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異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!  作者: ポンコツロボ太


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第38話 無法都市からの追手

 再びエルを先頭にすれ違う人を避けながら露店を見て回る。

 大きな広場ではないが、それでも二十を超す露店が出店され、人はそれ以上の多さだ。


 無法都市にいたころの癖で常にマジックバッグが取られないかと警戒しちまう。


 しかし、すれ違う者たちは誰も俺のマジックバッグの事なんぞ気にすることなく楽しそうに露店市を楽しんでいるようだった。


「ん?」


 そんな人込みの中に明らかに背負う雰囲気がカタギの者とは違う男が数人紛れているのを見つけた。


「おい、あの男……」


 ヴィーも同じ男達を見つけたようだ。


「ああ、分かってる。あんまり見るなよ。気づかれちまう」


 目の端で、俺も男を追い続けている。男達はこちらには気づいていないのか、無警戒に広場を悠々と闊歩していた。


 俺は目の前にある青果を売る露天にさりげなく身を隠す。


「ヴィー、俺と腕を組め。いいか、さりげなくだぞ」


「……」


 言われた通り黙ってヴィーは俺と腕を組む。

 俺の腕が柔らかいヴィーの乳に当たってなんとも心地が良い。


 だが、そんなことは言っていられる状況とは言えない。


 俺は目の前からリンゴを手に取り商品を確かめるふりをしながら、奴らの動向に目を配る。


「無法都市からの追手か?」


「ああ、十中八九間違いねえ。俺を探して、この町に来たみてえだな」


「どうする?この町を去るのか?」


「そうしたいのは山々だが俺にゃ金庫を開けるっていう大仕事が残ってるからなあ……それまでは、この町を動く気はねえな」


 命は惜しいが金はもっとほしい俺は少なくとも、あと数日は町から動く気はない。


 手に持つリンゴを元あった場所に戻し、この場を去ろうと追手から目線を切る。


 しかし、広場を抜けた先の道から異様に手足の長い男が現れるのを目にする。


 ならず者どものくせに皆そいつに向かってペコペコと頭を下げ顔色を伺っている。


「おいおいおいおい……とんだ大物のご登場だぜ」


 俺はその男に見覚えがあった。


「どうしたんだ?」


「お前『五悪道ごあくどう』って知ってるか?」


「たしか……、大盗賊ウォンカの手下じゃなかったか?」


 さすが騎士団所属の騎士様だぜ。ローカルなネーミングもご存知でいらっしゃる。


「まあ、遠からずってとこだな。あいつらはただの手下じゃねえ。五人の大幹部様のことを言うんだよ。

 んで、あそこにおわしますのが、何を隠そうその五悪道が一人、偸盗(ちゅうとう)のゴンズイ様だ」


 やっと事の重大さを理解したヴィーの表情が引き締まる。


「そんな大物が……ま、まさか、お前がここにいるのがバレたのか!?」


「いや、バレてるならもう少し気合い入れて探すはずだ。たぶん、近隣の町を手当たり次第に()()探してんだろ。ケケケ、ひげ剃ってて命拾いしたぜ」


 昔の仲間でさえ俺の素顔を見たことはない。

 この調子で大人しくしていれば、おそらく無法都市の追手はどこか別の町に出てってくれるはずだ。


「そうか。ならば良いのだ……が……えっとぉ……」


 なぜか組んでいた腕を外され、距離を取られる。


 ああ、俺の乳が……


 二の腕に名残惜しさを感じている俺を放っておいて、エルが背後に立つ誰ぞに対ししどろもどろになりながら言い訳がましいことをしゃべり始める。


「あ、あのぉ……これは違うんです。これには事情がありまして……」


 あーぁ、振り返らずとも分かっちまった。おそらくエルが背後に立っているんだろ?


 ……ほら、やっぱりだ。


 振り返れば、悲しそうな顔をしたエルがこちらを見て立っていた。


「お、お前からも何か言え!!」


 ヴィーが肘でコツコツ俺を叩いてせっついてくる。


 仕方ねえなぁ。


 俺は「さあ、早く説明しろ」と追い立てるようにコツコツするヴィーの腕を取って改めて腕を組み直して見せる。


「ま、こういうことだ。ギシシシ」


「なっ!!!何言ってるんだ、お前!!!!!違うんです!本当に違うんですよ?」


「……ふぅーん」


 短剣をやったときにはあんなに嬉しそうにはしゃいでいたくせに、今じゃ雪精ジャックフロストでも氷漬けにできそうなほど冷たい目を俺に向けてきている。


「私、先帰ってるね……」


 短くそれだけ言うとエルは踵を返してスタスタと宿の方へと歩き出した。

 ヴィーはそんなエルを追うために俺の腕を力ずくで振りほどく。


「お前、何考えているんだ!」


「冗談じゃねえか冗談。ほれ、さっさと行け。エルが逃げちまうぞ」


 俺は犬でも追い払うように、シッシッと手を振ってあっちに行けと伝える。


「お前は本当に最低の奴だな!!」


 捨て台詞を残して、ヴィーは俺の元を後にした。

 残された俺はその場でポツンと立ち尽くす。


 はたから見りゃ、まるで俺が二股掛けた末に振られた惨めな男のようじゃねえか。どうも、周りの人間もそう思っているようで冷ややかな視線が俺に降り注ぐ。

 

 ゴンズイ達追手も、一瞬こちらを覗うがすぐに興味をなくして広場を去っていった。


「はぁ……ったく」


 領主になるって男は辛いぜ。


 あの場でエルに追手の姿なんて確認させていれば、その気配を探知され今ごろ三人で仲良く逃走しているところだ。


 ヴィーでも気づかぬほどの気配探知をあのゴンズイはやってのけていたのだ。

 流石は五悪道さんってところだな。


 俺はとりあえず広場を一回りしてから宿へと戻ることにした。



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