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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第4夜 現れた敵05

「地藤…大樹……?!」


青年が名乗った名は、先程少年が名乗った名と全く同じ。

いったいどういうことだ。

何が起きてるんだ、と愛羅も皇夜も困惑気味に青年を見やる。


「お前、本当に『地藤大樹』か?」


「……そう、僕が『地藤大樹』…地藤家、現当主」


『地藤家当主』の言葉に、愛羅達は眼を細めた。

彼が、地藤家の当主と言うのが本当なら、態々彼が出てくる理由があるはず。

それに、何故先程の少年と『同じ名』なのか。


「……先程、地藤家当主の弟君と名乗る少年に会った。しかも、その少年が名乗った名は、あなたが名乗った名と同じ名だ。これはどういうことだ?」


愛羅が剣呑さが増した瞳を青年に向けて問うと、青年は藤色の瞳をゆらりと憂いを浮かべ


「……僕に、弟なんていない。ましてや、同じ名前なんて…いるはずがない」


青年がそう告げると、ますます困惑する愛羅達。

目の前にいる青年が『本物』の当主であるならば、先程の少年はいったい何なのか。

其れを考える為には、『目の前の彼』が『本物』であるかどうか確かめる必要がある。


「…失礼だが、僕達はあなたが『本物』かどうか知らない。本物なら『地藤家当主』の証を持ってるはずだ。其れを見せて欲しい」


愛羅がそう告げると、青年は首から提げていたペンダントを愛羅達に見せた。

そのペンダントに使われている宝玉には、確かに地藤家の家紋が彫られていた。


「…確かに『地藤家当主』の証…『家紋入りの破邪の首飾り』だ。その首飾りは当主以外触れる事は適わない。確かにあなたは『地藤家当主』…先程は失礼した。僕は、緋守家次期当主の緋守愛羅」


「俺は、緋守家分家次期当主の緋守紅弥だ」


焔から降りて、礼儀を持って名を告げる二人。

そんな彼らに、地藤家当主は微かに微笑んだ。


「…御二人方の噂は、聞いている。君達の、実力を見込んで…頼みたい事がある」


「頼みたい事?」


青年―大樹の言葉に、愛羅達は首を傾げた。

地藤家は緋守に匹敵する家系だ。

しかも彼はその家の当主、力もかなり強い。

そんな彼が頼み事とは、珍しいなんてものじゃない。


「…君達の前に現れた、僕の名を…地藤家の名を語った少年を、止めてほしい。――彼は、地藤家の者じゃない」


「と言う事は…今回の件に関して地藤家は関わっていない、と」


「そう。地藤家にとって…『夜叉姫』は『憎しみ』の対象。まず、目覚めさせようとなんてしない…『消滅』させようとする事はあっても、ね。けれど、ここ最近『地藤家』の名を名乗って封印を解こうとする者がいる、と報告を受けて…まさかと思って、張ってたんだ。そうしたら、あの少年を見つけて…。まさか自分の名を語られるとは、思いもよらなかったけど」


苦笑を浮かべ、大樹は一本の巻物を愛羅に手渡した。


「これは……?」


「僕の家の者が、手に入れてきたものだ。どうやら、あの少年の物らしい。僕が彼の止めればいいんだろうけど…」


其れが出来なくて…と困った顔をする彼に、愛羅は悟った。


「大樹…あなた、まさかとは思うが…『呪』を受けてるのか…?」


愛羅がそう尋ねると、大樹は一瞬驚いた顔を浮かべ直ぐにへらりと笑みを浮かべた。


「流石…緋守家次期当主、稀なる才能を持った者、だね。そう、僕はあの少年に『呪』を掛けられてる。その所為で『あの場所』には近づけないし、『彼自身』にも近づけない。けれど、『地藤家』の者達には彼に立ち向かうだけの力がない。だから、君達に託したい…ダメかな?」


「…分かった。この件に関して、僕達は既に依頼を受けている。今更、依頼が増えたところでどうって事はない。その少年のことは、僕達が引き受ける」


「ありがとう…、僕は、今回手は貸せないけどよろしく頼むね」


「あぁ」


しっかりと頷く愛羅達に、安心したように笑みを浮かべ、大樹はフッと姿を消した。

彼が立っていたところには、一枚の紙人形が落ちていた。


「先程の彼は、紙人形を通してこちらにコンタクトを取ってきたんだな」


焔の言葉に愛羅は頷いた。

彼自身は『呪』を掛けられている所為で、邸から離れられないのだろう。

だから『紙人形』に自分の魂を乗せてコンタクトを取ってきた。

つまり、其れほどまでに事態が深刻、という事。


「焔、紅弥、旧校舎へ急ごう」


愛羅の言葉に、二人とも頷いた。



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