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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第4夜 現れた敵02

「やぁ、初めまして、かな?緋守家の次期当主、並びに緋守家分家次期当主殿」


少年は嘲笑いながら、愛羅達へ視線を向ける。

明るい茶色の髪に藤色の瞳に、見覚えがあった。


「その髪に瞳…君は地藤家の一族だね」


「その通り、次期緋守家当主殿。僕は地藤大樹ジトウ タイジュ、地頭家現当主の弟だよ」


「地藤家か…まさか、お前ら一族が関わっていたとはな。厄介なはずだ」


紅弥は大樹を睨みつけながら吐き捨てた。

大樹も紅弥を睨みつけ、手すりの部分に立ち上がった。


「分家当主殿も関わってるとは思わなかったよ。君達が仲悪いのは僕達の耳にも入っていたからね。今回も、君達が仲違いをして有耶無耶になってくれるのを期待してたんだけど…旨くいかないもんだね」


緋守家当主殿だけでも手一杯なのに、全く面倒を起こしてくれる、と不機嫌そうに溜息と共に放たれた言葉に、愛羅は大樹を見据えた。


「今回の件は、君達が主犯と見ていいんだね」


愛羅の言葉に、大樹はニヤリと意味深な笑みを浮かべる。

その表情に、ゾクリと悪寒を感じた。

深い闇を抱えたその瞳から、眼が離せない。


「勿論、今回の件は僕達地藤家の仕業だよ。数百年前、神子によって封印された『夜叉姫』を手に入れるためにね」


「夜叉姫…ですって?!」


「まさか、アレを目覚めさせるなど…正気ですか?!」


「……愚かな」


「三人とも、何か知ってるの?」


『夜叉姫』と聞いて口々に言う式神達に問えば、紫苑が愛羅に話し始めた。


「『夜叉姫』…数百年前、その身に『白鬼』を宿し生まれた娘。生まれながらに『鬼』としての力を持ち合わせ『神通力』をも使いこなす破壊神。本気を出せば…世界を掌握するのも簡単な事」


「そんな…って事は、地藤はその子を使って世界を掌握するつもり?!」


「その通り。あの力さえ手に入れば、こんな世界など簡単に手に入る」


「世界を手に入れてどうするつもりだ?」


紅弥の問いに、大樹は嘲笑を浮かべ


「そんな事、君達には関係ない。話す必要ないだろ?」


と言い放つ。

いったい地藤家は何を考えているんだ、と愛羅達は眉を寄せる。

この世界を掌握して何の意味がある?


愛羅達の考えを読んだのか、大樹は更に嘲笑う。


「考えたって無駄だ。君達には想像できないよ、僕達の考えなんてね」


そういって懐から一枚札を取り出すと


「闇に飲み込まれてしまえ」


その言葉と共に放たれた札は、花音に当たる。


『きゃぁぁぁぁぁ!!!』


花音に悲鳴と共にブチンッと数珠が切れ、ばらばらと床に落ちる。

花音自身は、黒い影に飲み込まれ、消えてしまった。

そこに残っているのは、彼女の依り代と使用していた人形だけ。


「なっ?!」


驚く愛羅達を他所に、大樹はニッコリと笑い


「言ったとおり、彼女を…駒を返してもらったよ。君たちにこれ以上邪魔されるのもなんだし、これと遊んでいてよ」


そう言って放たれた札から召喚されたのは


「グルルルルル…」


巨大な大蛇だった。


「大蛇……それもかなり大きい」


「ふふっ、その子はそこら辺の式よりずっと丈夫で好戦的だ。君達にはぴったりだろう?せいぜい死なないように頑張ってよ」


ひらひらと手を振って、フッとその場から大樹は消えた。

残されたのは、彼が用意した大蛇と愛羅達。


「こいつを倒さないと、ここからは出れないみたいだな」


焔はそう告げるとボゥッと炎に包まれて、本性に戻った。

蒼銀の毛並みに蒼い焔を纏わせ、金色の瞳が大蛇を射抜く。

本性の姿に戻った焔はかなり大きい。

4尾の尾のうち一つで、愛羅を護るように包み込む。


「焔が本性に戻るなんて久しぶりだね。それぐらい、アレが強いってこと?」


「…あいつは水神の類、小さいままだと少し不便だ」


愛羅の問いに、焔は唸りながら返す。


「水神って事は、お前にとって不利な相手なんじゃないのか狐」


「黙れ小僧、俺を誰だと思ってる。アレぐらいの小物、相性なぞ関係ないわ」


紅弥の皮肉に地面を這うような低い声で返す。

紅弥の言ってる事は正しい。

けれど、それは焔にはあまり当てはまりはしない。

焔は『空孤』と呼ばれる妖孤であり、神に近き存在。

一方相手は『水神』の類のものだが『水神』そのものではなく、焔から見れば下等な妖らしく相性なんて関係なく潰せると言うわけらしい。


「…紅林達じゃ駄目なの?」


「紅林達は、まだこの先色々やってもらう事があるだろう。こんなところで、力を使い切られると困る」


焔の言い分に、紅林たちも頷く。


「私達でも、アレの相手は可能だけど…大量の魔力を使っちゃうわ」


「この先を考えると、ここは焔さんに任せた方がいいかと」


「…私もそう思う」


三人にそう言われ、愛羅は「わかった」と頷いた。

確かにこの先、あの大樹と対峙する際に彼女たちの力を頼る事になる。

こんなところで力を使うよりかは、温存させた方がいい。


「頼むよ、焔」


「任せとけ」


ボォッと、焔を包む焔の勢いが増した。


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