第11話 口が軽いこいつ、なぜクビにならないのです?
「で、なにかわかるか?」
スレイとリデソは次の部屋へ入っていた。そこは、もぬけの殻だった。
「え、でも、どうせ僕みたいな底辺の人間が言っても、どうせ信じてもらえないから⋯⋯」
リデソは後ろめたいことを言う。
「誰の部屋か、とか分かる情報は言ってくれ。わからなければ一緒に考えればいい」
スレイはリデソの後ろめたいことをかき消した。
「多分、司令官の部屋。ほら、これ無線機。でもどうせ僕の答えなんて、僕の答えなんて⋯⋯」
リデソはそう言いながら、窓の付近にある無線機を指さした。
「司令官はここで殺された形跡はなさそうだけど⋯⋯」
その部屋には、血痕や荒らされたような形跡など、まったくなかった。
「もしかしたら、司令官が暗殺⋯⋯?」
スレイはそう聞いた。
「どうせ僕の考えなんか誰も認めないんです。だって。どうせ間違ってるから」
「どうなんだ?」
スレイは諦めずに問いかけ続けた。
「多分、司令官は暗殺してない。するとしても誰かにやらせるかな。司令官は武器を持つことを許されてないから」
スレイは真剣にリデソの話を聞いていた。
「司令官自体に対抗するすべはない。戦況を見て、攻めるか守るかとか、決めるだけだから」
「うーん、わかんなくなってきたぞ。あとは1つの部屋しかないな」
スレイとリデソはとりあえず隣の部屋へ向かった。
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「まずは、これが誰の部屋か、だが」
スレイはボソリとつぶやく。それに反応するものもいる。
「うーん、多分だけど、鑑定師じゃないかな?」
「なんでだ?」
スレイはまだ全体を見渡してしかいない。それでもう誰の部屋かわかっているからだ。
「ほら、あそこのモノクル、あれで見ると細かく見えるものだよ。あとはあの専門器具もかな。確か台座に乗せて見ると大きく写ったようなやつかな。名前は覚えてないけど」
すぐ見抜くリデソをすごいとスレイは思った。
「よくそんなすぐ見抜けるよな」
リデソは、スレイの話など一切聞かずに、専門器具のところへ向かっていた。
「で、この部屋にも痕跡はなさそうだけど?」
「うん。痕跡はなさそう」
リデソはスレイの質問に答えた。
「となると、怪しくなるのは⋯⋯って、なんで犯人探ししてんだ?」
「確かに。あーやっぱ僕はだめなんだ。だめなんだ」
リデソは頭を抱えだした。
「まずは上に行くのが先じゃねえのか?」
「う、うん。そうなんだけどね」
リデソはなにかを考え始めた。
「どうすんだ? 『あれ』をつなぎ合わせるみたいなことを言ってたろ?」
「『すべての部屋の』って言ってたから、多分全部の部屋にあるものなんじゃないのかな?」
リデソは目を瞑って考え始めた。
「すべての部屋に共通しているもの、か」
スレイもなにかないかと考える。
「わからんな。もう一度見て回れば、なにかわかるかもしれないな。行くぞ」
スレイはしゃがんでいるリデソを起こし、団長の部屋へ向かう。
「え、でも、僕みたいな庶民が、偉い人のプライベート空間に触れるなんて⋯⋯」
「行くよな?」
スレイは圧をかけながら聞く。もうリデソの使い方を熟知しているような笑顔だった。
「⋯⋯はい」
リデソは仕方なくついていくことにした。
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「で、来たわけだが⋯⋯」
リデソはスレイの後ろにくっついている。
「どうだリデソ? わかるか?」
スレイに聞かれるが、そんなすぐにわかる謎なんてあるわけないと思う。
リデソは首を横に振った。
「いえ。今のところは一切」
そう言うと、スレイが悲しそうな顔を見せる。
「全ての部屋、って本当にこの4箇所だけなのか?」
リデソはスレイに聞かれた。この下からは、いまだ戦っているような音がする。
「さあ。本当に4つの部屋だけなのか、僕には一切わからないよ」
リデソは正直に答えた。
「やっぱそうか。一旦錬金術師にも聞いてみよう。ラソラがいねぇから回復はできねぇんだ」
「でも、もし呼んだら下の戦線がまずい状況になると思う」
リデソはもうラソラの強さをなんとなく知っていた。
他の魔法使いよりも遥かに強かったからだ。さらに実用的なものが意外と多そうだろう。
錬金術師の部屋に戻ってきた。
さっき倒れていた錬金術師は、今だ床に横たわっている。
「確か、『つなぎあっているならば』みたいなこと言ってなかったか?」
スレイはリデソに聞く。
「あ、言ってたかも」
リデソも思い出す。そしてはっとする。
「今からつなぎあわせるんじゃない! もうつながっているんだ!」
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「(精神を統一し、極限まで集中力を高めるのだ)」
ビルがいるのは、森の周りの物見櫓だ。
ビルの周りには数人の暗殺者がいる。
「(暗殺者はあまりいないと聞いていたが、そうではないみたいだ)」
1つの物見櫓に1人の暗殺者。少し間が空いて、その奥の物見櫓にも暗殺者がいる。
本当は森の目の前に建てられていたようだが、森の伐採があったのか、少し森から離れていた。
ときどき銃声が聞こえるが、それはおそらく向こう側の暗殺者だろう。
ビルのいる位置は、正面でも、裏側でもない微妙なだった。だからか異界生物の姿がまったく見られない。
ただ、いつ来るかわからない異界生物を迎え撃つため、気をそらしてはならない。
それが暗殺者に課せられた、かつ1番重要なことだった。
暗殺者になるには、極限まで高めた集中力と精神統一、獲物を仕留める命中率、いつ撃つかの判断力など、様々な面で評価される。だからか、なるのが難しいとされている。
ビルには、それが向いていたのだ。
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「テメェら、ザコすぎるんだよ! あの無能より弱いんだよ!」
ラソラは、顔も知らない勇者や魔法使いにも、容赦なく暴言を吐き続ける。
戦意喪失した人もいるぐらいだ。それほど心に突き刺さる人もいるのだろう。
「とりあえず突っ込む? テメェバカなんだよ!」
ラソラは自分のことは棚に上げて、他人のことを注意している。そもそもあれが当たり前だと思っているのかもしれない。
ただ、明らかに戦況はよくなっている。ラソラが来たあと、砦の中から追い出して、さらに奥に進んでいた。
「邪魔なんだよ! テメェらがいるせいで大規模に爆破できねぇんだよ!」
ラソラはそう言いながら小さめの爆発を何回も放っている。一応自分の手で味方は殺したくないようだ。
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「行くぞ。ついてこい」
ユスは見張りに連れられていた。
武器庫で見つかってから、縄で手を縛られ、ただついていくことしかできなかった。
「(侵入者の処罰を決めている暇があったら、はやく異界生物を処理してほしいものですわ)」
こんな中でも、心の中で愚痴っているユスだった。
「お前、なぜこの通路を知っている? 関係者しか知らないはずの極秘通路だぞ」
よくそんなべらべらしゃべるものだと思う。極秘なら、黙っておくべきではないのか。
「⋯⋯」
ユスは、黙秘する。完全に口を閉ざしている。
「黙秘か。言わせるまで鞭打ちにしてやろうか」
今後の計画まで、すべてべらべらしゃべっている。こんな口が軽いやつ、よくクビにならないと思うユスであった。
「下だ」
螺旋状に階段が伸びている。ユスは下へ向かった。
「(下なんて、不思議なものですわ)」
「今、なんで上じゃないんだと思ったろ?」
ユスは見事にバレていた。返事は一切しない。
「今はなんか別勢力の幹部に占拠されちまってな。仕方なくここに移してんだ」
聞いてもいないのに、勝手にべらべらしゃべってくる。
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見張りがしゃべる情報を聞いていると、1枚の扉が出てきた。
扉を開けて、中に入る。
「侵入者を連れてまいりました!」
急に改まった口調へ変わる。おそらく立場が上の人間なのだろう。
「ほう、お前はそいつを侵入者と扱うか。ならば出てけ。クビだ」
見張りの顔はポカンとなった。真面目に仕事をしただけでクビになるとは、考えもしなかったことだろう。
「お前、今までどこに行っていた? 答えろ」
強い口調で、突き放すような声で言う。完全にユスへの質問だろう。
ユスの顔は、青ざめていた。




