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異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!  作者: ポンコツロボ太


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第61話 風呂騒動

 宿屋の外観は他の建物と同じレンガ造りの建物。人ひとりがやっと通れるほどの狭いドアをくぐればすぐに受付になっている。


「あら、いらっしゃい。三人?」


 やけに馴れ馴れしい態度の女がカウンターの中から話しかけてきた。


「ああ。サリーノからこの宿を勧められてな。一部屋借りれるか?」


「あら?サリーノさんから?じゃあ……三階の部屋を使ってよ。ウチで一番広い部屋。ベッドが三個ついてるけど、二人部屋の料金にしといてあげるわ」


 愛嬌のある笑顔を見せながらカウンターの中から取り出した鍵を差し出される。鍵に手を伸ばそうとした時、後ろいるエルから「あのぉ……」と、遠慮がちな声が上がった。


「なにかしら?」


「部屋にお風呂って……ついてますか?」


 その言葉に女は、ニッコリと大きな笑顔を作る。


「もちろんよ!!共和国から輸入したお風呂でね、すごいのよ。水の魔石と火の魔石が二つ付いててね、お湯の温度も調節できるようになってるから!ぜひ使ってみて!!」


 おそらく宿の自慢なのだろう。風呂の説明をやけに得意げに話して見せる。それを聞いて、エルは飛び跳ねて喜んだ。


「やったーー!!やっとお風呂にはいれるわ」


 エルだけでなくヴィーまでも手を取り合って喜んでいる。


「風呂なんぞ一月(ひとつき)二月(ふたつき)入らなくたって死にゃしねえだろ」


 独り言のつもりで言ったのだが、女たちの耳にしっかりと俺の言葉が届いたようでジロリとゴミでも見るかのような目で睨まれる。


「私たちはマシラと違ってお風呂に入らないと死んじゃうの!それに臭いと嫌でしょ?」


 さすがに汗だくの男が臭ぇのは嫌いだが、なぜかエル達の体臭を臭いと思ったことはない。

 そう思うと、ちょうどいい高さにエルの頭があるじゃねえか。


「どれ、クンクン」


 ちょこっとエルの頭皮を嗅いでみる。


「キャッ!!マシラやめて!!なんで嗅ぐの?」


 エルに力いっぱい押され俺は二、三歩後ずさる。エルは何故だか恥ずかしがっているような怒っているような顔をしていた。


「ケケケ。怒るなよ。まったく臭くなかったぜ?」


「え?ほ、ほんと?良い匂いだった?」


「おお!なんか人間だぁ!って感じの匂いがしたぜ」


 バチン!!


 エルに思いっきりビンタされちまった。


「マシラのバカっ!変態!!」


 エルは、プリプリと怒ったまま、俺から部屋の鍵を奪い取ると、宿の狭い階段をドスドス音を立てて上がっていく。


「いちちち。なんで叩かれにゃならんのだ?褒めてやったのに……」


 俺はビンタをくらった頬を撫でつつ、階段を上がるエルの後姿を見ていた。


「お前の脳みその中には、デリカシーという言葉はないのか?」


 やれやれと言わんばかりに、盛大な溜息をつきながらヴィーが俺の肩を叩く。


「デリカシー?んなもん、毎朝しょんべんと一緒に便所にポイだ!」


 ヴィーは再び大きなため息をつく。


「まったく、お前というヤツは……」


 俺の楽しい楽しいウィットにとんだジョークにヴィーは心底呆れ果てたと、俺を無視をしてエルを追うように階段を上がっていく。

 ポツンと一人残された俺を、受付の女が乾いた笑みを浮かべ何か言いたげな目で見てくる。


「……なんだよ?」


「ハ、ハハハ……あんたたち仲良さそうだね?」


「だろ?」


 俺は受付に得意の不細工な笑い顔を見せてやった。


 疲れの残る足を引きずるように三階までの階段をのぼり、部屋につく。

 もしかしたら、部屋の鍵を閉められていりゃしないかと、恐る恐るドアノブを回した。


 俺の心配をよそに難なく扉は開き、部屋へと入る。

 中は宿屋の女将が言っていたようにベッドが三つ等間隔に置かれ、今までの宿に比べると広々とした部屋だった。


 一番奥側にあるベッドの上には几帳面に畳まれたエルの服が置かれ、その横、中央のベッドの上にはこれまた、きちんと畳まれた服と鎧が並んでいた。


 これは由々しき事態だ。リーダーである俺を差し置きベッドの場所を決めるなど許されるはずはねぇ!!


 と、思うが別に寝られればどこでも良いのが俺だ。

 そのへんのとこを二人は理解しているのだ。


 しかぁし、それとこれとは別問題!!!リーダーたる俺を(ないがし)ろにする奴にはバツが必要だな、うん!!


 二人はどこに行ったのかと、よくよく耳をすませば、部屋の入り口横にある扉からエルとヴィーの声が漏れている。


 俺はすぐに理解した。


 やつら呑気に風呂に入ってやがるぜ!!!


「ケケケ、バカな奴らめ。俺が同室だということを忘れたか」


 俺は一瞬で着ている服を脱ぎ捨て、すっぽんぽんになる。

 気配消去(スニーク)スキルを取得したのは、この日のためだったとばかりに、そぉっと、そぉっと足音と気配を消して風呂場の扉の前まで歩く。

 そして、風呂場のドアに手を掛けた。しかし、その瞬間、ゾクリと俺の背筋に悪寒が走る。


 ……おかしい。おかしいぞ?ヴィーのベッドの上には鎧と服だけが置かれているが、騎士の誇りたる剣は、剣はどこだ?

 あのいつも腰にぶら下げ、「どう?私立派な騎士でしょ?」と憎たらし気にヴィーの腰にしがみついているブツは!!?


 あのヴィーが床に剣を置くとは考えられねえ。

 と言うことは……


 俺の脳髄に第六感の閃きが映像となって映し出された。


 意気揚々と風呂場の扉を開ける、俺。

 中にはエルとヴィーが裸で風呂に入っているのが目に入る。笑う、俺!叫ぶ、エル!

 と、同時に煌めく刃。

 股間から飛び散る鮮血。空舞う俺のイチモツ。倒れる俺。

 めでたく、旅の終わり。


 現実に戻るとブルブルと悪寒が体中を駆け巡り、俺のモノが恐れをなして足の小指ほどに小さく縮こまってるじゃねえか……

 このまま特攻かけて風呂に突撃してしまったら俺の男としての沽券にかかわっちまう。


 俺は風呂突入を断念して、惨めにもいそいそと服を着るのだった。


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