表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
27/41

第3夜 旋律06

ボォォォォ... と炎珠の放つ炎が陣を飲み込む。

その様子は凄まじく、肌を撫でる熱風がその威力を物語る。


「やったかっ…?!」


期待したような眼でその様子を見る紅弥だが、炎を放ってる炎珠の顔は厳しいものになり、額には薄っすら汗が浮かんでいた。


シュゥゥゥゥ... と激しく渦巻いて陣を飲み込んでいた炎が、突然消えた。

陣は傷一つなく、未だその姿を保っていた。

皆の視線が炎珠に向けられる。

先程の炎にかなりの魔力を注ぎ込んだのか、炎珠はぐったりと壁により掛かっていた。

顔色も少し悪く、苦しそうに顔を歪めていた。


「炎珠っ!!」


心配そうに炎珠の傍にいく律に、炎珠は片手をあげて制した。


「だ…い丈夫だ。少し、魔力を使いすぎた」


「魔力を使いすぎて大丈夫なわけあるか。ほら、寄りかかれ」


律の言葉に反論する気力もないのか、炎珠は素直に律の方に寄りかかった。

その様子に、皆、苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。


「紅林、サラマンダーの魔力はどれぐらい?」


「…私達を100とするなら、彼の魔力はざっと85ぐらい…貴族級の魔力よ。大抵の事は出来るくらいかしら」


「…琥珀、陣の方は?」


「…全く傷ついていません。先程の魔力を受けていたら少しは崩れると思いましたが…ビクともしていませんね」


紅林と琥珀の言葉に、愛羅は頭を悩ませる。

上級の魔力でも、あの陣は壊せない。

『普通』なら、紅弥の式である炎珠でも壊せるものらしいが、あの陣は壊せなかった。

つまり『普通じゃない』ということ。


「―――おい、様子が変だぞ」


焔の言葉に、全員の視線がピアノに向けられた。

―先程まで、ピアノを一心に弾いていた少女が、こちらに視線を向けていた。

その瞳は虚ろで彼女の意思が感じられない。

それどころか、ピアノに纏わりついていた影が、彼女にも纏わりつき始めた。


「さっきまで、こっちの事気にも止めてなかったよね?それに、影が…」


「おそらく、あの陣に手を出したからだろ。影はあの霊を支えてるようだな。まぁ、今の姿を保ってるのは陣だからな。陣にしかけたのは少しは効果があったということか」


「と言うことは、僕達は彼女の標的になったって事?」


「そういうことだ。気を抜くなよ、愛羅」


焔は威嚇するように、少女を睨みつける。

焔の体からは金色を帯びた炎が纏わりつく。


『―――て』


少女の口が、動く。


『――し…い…』


「あの霊、何か言いたいみたい」


そう言うと、紫苑は少女の例の前まで移動した。

『闇』と『無』の力を併せ持つ彼女は、操られた霊との交信が得意だ。

そのことを知っている愛羅は、黙って事の成り行きを見守ることにした。


「あなたは、何を伝えたいの?私が届ける、話して」


紫苑の紫の瞳がキラリと光る。

それに合わせて、少女の瞳に微かに光りが灯る。


『―――て、く…しい…けて』


だんだんと少女の言葉が紡がれていく。


『…苦、しい…助けてっ!!!』


ブワッッ


「!!」


「紫苑っっ!!」


少女が叫んだと同時に紫苑は吹き飛ばされた。

おそらく、彼女に纏わりついている影の力だろう。

吹き飛ばされた紫苑を何とか抱き留めた愛羅は、視線を少女に向ける。


『助けて…邪魔をするな…苦しい…手を出すな』


反対の言葉を交互に吐き出す少女。

己の意識を取り戻しつつある少女に、愛羅の瞳に希望が宿る。


「焔、あの子が意識を完全に取り戻したら、陣の威力も弱くなるかな?」


「…そうだな、あの霊の意識を取り戻せば、負の力の供給も難しくなる。必然的に、陣の力が弱くなるだろうな」


焔も、愛羅の言いたいことを理解し、再び少女に視線を向ける。

支配と自分の意思の覚醒で苦痛の表所を浮かべる少女。

ここから、彼らの反撃が始まる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ