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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第3夜 旋律10

ヴィン...と琥珀の能力により龍ヶ崎コンサートホール前に着いた愛羅達は、会場の扉に手を掛けた。


バチッと微かに火花が散り、愛羅の手は弾かれた。

それを見た愛羅は、眼を見開く。


「!!」


「どうした?」


「……焔、もしかしたら…首謀者に会えるかもしれないよ」


「どういうことだ?」


愛羅の言葉に、焔は訳が分からないといった表情で愛羅を見上げた。


「……扉に、術が掛けられてた。多分、『力ある者』以外を中に入れないようにする為のものだと思う」


その一言に、焔は驚きを隠せなかった。

力を使った気配は感じられない。

しかし、愛羅は『術』が掛けられていたと確かに言った。

『術』をかけた名残を残さないとなれば、相当な使い手の筈。

本当に厄介なことになった、と焔は心中で溜息を盛大に零した。


「どうしたんだ、愛羅。入らねぇのか?」


「いや、なんでもない」


紅弥の声に軽く首を横に振り、扉を開ける。

ギギギ...と重い音を立てながら大きな扉は口をあけた。


「花音、おいで」


「は、はい」


花音の手を引き、中へと誘導する愛羅の後ろを紅弥達もついていく。

中は市の中で一番大きいコンサートホールだけあってかなり広く、ステージも広い。


「あのピアノだね?」


「は、はいっ。あのピアノです」


花音はステージに置かれているピアノに駆け寄った。

その顔は本当に嬉しそうで、愛羅は知らず知らずのうちに微笑んでいた。


「愛羅…紅林を呼んでおけ。何が起きるか分からん」


「うん、紅林、出ておいで」


愛羅の声に応える様に紅玉が光りだし、紅林が姿を現した。

姿を見せたと同時にキョロキョロと周りを見渡す紅林に、愛羅は首を傾げた。


「紅林?どうかした?」


「愛羅…この空間、変よ。琥珀も紫苑も感じるでしょう?」


紅林の言葉に、琥珀も紫苑も頷いた。


「えぇ…ここと“外”の流れが…微かに違います。それに…本当に微かですが『魔力』も感じ取れます」


「どうやら、ここ(コンサート会場)を隔離されたみたい。私達は、閉じ込められた」


「隔離……?」


紫苑の言葉に、愛羅は眉を寄せる。

つまり、今この中は外からの干渉を全く受けない反面、こちらからも外部と接触できない、と言うこと。

ここで何が起ころうとも『外』に影響は起きない。

そう考えれば、一つの可能性に結びつく。


「……罠?」


「そう捉えても宜しいかと…。ただ、あちら(人間界)から切り離されただけで私達の本来あるべき世界(異世界)との繋がりは断ち切られておりません」


「でも、それも時間の問題だよね…。紅弥、話聞いたでしょ?式を喚べるだけ喚んでおきなよ」


「…律、炎珠出て来い」


紅弥の言葉にしゅんっと姿を現した律と炎珠は、出てきた瞬間顔を歪めた。

どうやら、彼らにもこの異様な空間を感じ取れるようだ。


「何か変な空間に閉じ込められたな、紅弥」


「……心地が悪い。色々な力がぶつかり合って歪んだ空間みたいだな」


炎珠はそう呟いて、ぎろりと紅弥を睨みつけた。

こんなところに呼ぶな、と言いたげなその眼光に、紅弥も負けじと睨み返す。

バチバチッと音が鳴りそうな睨み合いを続ける2人に、律は苦笑を浮かべるだけ。

愛羅達はというと、もう慣れたのか放っておくことにしたようで、見向きもしない。


『あ、あの…』


「ん?何?」


『その、弾いてみていいですか…?』


先程からずっとピアノを眺めていた花音が遠慮がちに問う。

その視線はちらちらとピアノに向けられ、とても愛らしい。

愛羅はそう思いながらも、了承の意を返す。

元々ここに来たのは、彼女の為だ。

彼女の思うとおりにしたらいい。

そんな内容を伝えると、花音は本当に嬉しそうに笑った後、ピアノに指を滑らせた。


ポロロン...とピアノの音が、会場に響き渡った。


その音は以前のような悲しみはなかった。


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