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異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!  作者: ポンコツロボ太


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第60話 国境の街

 セセント侯爵領、国境の街『アンブラダル』。

 この街に足を踏み入れてまずに目を引くのは街の東側に高く(そび)える壁だろう。

 この壁は約300年前、第三代レイアース王により建造された北はアリアズ山脈から南はアーニャ海まで続くフーガとの国境を隔てる『ライアスの高壁(こうへき)』だ。

 共和国の前身であるフーガ王国時代、かの国からの侵略を幾度となく防いだ我が国の堅牢なる盾であり、友好同盟が結ばれた今では、共和国を迎えるレイアースの玄関と言ってもいいだろう。

 

 高壁に(いだ)かれた『アンブラダル』の街は、商業発展著しいフーガ共和国の商人達から持ち込まれる様々な商品を扱う店や国境越えの旅人達の疲れを癒すための数々の宿が軒を連ね、人の波は尽きることを知らない……


 アンドル・サイカ著『レイアース王国からの脱出』より


 ◇


「やっとついたぜ、アンブラダル!」


 長かった。実に長かった。

 ここまでの道中、無法都市からの追手に阻まれ戦闘を余儀なくされ、エル捜索隊の検問を避けるために二度、三度と大きく迂回をして、やっとこさ国境の街までたどり着いた。


「私……もうだめぇ……」


 ひたすら歩き続けの日々とお別れだ。目的の街に到着したことで気が抜けたのかエルは、へなへなと地面にへたり込んでしまった。


「エル、もう少しです。頑張りましょう」


 そう言ってエルの手を引いて起き上がらせるヴィーの顔にも疲労の色が見て取れる。


 二人の疲れ果てた姿を見ながら、前に宿に泊まったのはいつだっただろうか?と、記憶を手繰るが全く思い出せない。

 それほど、ここ最近は野宿が続いていた。


「よぉし、今日はこのまま宿屋に泊まるぞ!!」


 俺は、(いさ)んでアンブラダルの街へ足を踏み入れる。


 さすが噂に名高い国境の街だ。王都でしかお目にかかったことのない魔石式の街灯が贅沢に等間隔で大通りにずらり立ち並んでいる。

 まだまだ街の入り口だってのに、多くの商店が並び、威勢の良い声があちこちから飛び交っていた。

 さらには馬車の往来の多さよ。出るも入るも多いこと多いこと!!


 喧騒の中、俺は、ひと際元気な声を上げる女将(おかみ)の店に立ち寄る。


「これは、何て実だい?」


 手に取ったのは、林檎に似ているが一回り大きい黄色の果実。よくよく見れば店の中は、王国では見ない珍しい果物が木箱のまま置かれていた。


「それはね、ラッカっていう果実よ。南の島から輸入された珍しい実で皮ごと食べられるから。ひとつ一メルクね」


「じゃあ、これを一つ」


 俺は一メルクを女将に渡すついでに一番聞きたかったことを尋ねる。


「このあたりに良い宿屋を知らないかい?」


 俺から受け取った金をエプロンのポケットに入れながら、女将は思案する。


「んーそうさねぇ……ここに住んでるから、宿屋に泊まったことはないけどね。私の知り合いがやってる宿屋が近くにあるよ」


「そこ高いのか?」


「いいや、旅の人向けの小さな宿屋だからね。そこまで高くはないさ。

 場所は、この通りを一本裏に入って少し進んだところに、キノコの吊り看板が出てるから。それを目印にすると良いよ」


 親切にも女将は店先まで出て、宿屋への道を指をさして案内してくれた。


「助かったよ」


 そう言って俺は、一メルクにも満たない屑銭を女将に投げる。


「まいどあり。そうそう、果物屋のサリーノの紹介だって言えば多少融通してくれると思うわ!!」


 礼もそこそこに俺は、そのまま女将に言われた宿屋を目指して歩き出した。


「ねえ、その果物なに?」


 追いついてきたエルが興味深そうに俺の手の中にあるラッカの実を覗き見た。


 相変わらず、好奇心旺盛なこった。


 俺は、ラッカの実をエルに手渡してやる。


「皮のまんま食べられるんだとよ。お前にやるよ」


「えっ?いいの!!ありがとう」


 そう言ってエルは小動物のように両手にラッカの実を持ってクンクンと匂いを嗅ぎだした。


「フフフ。あまい香りがする」


 先ほどまでの疲れを忘れて、嬉しそうにエルはほほ笑む。


「エル、前を見てください。あぶないですよ」


 匂いを嗅ぐことに夢中になりすぎたのか、すれ違う人とぶつかりそうになり、慌ててヴィーがエルを自分の方に寄せてやっていた。


「ありがと。ヴィーも食べる?」


 そう言って、エルは行儀悪く歩きながらラッカを一口ムシャリと食べる。よほど美味かったのか、すぐさまもう一口口に運んだ。

 その様子を見て、ヴィーが相好を崩す。


「フフ。美味しいですか?」


「うん。林檎みたいに甘酸っぱいかと思ったんだけど、すっっごく甘いのよ。食べてみて」


 ヴィーは、エルから差し出された果実にそのまま口を付けると、目を見開いて驚く。


「本当です!すごく甘い!!」


「ふふーん!ね?すごくおいしいでしょ?」


 お前が作ったのか!?と、ツッコミを入れたくなるほどエルは自信たっぷりにラッカの実の甘さについて話しながら俺の後に続く。

 二人はラッカを仲良く交互に食べ合いながら歩き続け、それがようやく無くなるころに女将に教えられたキノコの看板が吊り下げられた宿屋へと付いた。

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