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異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!  作者: ポンコツロボ太


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第14話 休息

 俺達は無法都市カーラマハルを出てから、かなりの強行軍で山を二つほど越え、森の中にある廃棄された山小屋で一時の休息を取ることにした。


 この山小屋も恐らくはミスリル鉱山のために作られたものだろう。

 鉱山同様、廃棄されてから年季ねんきが入っている。

 小屋の中には至るところに蜘蛛が巣を張っていた。


 意気揚々と「エル様、私が先に部屋の中を確認します」と偉そうに先陣切ったヴァレリーがクモの巣を頭から被るたびに「ギャア、ギャア」喚く様に大いに笑わせてもらった。


 あんまりうるせえから、隷属の首輪で静かにさせた時のヴァレリーの顔よ。

 半べそかきながら俺を睨むもんで更に可笑しくて仕方がなかったぜ。


 しかし、嬢ちゃんには驚かされた。

 俺がその辺を這い回る蜘蛛を叩き潰すのを見るや、残りの生きている蜘蛛を素早く手に取ると森の中へ逃がしてやっていた。


「かあ、貴族様の考えることは分からんね」


 そんな嬢ちゃんをほっといて俺はドッカリ床にあぐらをかいて辺りを見回す。


 暖炉が備え付けられているが薪が見当たらない。


「おい!薪を拾ってこい!」


 顔を真っ青にして嬢ちゃんの行動を見守るだけのヴァレリー(役立たず)に命じた。


「なぜ私がっ――」


「お前ここにいても何にも出来ねえだろ!つべこべ言ってねえでさっさと薪拾ってこい!」


 どんだけ蜘蛛が怖いのか知らねえが、部屋の角で固まってる木偶(でく)には用はない。


 自分でもそれは分かっているのか、それ以上の口答えは無く、ヴァレリーは外へと出ていった。


 嬢ちゃんは未だに蜘蛛をせっせと集めては外に逃がしている。


「はぁ……」


 ため息と同時にゴロリと床に寝転び天井を眺める。


 新生マシラ盗賊団の今の姿を見て昔の仲間が恋しくなった。

 アホな奴らだったが、蜘蛛一つでこんな騒ぎになんてならなかった。

 

 そんな女々しい考えを変えようと寝返りをうつ。


「うぐっ!」

 

 全身に激しい痛みが走った。

 逃げるために遁逃(スキル)によって抑えられたダメージが蘇ったようだ。


「あの……これから、どうするんです?」


 あらかた蜘蛛を片付けたのか暇になった嬢ちゃんが話し掛けてきた。


「……」


 俺は嬢ちゃんに背中を向けて無視を決め込む。というよりかは会話が出来る状態じゃない。

 息を吐くも吸うも(わずら)わしくてたまらないのだ。


 部下に弱味を見せられないのがかしらの辛いとこだ。

 なんとか手のジェスチャーだけで、向こうに行けと指示する。


「大丈夫ですか?」


 大丈夫なわけあるか!!


  内心、嬢ちゃんにツッコミをいれるが俺はテレパスじゃない。俺の心情を知る(よし)もない嬢ちゃんがツカツカと俺に近寄る。


「ひどい汗……」


 そう言って俺の額に手を当てる。ひんやりとした柔らかい掌。……と、ねちゃつく蜘蛛の糸。


「やめろ!ネチネチ気持ち(わり)いんだよ」


 さすがの俺も蜘蛛の糸を顔面に塗り付けられれば気持ちが悪い。


「あっ!ごめんなさい」


 そう言って俺の顔面を床に落ちていた布切れでゴシゴシと拭きやがった。


 この女はふざけてんのか!


「ゴシゴシ痛ぇ!てめぇにゃ、俺が汚れた床に見えてんのか!?」


 決して良い(つら)とは言えないが、雑巾で拭かれるほどの顔面ではない……はず。


「す、すみません……」


 俺は手を払い除けると、嬢ちゃんに構うことなく目を閉じる。

 

 どうか今は俺をほっといてくれ。


 そんな願望、聞くわけもなく嬢ちゃんは俺の後頭部すぐ後ろにふわりと膝を着き、その手が再び俺の頭に触れる。


 あまりのしつこさに首輪の力を使おうと思った矢先、嬢ちゃんの口から魔法の呪文が紡がれた。

 

「神の御手みては癒しの手なり。七色の陽光。果てぬ泉。白き乳。どうかその奇跡の力持ってこの者癒したまへ……『治癒ヒール』」


 嬢ちゃんの手から暖かな魔力が俺に流れ込むと、痛みが嘘のように引く。


「そんなことしても逃がしてやらんぞ」


「期待してません。私、魔法学の家庭教師が就いてたので魔法得意なんです。ただそれを自慢したかっただけですから」


 嬢ちゃんは立ち上がる。


「そうかい。……ま、助かったぜ」


「フフフ。良いんです。自慢したかっただけですから」


 変なヤツだ。自分を誘拐して、隷属の首輪までした男の傷を癒すなんて……訳が分からん。

 

 嬢ちゃんの行動の真意が見えず、悩んでいると微睡みが俺を闇の中に誘う。

 そうだった……この何日間かは真面(まとも)に眠っていなかったんだった……

 そう気づいたときには、俺は沼に沈んでいく様に眠りの中へと落ちて行った。


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