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異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!  作者: ポンコツロボ太


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第30話 ドゥーイ2

「お久しぶりです、ドゥーイ殿」


「む?その声はヴァレリーか?二人そろってこれは一体どうしたんじゃ?」


 爺さんにゃ俺の姿が見えないのか?


 俺はあらためてドゥーイの前に立つ。


「やいやい、俺を差し置いて感動の再開なんてしてんじゃねえ!!爺さんよく聞きな!こいつらは、俺が(さら)って人質にした!!エルが可愛けりゃ俺の言うこと聞きやがれぃ!」


 俺が啖呵(たんか)を切るやいなや、飛び出す爺さんの鉄拳!

 すさまじいスピードにのった拳が俺の頬に突き刺さる!


 俺は地面を二回三回四回五回と転がって地面に置かれた金床に、しこたま頭を打つ。


「いってええ……」


「大丈夫、マシラ?」


「エル、放っておいて大丈夫ですよ。その男の頭には、たいした脳みそなんて入ってませんから」


 騙された!このジジイ、偏屈なんて可愛いもんじゃねえ。ただのヤクザだ!


「なんじゃ、この生意気な小僧は?エレオノーラ様、人質とはどういうことなんですか?」


「えっと……なんていえば良いのか……」


 エルは、これまでの経緯を綿菓子で包み込むように、かなりやんわりとした表現でドゥーイへ伝えた。


 その間のジジイの俺を見る目よ。

 気の弱い奴なら7回は失禁してるね。


「そうですか……そんなことが……。しかし、もう安心してくだされ!このドゥーイ、悪鬼を成敗しエレオノーラ様を必ず自由にしてみせましょう!」


 そう言うと何とジジイは、鍛冶場にあった一番デカくてゴツいハンマーを俺に振り下ろす。


 ガン!!


 弾け飛ぶ耐熱煉瓦の床。


「いいのか、俺に攻撃なんてして!!?女どもの命が惜しくないのか!!」


「かまわん!!やってみい!!その前にお前を叩き潰してやるだけじゃ!!」


 ジジイは有言実行とばかりにハンマーをガンガン打ち付けてくる。


 俺はかろうじてそれを避けるが、爺は壊れたオモチャのように何度も何度もハンマーを俺の頭、目掛けて振り下ろ続けた。


「こんのクソじじいが!!黙って大人しくしてりゃ調子に乗りやがって!!お前の御自慢の髭ごとその首たたっ切ってやる!」


 俺も大鉈を取り出して、迎撃の構えを取った。


 睨みあう俺とジジイ。力ならドゥーイに分があるが、スピードなら俺の方が上だ。

 俺の大鉈が唸りをあげるぜ……


「マシラ……お前はいったいここに何しに来たんだ。ケンカしに来たわけではないだろ?」


 ヴィーの冷ややかな言葉が俺の耳に入る。


「んん……でもよう……このじじいが……」


 だって、そうだろ?俺だけ殴られたのに相手が無傷なんて損じゃねえか……

 俺は不平を訴えてドゥーイを指さすが、誰も俺の主張を受け入れたはくれない。


「おじさまもやめてください。マシラには(さら)われて人質にされ、隷属(れいぞく)の首輪まで施されてしまいましたが……」


「なんじゃとおおお!!この糞外道が!!エレオノーラ様に隷属(れいぞく)の首輪までしおったのか!!!ぶち殺す!!!」


 エルよ、隷属の首輪のことは内緒ってのが暗黙のルールだろ……


 まさに火に油を注ぐとはこのこと。

 ドゥーイの怒りは最高潮に達し、頭の血管が弾け飛んだかと思うほど顔が真っ赤に染まる。


 赤鬼ここに見参!……なんてな。


 こっちもそれ相応の覚悟を決めるしかねえじゃねえか!やるかやられるかの男の勝負だ。


「ち、ちがうの!やめてください。私……マシラに攫われて少しだけ救われたところがあるんです。あの日、もしマシラが私を攫わなかったら、私は今頃、ゴルバス様と……」


 ゴルバス?だれだ、そりゃ?

 ヴィーの言ってたエルの結婚相手か?


「むう……」


 どうも痛い所をつかれたようで、いっきにドゥーイの怒気が消えた。


 よし!ここだ!ここに我、勝機を見たり!!


「そうだぞ!俺がエルを(さら)わなきゃ、変態金持ちに好き勝手されてたんだぞ!!謝れ!!俺を殴ったことを謝れいいいい!!!」


「偉そうにするな!!」


 ふんぞり返る俺の頭をヴィーが叩く。


「いってえ!!さっき金床(かなとこ)にぶつけたとこだぞ、そこ!!血っ!!ほら、血出てんじゃねえか!!?」


「男がかすり傷一つでギャーギャーわめくな!そんなもん唾つけとけば治る」


「あーエル、聞いたか!ヴィーが俺にひどいこと言ったぞ!!唾つけとけだってよ!どうやってこんなとこに唾つけりゃ良いってんだ!?

 ……おぉ。そうか、わかったぞ!こりゃエルに俺の頭をひとなめしてもらうしかねえよなー?なあ?」


 俺は、エルに頭の傷口を舐めるように頭を差し出しながら近づく。

 もちろん冗談だ。つばつけられるより魔法ヒールをかけてほしいのが本音。


 それなのにエルは俺の言葉を真に受けて、口からチロリと柔らかそうな舌を出した。


「んなっ!エル!やめてください!そんな汚い男の頭なんぞなめてはダメです!」


「お前が唾つけろって言ったんだろ!!んじゃ、お前が俺の頭をなめてくれんのか?」


「いやに決まってるだろ」


「じゃあ、エルに頼むしかねえじゃねえか。なあ?」


 エルはどうしようかと、その場でオロオロとする。俺を叱る小うるさいヴィー。


 ここ最近、行われる俺達のちょっとした茶番劇だ。


「がははははは!!」


 その様子を見ていたドゥーイが突如大声で笑いだしたと思ったら、肩に担いでいたハンマーを床に投げ出し俺の方に歩み寄ってくる。


「なんだよ?突然笑いだして気持ちわりぃな。……おい!なんで近づいてくるんだ?」


「小僧!どれ、ワシに傷を見せてみろ!ワシが綺麗になめてやるわい」


 そう言ってジジイは口髭の間から、巨大なナメクジのような赤い舌をべろりと出して俺に近づく。


「く、くるな!!!」


「なぁに、遠慮するな。大丈夫じゃ!!一昨日、歯磨いた気がする」


 じりじりとジジイの口が俺に近づく。


 ここは逃げるが勝ちだ。俺は、出口に向かって走り出そうと振り返る。

 ……が、逃げ道を通せんぼするようにエルとヴィーが俺の行く手を塞いだ。


 しかも、塞ぐだけならまだしも、俺の右腕をエルが、左手をヴィーが捕らえて逃げられないように押さえつけられる。


「くそおおおおお!!!うらぎったなあああああ!!!!お、おまえら、後で覚えとけよおおおおおお!!!」


 近づくジジイのベロ……このあと俺がどうなったかは、内緒だ。

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