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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第4夜 現れた敵10

「――ちっ、攻撃は防ぐくせして、何で仕掛けてこねぇんだよっっ!!」


一方的とも言える攻防に苛立ちを覚えた紅弥は吼えた。

手応えの無さに苛立っているのか、地の底を這うような低い声で怒鳴り散らす紅弥に、愛羅は心底頭を抱えたくなった。


(――どうしてそんなに好戦的なのかな?!)


少しは冷静になって、と叫んでしまいそうだ。


「あいつ、馬鹿だ。学習能力無いな」


焔も呆れた視線を紅弥に向けた。

風雅に至ってはあきれ果てて何も言えない様子で愛羅の傍に控えていた。


「――それにしても、彼、中々動かないね……」


紅弥達から放たれる攻撃をただ防ぐだけの魔兎李達に、ふと愛羅は呟いた。

その声に、焔も魔兎李達に視線を向け、微かに眼を細めた。


「何か策があるんじゃないか?余裕そうだしな」


「えー…策、ねぇ?――…待ってる、とか?」


愛羅の言葉に、焔は眉を寄せた。


「待ってるって何を――――っつ!!」


「主!!」


言いかけた所で、愛羅へ向けて放たれた岩石を焔と風雅が薙ぎ払う。

岩石を放ったであろう魔兎李はクスクスと笑いながら愛羅達を見下ろしていた。


「ねぇ、本家当主は参戦しないの?分家当主が随分苦戦してるのに」


君も参戦しなよ、と言外に告げる魔兎李に、嫌な予感を感じだ。

確かに見る限りでは、紅弥が苦戦してると言ってもいいかもしれない。

こちらの攻撃は悉く防がれ、効果は得られていない。

しかし、ただそれだけだ。

鬼達は攻撃を防ぐものの、攻撃はしてこない。

先程愛羅に向けて放たれた岩石も、鬼達ではなく魔兎李自身が放ったものだ。


「―――鬼の相手は、紅弥だけでも十分だよ」


そうでしょ紅弥、と言えば返ってくるのは肯定の笑み。そのやり取りに魔兎李は苛立ちを覚えたのか、眉を寄せて愛羅を睨み付けた。


「攻撃を防がれてるのに、手助けしないの?君、冷たいんだね」


「そう思いたければ、そう思えば良い。僕は痛くも痒くもないからね」


「それに、今手を出すと逆に紅弥がキレかねんからな」


焔も愛羅に続けて言う。

魔兎李は忌々しそうに舌打ちをし、視線を鬼に向けた。


「――仕方ない、雷龍とその主を殺せ」


漸く告げられた命令に、鬼達は嬉々としてそれぞれの獲物を手にした。


「やっと本気を出すのか」


待ちくたびれた、と目をぎらつかせる紅弥に、魔兎李は冷めた視線を向け


「――うん、このままだと本家当主が動いてくれないみたいだからね。予定が狂うけど、君には先に死んでもらう事にするよ」


そうすれば本家当主もやる気出すでしょ、と悪意に満ちた笑みを浮かべた魔兎李に、愛羅は深いそうに顔を歪めた。

「そう簡単に殺られないよ。―――そうでしょ?紅弥」


「はっ、当たり前だ。俺が殺られるとか、有り得ねぇな」


鼻で笑い高らかに告げられた言葉に、愛羅は満足そうに笑みを浮かべた。

その逆に、魔兎李は忌々しげに紅弥を睨み、ギリッ……と歯を噛んだ。

鬼達はそれぞれの獲物を紅弥と雷電へ振り下ろしたが二人はヒョイッと軽く避けた。


「威力は上々、流石鬼。生半可な力じゃねぇな」


「フン、幾ら獲物の威力が上々だろうと、使ってるのは雑魚鬼共だ」


幾分か冷静さを取り戻したのか、雷電はつまらなそうに言って紅弥の傍へ身を寄せ、守りの体制を取る。


「――雷電、攻撃の手を止めたね」


「闇雲に攻めるより、主の傍で敵の様子を探るのが得策だと気付いたのだろう。漸く冷静さを取り戻したか」


「なら一先ず安心だな。闇雲に攻めていたときよりは優勢になるだろ」


冷静さを取り戻した雷電に、とりあえず安心する愛羅一同に、魔兎李は鋭い殺気の篭った瞳で紅弥と雷電を睨み付けた。



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