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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第2夜 神の子10

皇夜が愛羅たちを案内したのは、社の奥の部屋だった。

先程までの雰囲気が微かに変わり、ひやりと冷たい空気が頬を撫ぜる。

微かに変わった空気に、愛羅は眉を寄せた。


「…空気が、変わった」


「流石、次期当主だね。ほんの少し空気が変わっただけなのに、気付くなんて」


皇夜はくすっと笑って、札が無数に貼られた襖の前に立ち、愛羅達に視線を向けた。


「ここ、だよ。正確には、この中…だけどね」


「……この札、魔封じの呪が掛けられてる」


「…それに、押さえ込んでいますがかなり大きな負の力が感じられます」


「…どういうことだ、皇夜」


紫苑と琥珀の言葉に、焔は皇夜を睨んだ。

しかし、皇夜は焔の睨みも物ともせず片手を襖に添えた。


「警戒しなくてもいい。彼女は害のある者じゃないよ…少なくとも今はね」


「今は…ってどういうこと?」


「その話は中に入ってから話す。少し下がってて」


皇夜はそう告げ、襖に手を掛けた。


ズ…ズズ…ズ…と襖は音を立てゆっくりと開いていく。

中は薄暗く、意外と広い。

パチンッと電気をつけると、部屋の奥まで見渡せる。


「!!」


部屋の奥のある一角を見て、愛羅たちは動きを止めた。

そこにいたのは、体を鎖で縛られ、体中札を貼られて氷に閉じ込められている少女。

幼い顔立ちから、14,5と言ったところだろうか。


「俺が君達に見せたかったのは、彼女だ」


「彼女は…一体…」


「あの札、襖に貼られていたのと一緒」


「負の力も、彼女から発せられてます」


琥珀と紫苑は氷付けの少女の周りを飛び回りながら告げる。


「あの女…妖か?」


「違うよ、焔。彼女は、人間だ」


今は、まだね…と複雑そうな表情で告げる皇夜に、愛羅は眼を細め少女に視線を移した。

彼女の表情は酷く穏やかだ。

琥珀は「負の力」を感じると言っていたが、負の力を持った人がこんな穏やかな表情を浮かべるかと訊かれたら、答えは否だ。

負の力は表情も曇らせる。

こんな穏やかな表情を浮かべる彼女に負の力が宿ってるとは信じがたい。


「……彼女は…今回の事件に何らかの関わりがあるの?」


「さぁ?そこまでは俺も知らない。ただ、あそこに亜空間が出来始めてから彼女に施された術が綻び始めた。関係してない、とは言いきれないだろう?」


「確かに…関係はありそうだな」


「術が解ければ、彼女は目覚める。そうなると、厄介な事になりかねない」


「…そもそも、何で封魔の術を施してるんだ?あの女が『人間』なら術を施す必要はないだろ」


「すまない、それについては今は何とも言えない」


皇夜は首を横に振ってそう告げた。

どうやら訳有りのようで、焔もそれ以上追求できなかった。


「……あの亜空間が、この部屋と繋がると言う可能性は?」


「0とは言い切れないな。繋がることはないだろうが、飲み込まれる可能性はある。この世界も現世に近い位置に存在してるから」


「紫苑、ここから旧校舎に飛ばせる?」


クルリと振り返り紫苑に問うと、紫苑はコクリと頷いた。


「じゃぁ、僕達を旧校舎まで飛ばしてくれる?」


「了解」


「あー…俺が送ろうと思ったんだけど」


「ありがとう、皇夜。けど、皇夜はこの事件が解決するまで姿を見せない方がいいと思う。何か、嫌な予感するから」


愛羅の言葉に皇夜は考える素振りを見せると、小さく頷いた。


「まぁ、愛羅の言う事も一理あるか。じゃぁ、気をつけて」


「うん。紫苑、お願い」


琥珀と焔を抱き上げ、紫苑に指示を出す。

紫苑はヴォンッと身丈ほどもある杖を取り出し、トンッと床を叩いた。

その瞬間、ヒュンッと愛羅達の姿は消えた。


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