表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!  作者: ポンコツロボ太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/45

第2話 森の中の逃走

 謎の男から逃れるべく、森を抜け川までやって来た。


 この時期の川の水は冷たいが文句は言ってられない。

 逃走の痕跡をなるべく残さないよう、川の中を行く。


「放してください」


 肩に担いだ嬢ちゃんがこの時だけ俺に話しかけてきた。


「黙ってろ!お前は人質だ。俺が無事逃げ延びたら解放してやる」


 そう言うと嬢ちゃんは項垂うなだれるように力を抜き黙りこくった。

 まあ、この状況で騒がれても面倒なだけだが本当に解放してほしいのかと疑問に思う諦めの早さだ。


 しかし、嬢ちゃんと楽しくおしゃべりする暇はない。

 俺も足には多少自信はあるが、あの男から逃げられるのかは分からない。


 それほどまでに異質で異様な存在だった。

 あの男が持つ謎の剣。それに対峙すれば分かる底知れぬ魔力。

 バブズと俺の遁逃ユニークスキルが無ければ今頃仲間と仲良く地獄観光真っ最中だっただろう。


 どこまでも背後にこびりつくプレッシャーに息が上がる。焦る足に川の水がねちっこく絡み付き何度も転げそうになった。

 一歩進むごとに背後からいつあの男の刃が、魔法が飛んでくるのか、と生きた心地がしない。

 それでも、俺は走り続けた。俺には生きてやるべき事がある。


 死んでいった仲間の分まで……


 ◇


 日が傾き、森に闇が訪れるころ、やっと俺は川から上がり森の中へと戻った。


 ここまで来れば、あの男も早々追い付くことは出来ないだろう。


 嬢ちゃんは逃げられないよう手足を縛り地面に転がしておいた。

 どうも嬢ちゃんはうつ伏せの状態が嫌なのか芋虫のようにもぞもぞと身をよじり木にもたれかかる。

 見るからに高価なドレスが土にまみれていく様は見ていて気分が良い。


 ここにきて俺はやっと嬢ちゃんをまじまじと観察する。


 暗い闇夜の中でも輝くブロンドは地面に着くほど長く色ツヤも良い。

 着ている服は汚れは目立つがレースの刺繡が細かく施され、中には輝く金糸が混ざって見える。明らかに仕立てが良い。

 こりゃ並みの貴族様じゃなさそうだ。


 歳は15くらいか?ガキの歳なんぞ気にしたことはないがだいたいそれくらいだ。


 しかし、一番気に入らないのはその顔。綺麗な顔をしているが、どうもにも生気を感じさせない人形みたいな顔をしている。


 盗賊の男に連れ去られたのなら、も少し顔に不安や恐怖を張り付けてもいいはずなのだが、それも感じられない。


 俺は嬢ちゃんの観察をいったんやめて濡れた靴を脱ぎ裸足になる。本当なら焚火の一つでも起こして濡れた靴と足を暖めてやりたいが煙一つが命取りになりかねない。


「うぃぃ、さみさみい」


 俺は、ずっと黙りこくっている嬢ちゃんに近づく。

 俺の目は汚れたスカートから覗く白磁のように真っ白な太ももを捉えていた。


 嬢ちゃんは不気味に近づく俺に『何か』をされるんじゃないかと、固く目と口を閉じた。


 やっと嬢ちゃんの顔に生きた表情が表れた。


 その様子を内心で笑いながら俺はゆっくりと嬢ちゃんのそばに座る。


「ひっ」


 嬢ちゃんが小さな悲鳴を上げた。


 何を期待していたか知らないが、俺は冷えた足をその生っ白(なまっちろ)い太ももにピタリと付けて暖をとっているだけ。


「ギシシ」


 嬢ちゃんのあまりの初心うぶな反応に俺は堪えきれず笑いがこみ上げてきた。


 その様子に嬢ちゃんは一瞬ムッとした表情を浮かべるが、すぐに能面のような顔に戻る。


 しばらくは、そのまま暖を取る。

 白い足に俺の醜く汚い足が這う様は、綺麗な花に蛾が群がるようでなんとも愉快な気分になる。

 そうして、じっと自分の足を見ていると嬢ちゃんが話しかけてくる。


「な、なにもしないのですか?」


 何も……それが何を指すのかは言わずもがな、だ。


「んん?俺に惚れたか?」


 俺はギシシと汚い歯を見せて笑う。仲間内でも俺の笑い顔は汚いと評判だ。

 しかし、嬢ちゃんは嫌悪感を浮かべることもなく何も映さない顔で「違います」とだけ呟いた。


 その時、背後の茂みがガサガサと音を立てた。


 獣が立てる音とは少し違う。俺は男が追いついたのだと素早く嬢ちゃんを盾にして、大鉈を構えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ