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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
34/41

第4夜 現れた敵03

グルルル......と両者の睨み合いは続く。

お互い牽制しあっているのか、中々動かない。


――緊迫した空気の中、先に動いたのは敵の方だった。


「シャァァァッ!!!」


ブゥンッと巨大な尻尾を愛羅達に叩きつけるように振り下ろす。


「ちっ」


「うわっ?!」


クルンッと尻尾を愛羅と紅弥に巻きつけて、焔は高く飛び上がり二階へ降りて大蛇の攻撃をかわす。

愛羅達から尻尾を離すと、大蛇を鋭く睨みつけた。

尾が叩きつけられた場所は、かなり深くまで沈んでいる。

あの一撃を喰らうとひとたまりもないだろう。


「焔っ」


「心配するな、愛羅。俺は『空孤』だ、そう簡単にやられはしない。大人しく、ここで見ておけ」


不敵に笑って見せ、焔は再び相手と対峙する為、下へ降りていく。

正直、愛羅は不安で堪らなかった。

焔を信じていないわけではない。

彼は、確かに強く、賢い。

それは愛羅自身よく分かっていた。

けれど、大蛇は『水』の眷属。

いくら焔にとって『小物』でも不利な相手には変わりない。


「焔、無茶しないでよ…」


「……愛羅、お前はどう思う?」


不安げな視線を焔に向けていると、唐突に問われた。

その意図が分からず、愛羅は「どういう意味?」と視線を焔から紅弥に移した。


「言っておくが狐のことじゃない。…あいつなら余裕で勝てるだろ。そうじゃなくてさっきの餓鬼のことだ」


「餓鬼って…僕達とあんまり変わらなかった気がするけど」


「あんなのは餓鬼で十分だ。あの餓鬼は『地藤家』と名乗った」


「あぁ…僕達と同じ、裏御六家の内の一家…『地』の力を借りての退魔を得意とする家系だったっけ?」


愛羅の言葉に紅弥は頷く。


「そうだ、そして三神器を管理する家の一つ。何故、そいつらが『夜叉姫』を必要とする?」


「あの子が言ってた通り『世界を手に入れる為』なんじゃないの」


「世界を手に入れて、何のメリットがある?」


「……さぁ?」


「…多分、あの餓鬼達には別の目的があるはずだ」


確信めいたように話す紅弥に、愛羅は考え込んだ。

確かに、世界を手に入れたとして、その後どうするのか…考える事も想像する事もできない。

だが、別の目的があるとしてもそれがなんなのか、分かるはずもない。


「それは、この事件を追ってればおいおい分かるんじゃない?…それよりも、僕も一つ聞きたいんだけど」


「何だ?手短に話せ」


「何で、あの子は君を『緋守家分家次期当主』なんて呼んでたの?君も、緋守家当主候補だったよね?」


愛羅の問いに、ピタリと動きを止める。

彼の式達も顔を強張らせた。


「どういうこと?話してくれるよね?」


詰め寄るように畳み掛けてくる愛羅に、紅弥は小さくため息をついて口を開いた。


「…俺は『緋守家当主候補』を辞退して『緋守家分家次期当主』に任命された。只それだけだ」


「辞退って…何で?」


「俺は、元々分家の人間。『本家当主候補』に名前が挙がったことのほうが異例なんだ。まぁ、それも『現当主』による『お前を覚醒させる』為のものだったわけだが」


「つまり…元々君は『本家当主』になれるはずがなかったってこと…?」


「そうだと言ってる。と言うよりも、次期当主はお前が生まれた時から既にお前で決定してる。それなのに『候補』とか言い出したのは、お前の覚醒を促す為。失敗に終わってるがな」


「あの、狸の計画だったと」


現当主であり父親である灯火を『狸』呼ばわりはどうかと思ったが、あえて指摘はしなかった。

正直、紅弥も灯火に対して不満がある。

自分を愛羅の好敵手に仕立て上げるのは別に良い。事実、紅弥にとって愛羅は『好敵手』と呼ぶに相応しい相手だし、候補じゃなくてもお互い好敵手になっていたと言える。

しかし、自分を捨て駒のように使おうとしたそのやり方が気に食わない。


「あの狸…この件が終わったら一発殴ってやる」


「…俺も手伝う」


このとき、確かに二人の間に堅い友情が芽生えた。


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