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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第4夜 現れた敵08

「梔子魔兎李…?」


「聞き覚えない?梔子家直系の三男…『妖鬼使い』って有名だよ」


「……まさか、封術師でありながら魔と契約を交わした『裏切りの一族』の…か?」


紅弥の言葉に、少年―魔兎李は眼を細めた。

藤色の瞳は藤色から牡丹色に、明るい茶髪は紫紺色に変化していく。


「それが、本来の姿…」


「そうだよ。これが本当の僕。それにしても『裏切りの一族』とは酷い言い様だよね。君達だって『使い魔』と言う名の『魔』を使役してるくせに、僕達のことは裏切り者扱い?」


反吐が出るよ、と魔兎李は顔を顰め、ギンッと睨みつける。


「『使い魔』をお前達が契約した『魔』と一緒にしてもらっては困るな。こいつ等は言わば『聖魔』だ。そこらへんの『魔』とは根本から違う」


紅弥が言い返すと、ますます顔を顰める魔兎李。


「魔に違いなんてない、区別をつけてるのは君たちだ」


「―――違う、『聖魔』は、その力に封魔の力がある。けど、君達が契約を交わした『魔』は、『邪気』の塊だ。だから、僕達の祖先は―緋守家は君達と手を切ったんだ。『魔』と契約を交わした者は…いずれ『魔』に飲まれてしまうから。それは、君達梔子家の祖先も知っていたはずだ。だけど、『魔』が持つ強大な力に魅入られ、その力に手を出した。…それは、本当に欲しかった力だった?失った物の方が大きくはなかった?」


「……だったら何?僕達は『魔』と契約を交わしたことに後悔してない、寧ろ良かったとさえ思ってるよ。緋守家次期当主…君は本当に甘いね、甘すぎるよ。優しいのは美点だと言うけれど、君のそんな甘ったるい考えじゃ、この世界で生きていくのは難しいよ?それは、嫌と言うほど経験してるはずだけどな?」


クスッと嘲笑しながら視線を愛羅に向けた魔兎李は、懐から数枚の呪符を取り出した。


「僕は、君達に全く興味ないんだけど、兄さん達の邪魔をされるのは困るからね。君たちはここで潰させて貰う。僕達の…兄さん達の計画の邪魔はさせやしないよ。行け、雪鬼、炎鬼、土鬼」


魔兎李の手から投げ放たれた呪符は、彼の声に応える様に、三体の妖鬼へ姿を変えた。

青と白の身体の鬼、赤と橙の身体の鬼、土色の身体の鬼。

身体は三体ともかなり大きく、本性に戻った焔よりも大きい。


「焔…どう?」


「鬼相手は厄介だな…俺の炎は鬼には効き難い。普通の鬼ならなんてことはないが、あれらは其々属性を持ってる分、俺には不利だ。…悪い」


悔しそうに告げる焔に、愛羅は「大丈夫だよ」と告げ、視線を紅林達へ向けた。


「…紫苑、琥珀、紅林?」


「…ごめんなさい、愛羅。私達もアレ相手は不利だわ。『鬼』は『魔』に近き者であって、『完全なる魔』ではないから…私達の力は効かないわ」


「ごめんね、愛羅…私達、役立たずで」


「申し訳ありません、愛羅…」


悔しそうなそれでいて泣きそうな三人に、愛羅は首を横に振って気にしてないと告げた。

対峙している少年が『妖鬼使い』と名乗ったときから、こうなる事は薄々気付いていた。

家柄、そういう知識は幼い時から叩き込まれてきた。

だから、焔や紅林達の力が効かないという事態も予想がついていた。


「紅弥、『あの子』は制御出来るようになった?」


「『あの子』…?―あぁ、『あいつ』か。呼ぶ気か?」


眉を寄せて嫌そうに問う紅弥に、愛羅は軽く頷く。


「『鬼』に対抗するなら、あの子達が一番だからね」


そういって懐から一枚の札を取り出した愛羅に、紅弥は小さく溜息を吐き、同じように札を一枚取り出した。


「いったい何をする気?君たちの言う『聖魔』の力はこの子達には通じないよ?」


嘲笑う魔兎李に、愛羅達は意味深に笑みを浮かべた。


「そうだね、紅林達の力はそれらには通じないだろうね」


「けど、こいつらならどうだろうな?」


愛羅と紅弥が同時に札を掲げる。


「水と風を纏いし気高き龍よ、契約者『愛羅』の名において命ず。その姿を我の前に示せ!!」


「天の雷を纏いし気高き龍よ、契約者『紅弥』の名において命ず。その姿を我の前に示せ!!」


ドォォォォンッと激しい音と共に、水銀の身体の龍と黄金の身体の龍が、その巨体を愛羅と紅弥の目の前に姿を現せた。


「我を呼んだか、主よ」


水銀の龍が愛羅に近寄る。

愛羅は小さく頷くと、水銀の龍の額を撫で


「君の力を借りたい」


と告げた。


「…我を呼んだか、小僧」


「はっ、相変わらず生意気な口を利く龍だな」


「それは此方の台詞だ小僧。主がいくら我の主とはいえ、力を制御出来ねば意味がない」


「出来るようになったんだよ。それに、今回の相手はお前の力じゃないと太刀打ちできない」


意味は分かるな、と告げてくる紅弥の瞳に、黄金の龍は眼を細めた。


「我と風雅を呼んだのは、あの鬼共の所為か」


「そう言うな、雷電。いくら主の使役しているもの達が強力でも鬼の相手は出来まい。

見たところ、あれらは属性持ち。いくら神格を持つ焔でも不利だろう」


若干イラついた様子を見せる黄金の龍―雷電を宥めるように水銀の龍―風雅は告げた。


「――成る程、ね。『鬼』に対して『龍』を引き出してきたのか」


厄介だね、と告げられる言葉とは裏腹に、魔兎李の表情には笑みが浮かんでいた。



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