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異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!  作者: ポンコツロボ太


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第45話 バレた!

 俺はエルに声を掛けた後、かねてから目星をつけていた町の入り口からほど近い小高い丘の上へと向かった。


 町中で金庫をぶった切れば、すぐさま警備兵が飛んで来るか、無法都市からの追手に見つかるか、最悪カケルに出くわす危険があるからな。


 丘目掛け町を颯爽と駆ければ無法都市の追手らしき者を数人見かけるが誰も俺に気づかない。


 俺の心配はどこへやら、案外すんなりと丘の上へやってくることが出来た。


 「ここなら見晴らしもいいし、早々人は来ねえだろ……」


 惜しむらくは天気だな。今にも雨が降り出しそうだ。

 さっさと仕事を片付けちまおう。


 はやる気持ちを押さえながら、マジックバッグから金庫を取り出す。


 ドスンッ!と土煙を巻き上げ、偉そうに金庫が地面にふんぞり返る。

 そんな偉そうにしてられるのも今のうちだぞ。


 俺は再びマジックバッグに手をかけ今度はカケルから頂戴した神剣を取り出し、頭上に掲げてみる。


 じいさんの剣も大したものだったが、本物を見るとやっぱり違う。

 鑑定スキルなんて便利なもんは持ち合わせちゃいないが、それでも分かる。


 この刀身に込められた胸糞悪くなるような神々(こうごう)しさよ……

 まさに俺は神剣様だぞと語り掛けてくるようだ。


「ケケケケケ。俺にかかれば、お前は金庫を開けるためだけのただの鍵だ、バカヤロー!!

 この金庫を開けちまえば、お前なんてお払い箱なんだからな。

 どこぞの商人に高値で売り付けてやるから覚悟しとけ」


 剣に話しかけるなんて正気の沙汰とは思えないが、どうしても語り掛けずにはいられなかった。

 屁の突っ張りにもならない俺の虚栄心。恐怖を拭い去る儀式みたいなもんだな……


 息を整え剣を構える。そして黒光りするバンチの金庫と向かい合う。


 正直、ここまで危険を冒したが金庫を本当に切れるのかはわからねえ。


 不安ではあるがダメで元々だ。狙うのは金庫の端の部分。

 俺は力いっぱい剣を金庫に向かって振り下ろす。


「…………」


 一陣の風が丘の上を吹き抜ける。


 金属と金属がぶつかり合う甲高い音が鼓膜を震わせると思っていた……


 金庫と剣がぶつかり合う衝撃が伝わり手がしびれることを覚悟していた……


 しかし、そんなものは何時までも来やしない。


「まじかよ……」


 そんなもの一切感じさせることなく、ふわっふわのパンでも切ったかのように、この剣は金庫を見事に両断しやがった。


 まさに神の造りし剣だ。


 一瞬、剣の切れ味のすごさに心を奪われちまってたが、そんなことは今はどうでもいい!!


 俺は切断された金庫の片割れを押し退ける。


「おっ、重てぇなぁ!!ぐぬぬぬぅ!!さっさと金を吐き出しやがれ」


 流石、誰にも開けられないように作られた金庫だ。

 その断面の厚みと言ったら、分厚い事で有名な聖書を遥かに越えている。


 金庫の片割れが地面にめり込むように倒れた。

 俺はそこから体を金庫の中に潜り込ませて金を漁る。


「ゲヘヘヘ。さっすが、溜め込んでるじゃねえか」


 笑いが止まらねえ。文字通りの金銀財宝がどっさりと溜め込まれてやがる。

 どれもこれも、真っ当な稼ぎで手に入れたものじゃねぇのは確かだが、金に貴賤(きせん)なしだ。


 笑いの止まらない俺はニッコニコで金庫の中身を余すことなく掻き出してマジックバッグにしまいこんだ。


 鑑定してもらわなきゃ実際いくらになるかは分からんが相当な額になるのは間違いねえ。


 俺はしっかりと、本当にしっっっかりとマジックバッグを腰に結びつけ足早に町の入り口へと向かう。


 カケルに剣が偽物だとバレる前にずらからねえと。


 ダッシュで向かった町の入り口にはエルとヴィーが律儀に立って待っているのが見えた。


「どうだったの、マシラ?」


 駆け寄る俺に真っ先にエルが声をかける。


「ダメだったぜ……中身、何にも入ってなかった」


 ガックリと()()()()()()をして、ちょっとした茶目っ気を出してみる。


「えっ!?うそ?」


 純粋なエルは、まんまと騙されてくれるが、可愛げのないヴィーにゃ俺の迫真の演技はバレバレだったようだ。


「騙されてはいけませんよ、エル。マシラ、そんなにニヤけた顔で肩を落としても説得力がないぞ。お前のその顔から見て相当な額が入っていたみたいだな」


「ケケケケ。バレちまったか。中身は正直いくらになるかは分からねえが、流石は無法都市のお宝ってとこだったぜ」


 ニヤリと二人に笑いかけてみせる。

 二人とも盗賊稼業が板についてきたのか、以前なら盗んだ金だと罵られそうなものだったが、今じゃ良かったなと微笑んでくれる。


「さぁ、さっさとこの町からずらかろう」


 エルとヴィーに声をかけ、町を出て進路を東に取ろうと足を踏み出す。


「おいおい、どこに行くってんだ。マシラぁ?」


 不意に名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは、無法都市の追手の御大(おんたい)である偸盗(ちゅうとう)のゴンズイとその手下がチラホラ。


 俺は内心やっかいな事になっちまったと焦るが、それを顔に出すわけにゃいかねぇ。


「えっとぉ、人違いじゃないですか?……おしろ?ウシロ?って誰の事ですかい?」


 短剣を買った広場じゃ俺だと気付いてやしなかったはずだ。

 どうにかシラを切り通せば乗りきれるはず。


 しかし、ゴンズイは何らかの確信を持っているようで、その顔には自信が見て取れる。


「下手な芝居はやめろ!お前が金髪と赤髪のペッピンの奴隷を連れているって事はとっくにバレてんだよ」


 くそったれ!あの奴隷商のババア、チクりやがったな!


「それに、さっきそっちの女がお前の事をマシラと呼んでたのを聞いちゃってるんだよな、こっちはよぉ!!!」


 エルのあほ!!俺の名前を呼んでんじゃねえ!!!


 エルを睨むが、エルはすでに顔面蒼白。いたたまれなくなるくらいに落ち込んでいて怒る気が一瞬で消え去る。


 こうなりゃ開き直るに限る。


「チッ!バレてるんじゃ、しょうがねえや。五悪道が一人、偸盗のゴンズイさんに御足労とあっちゃ俺も挨拶しねえとな」


 俺は腰に差した大鉈を取り出しながら、気配察知のスキルを発動する。


 俺達を囲むのは隠れている奴を含め総勢30名近いチンピラ共だ。

 

 ご丁寧な事に人避けがしっかりされていて、俺達以外に周りには人っ子一人見当たらない。

 しかも警備兵にゃ袖の下でも渡してんのか悪党面がこんなに集まってんのに騒ぎにもなりゃしねえ。


 そんな中でも流石はヴィー。強面に怯むことなく剣を構え、エルを守る姿勢を貫く。その後ろには、チョコンと雨に濡れた仔犬よろしくエルが震えて控えていた。


 おめぇの主人は俺だろ。俺を守れぃ!と、ヴィーに文句の一つでも言いたいところだが、魔法使いであるエルは後方勤務がお似合いか……


 仕方なく俺は、集まったお客様共に自己紹介を続ける。


「お集まりの皆々様は、ご存知の事でしょう!!

 手配書にゃトリックスターなんて大層な二つ名が付いちゃいるが、俺がマシラだぃ!!

 死にてえ奴から、どうか頼む!()()()()かかってきな!」


 そんな俺のお願いをよそに、追手達が一斉に俺に向かってやってくる。


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