第1夜 依頼08
月花の撒いた粉はずっと奥に続いていた。
それを辿るように奥へ向かう愛羅達に、生暖かい風が纏わりつく。
「一体どこまで続いてるんだ…」
「校舎はそんなに広くないはずなんだけど…」
「ここにいる何かが、亜空間に繋げてるのよ。多分、もうここはあの建物の中じゃないわ」
気をつけてねマスター、と月花が心配そうに愛羅に寄り添った。
周りは相変わらず暗闇で、粉の道だけが唯一光り輝いていた。
一体どこまで続いているんだろう、と終わりの見えない暗闇の中を、ただひたすら進んだ。
すると、少しして淡い光りが見えた。
「あれは…」
「カガミだわ!!」
月花は一目散に光に向かって飛んでいった。
愛羅たちも後を追う。
「月花…っ!!」
月花に追いついた愛羅達が見たものは、蜘蛛の糸のような物に絡みとられて気を失ってるカガミだった。
彼女なりに抵抗したのか、あたりには鏡の破片が散らばっていた。
「一体何があったの…?!」
「…愛羅、この糸…よくみて見ろ」
「糸…?」
焔に言われ、糸を手にとってじっとみて見ると、微かに青い光りを纏ってるのが見えた。
「これは…封魔の術式……?」
「マスター!!早く、早くカガミを!!このままじゃこの子が消えちゃうわ!!」
「あっ、うん!!」
チャキッと短剣を取り出して、鏡に纏わりついている糸を切り落としていく。
ジュゥゥッと焼ける音と共に糸が消えていく。
「カガミ、カガミ大丈夫?」
腕の中のカガミに声を掛けると、ピクッと鏡の体が反応したのに気付いた。
「一先ずここを出るぞ!!」
「わかった。月花、案内を頼む」
「任せて、マスター!!」
月花を先頭に、亜空間から抜け出そうと来た道を戻る愛羅の腕の中では、カガミが小さく呼吸を繰り返していた。
「…っ、まだなのか青二才?!」
「もう少しよ猛獣!!」
パリンッ
何かが割れる音共に、目の前にはグランドが見えた。
どうやら、亜空間から抜け出せたみたいだ。
「それよりカガミッ!!」
彼女は無事かっ?!と腕の中に視線を落とすと、先程より顔色は良くなっていた。
「マスター、大丈夫よ。だいぶ力を吸い取られちゃって寝てるけど、命に別状はないわ」
月花も安心したように、カガミの髪を撫でながら告げた。
「そうか…良かった」
「けど、これで何者かが関与してることは分かったな」
「うん、どうやら、この件は思ったより厄介だね。…今日は、もう帰ろう」
「マスター、学校は?」
「―――後で蓮にでも連絡する。帰るよ、月花、焔」
そう言ってスタスタと学校から出て行く愛羅の後を急いで追う月花と焔。
「あの子が―――緋守愛羅………」
その様子を、誰かが見ているとは気付かずに―――。