どうすんだ? 『()()』をつなぎ合わせるみたいなことを言ってたろ?」

「『すべての部屋の』って言ってたから、多分全部の部屋にあるものなんじゃないのかな?」

 

 リデソは目を瞑って考え始めた。

 

「すべての部屋に共通しているもの、か」

 

 スレイもなにかないかと考える。

 

「わからんな。もう一度見て回れば、なにかわかるかもしれないな。行くぞ」

 

 スレイはしゃがんでいるリデソを起こし、団長の部屋へ向かう。

 

「え、でも、僕みたいな庶民が、偉い人のプライベート空間に触れるなんて⋯⋯」

「行くよな?」

 

 スレイは圧をかけながら聞く。もうリデソの使い方を熟知しているような笑顔だった。

 

「⋯⋯はい」

 

 リデソは仕方なくついていくことにした。


 ******


「で、来たわけだが⋯⋯」


 リデソはスレイの後ろにくっついている。

 

「どうだリデソ? わかるか?」

 

 スレイに聞かれるが、そんなすぐにわかる謎なんてあるわけないと思う。

 

 リデソは首を横に振った。

 

「いえ。今のところは一切」

 

 そう言うと、スレイが悲しそうな顔を見せる。

 

「全ての部屋、って本当にこの4箇所だけなのか?」

 

 リデソはスレイに聞かれた。この下からは、いまだ戦っているような音がする。

 

「さあ。本当に4つの部屋だけなのか、僕には一切わからないよ」

 

 リデソは正直に答えた。

 

「やっぱそうか。一旦錬金術師にも聞いてみよう。ラソラがいねぇから回復はできねぇんだ」

「でも、もし呼んだら下の戦線がまずい状況になると思う」

 

 リデソはもうラソラの強さをなんとなく知っていた。

 他の魔法使いよりも遥かに強かったからだ。さらに実用的なものが意外と多そうだろう。


 錬金術師の部屋に戻ってきた。

 さっき倒れていた錬金術師は、今だ床に横たわっている。

 

「確か、『つなぎあっているならば』みたいなこと言ってなかったか?」

 

 スレイはリデソに聞く。


「あ、言ってたかも」

 

 リデソも思い出す。そしてはっとする。

 

「今からつなぎあわせるんじゃない! もうつながっているんだ!」


 ******


「(精神を統一し、極限まで集中力を高めるのだ)」

 

 ビルがいるのは、森の周りの物見櫓(ものみやぐら)だ。

 ビルの周りには数人の暗殺者(スナイパー)がいる。

 

「(暗殺者はあまりいないと聞いていたが、そうではないみたいだ)」

 

 1つの物見櫓に1人の暗殺者。少し間が空いて、その奥の物見櫓にも暗殺者がいる。

 本当は森の目の前に建てられていたようだが、森の伐採があったのか、少し森から離れていた。

 ときどき銃声が聞こえるが、それはおそらく向こう側の暗殺者だろう。

 

 ビルのいる位置は、正面でも、裏側でもない微妙なだった。だからか異界生物(モンスター)の姿がまったく見られない。

 ただ、いつ来るかわからない異界生物を迎え撃つため、気をそらしてはならない。

 それが暗殺者に課せられた、かつ1番重要なことだった。

 

 暗殺者になるには、極限まで高めた集中力と精神統一、獲物を仕留める命中率、いつ撃つかの判断力など、様々な面で評価される。だからか、なるのが難しいとされている。

 ビルには、それが向いていたのだ。


 ******


「テメェら、ザコすぎるんだよ! あの無能より弱いんだよ!」

 

 ラソラは、顔も知らない勇者や魔法使いにも、容赦なく暴言を吐き続ける。

 戦意喪失した人もいるぐらいだ。それほど心に突き刺さる人もいるのだろう。

 

「とりあえず突っ込む? テメェバカなんだよ!」

 

 ラソラは自分のことは棚に上げて、他人のことを注意している。そもそもあれが当たり前だと思っているのかもしれない。

 ただ、明らかに戦況はよくなっている。ラソラが来たあと、砦の中から追い出して、さらに奥に進んでいた。

 

「邪魔なんだよ! テメェらがいるせいで大規模に爆破できねぇんだよ!」

 

 ラソラはそう言いながら小さめの爆発を何回も放っている。一応自分の手で味方は殺したくないようだ。


 ******


「行くぞ。ついてこい」

 

 ユスは見張りに連れられていた。

 武器庫で見つかってから、縄で手を縛られ、ただついていくことしかできなかった。

 

「(侵入者の処罰を決めている暇があったら、はやく異界生物を処理してほしいものですわ)」

 

 こんな中でも、心の中で愚痴っているユスだった。

 

「お前、なぜこの通路を知っている? 関係者しか知らないはずの極秘通路だぞ」

 

 よくそんなべらべらしゃべるものだと思う。極秘なら、黙っておくべきではないのか。

 

「⋯⋯」

 

 ユスは、黙秘する。完全に口を閉ざしている。

 

「黙秘か。言わせるまで鞭打ちにしてやろうか」

 

 今後の計画まで、すべてべらべらしゃべっている。こんな口が軽いやつ、よくクビにならないと思うユスであった。

 

「下だ」

 

 螺旋状に階段が伸びている。ユスは下へ向かった。

 

「(下なんて、不思議なものですわ)」

「今、なんで上じゃないんだと思ったろ?」

 

 ユスは見事にバレていた。返事は一切しない。

 

「今はなんか別勢力の幹部に占拠されちまってな。仕方なくここに移してんだ」

 

 聞いてもいないのに、勝手にべらべらしゃべってくる。


 ******


 見張りがしゃべる情報を聞いていると、1枚の扉が出てきた。

 扉を開けて、中に入る。

 

「侵入者を連れてまいりました!」

 

 急に改まった口調へ変わる。おそらく立場が上の人間なのだろう。

 

「ほう、お前はそいつを侵入者と扱うか。ならば出てけ。クビだ」

 

 見張りの顔はポカンとなった。真面目に仕事をしただけでクビになるとは、考えもしなかったことだろう。

 

「お前、今までどこに行っていた? 答えろ」

 

 強い口調で、突き放すような声で言う。完全にユスへの質問だろう。

 ユスの顔は、青ざめていた。

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