表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪食令嬢と暗殺執事

異物混入のラーメン屋

作者: 楠木 翡翠

【作者より】


※ 拙作はしいな ここみさま主催の「いろはに企画」に参加させていただいた作品です。


本作品は『闇医者探偵シリーズ (https://ncode.syosetu.com/s8639e/)』と『悪食令嬢と暗殺執事 (https://ncode.syosetu.com/s4927j/)』のコラボ作品です。



本作品の登場人物(簡単な紹介)


『闇医者探偵シリーズ (https://ncode.syosetu.com/s8639e/)』より


荻野(おぎの) 隼人(はやと)

 表向きは探偵。裏は医師免許を持たない闇医者。


『悪食令嬢と暗殺執事 (https://ncode.syosetu.com/s4927j/)』より


来栖(くるす) (なお)

 表向きは有紗の執事であり、裏は「月下の殺戮者」という通り名で知られる暗殺者。


※ 二人は幼なじみ。


富永(とみなが) 有紗(ありさ)

 あらゆるものを食べる社長令嬢。(詳細は「その命、いただきます。(https://ncode.syosetu.com/n6302la/)」にて)

 来栖のことを有能執事だと思っている。

 よく晴れた昼下がりに俺の珍しくスマートフォンが鳴る。

 普段はメルマガ程度なのに。


「もしもし、(なお)

「あ、隼人(はやと)。久しぶりだな」


 電話の主は幼なじみの隼人からだ。


「ラーメン食いに行かないか?」

「今からラーメン?」

「ああ。今、休憩時間に入ったからさ。そっちは忙しいか……」

「いや、落ち着いたところだ」

「じゃあ、駅で待ってるから!」

「え、ちょっと! おーい!」


 くそ、隼人のやつ勝手に電話を切りやがって……我が(あるじ)である有紗(ありさ)の身に何か起きたらどうしてくれる!?


「どうしたの?」

「お嬢様、私は少しの間、出てきますので何かございましたらお電話を……」

「わかったわ。気をつけて行ってらっしゃいまし」


 彼女はあっさり外出を許可してくれたが、一人の使用人が不安そうな表情で俺に近づいてきた。


来栖(くるす)さん」

「はい」

「何か食べ物をご用意していますか?」

「本日のティータイム用として冷蔵庫にカスタードプリンをご用意しています。紅茶と一緒に提供してください」

「分かりました」

「お嬢様から()()()()()()()()()()と申し出があったとしても聞き逃してください。いいですね?」

「はい」


 小声で聞いてくるため彼女に聞かれないよう用件を告げる。

 俺がティータイムまでに間に合えばいいが、間に合わなかった場合は彼らが接触することになるのだ。


「では、行ってまいります」

「行ってらっしゃい!」

「お気をつけて!」


 全員から見送られ、自室で支度する。

 今はキャッシュレス決済が主流になっているが、現金しか使えない店舗も存在しているから念のため財布を持っていくか。


 自転車に跨ぎ、駅に向かうとすでに彼の姿があった。

 交通マナーはよくないが、隼人の道案内に従い、二人乗りでラーメン屋に――。


「着いた! ここのラーメン、旨いんだよな」

「へぇー……」

「いらっしゃいませー! 何名様ですか?」

「二名で」

「かしこまりました! 二名様入りまーす!」


 元気のいい店員が出迎える。

 テーブル席が満席だったため、俺たちはカウンター席に通された。

 メニューを見ると醤油ラーメンに家系ラーメン、餃子にチャーハン……種類は豊富。


「俺、味噌ラーメンにしよう!」

「餃子と炒飯のセットで」


 それぞれ注文し、互いの近況報告する。

 男同士なのに会話をしていると、あっという間に時間が過ぎ去っていき、注文していたものが手元に届いた。


「「いただきます」」

「……あれ……?」

「直、どした?」

「ゴ、ゴ……」

「ん?」

「ゴキブリが入っていたんだが……」


 なんと、俺が食べようとしていた炒飯にゴキブリが入っていた。

 一匹ではなく、三匹も――。

 もちろん、隼人のところにも。


「あの、店員さん?」

「はい」

「先ほど注文した炒飯の中にゴキブリが入っていたのですが、どういうことだ?」

「す、すみません……!」

「……つ、作り直しますので……!」

「食べないので返金を要求する」


 あちこちのテーブルからも悲鳴があがっている中、店員は対応に回っている。

 結局、俺たちは何も食べずに返金してもらい、店をあとにした。


「お前、さっき怖かったぞ。特に顔が」

「すまない……つい暗殺者(うら)の顔が……せっかく久しぶりに会えたのに……台無しになってしまったな」

「いや、俺は久しぶりに会えて嬉しかったよ」

「本当か!?」

「ホント。ところで、この店のゴキブリは食べられるらしいぞ?」

「だからって……俺は絶対ムリ!」

「冗談だって」


 彼女なら「美味しい!」とパクパク食べるが、彼女が物騒な食事を求めた時は全く味見すらしない俺に物騒なもの(ゴキブリ)を食べさせるラーメン屋はどうかしている!


 後日、そのラーメン屋はテレビで異物混入や賞味期限切れ食材の使用問題として報道され、営業再開することはなかった。

最後までご覧いただきありがとうございました。


2025/09/13 本作品

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
た、食べる前に気付いて良かったですね。 (^~^;)ゞ
「月下の殺戮者」さんは着替えてラーメン屋にいったのかなあ? 急ぐから、と執事服で行っていてもそれはそれで面白そう。 それにしてもゴキ入り中華…………。 なんて恐ろしいモノを…………! ……あれ? ゴ…
 時事ネタ⁈
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ