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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第2夜 神の子09

「……ん」


ゆっくりと目覚めた愛羅の瞳に映ったのは、見慣れた旧校舎ではなく大きな鳥居と社だった。

辺りを見渡すと、焔も琥珀も紫苑もいない。

普段なら離れていても感じる気配さえ感じられない。

一体ここは何処だ?と辺りを睨みつける。

意識を失う前、紫苑が言った言葉を思い出す。


『異空間に繋がる』


その一言が、愛羅の頭の中を過ぎる。


「紫苑は確かに『異空間』に繋がるって言った。ってことは、ここはあの場所と似ていて異なる場所…?」


「正解」


突然聞こえた声に、ばっと振り返る。

そこにいたのは、『冥府の神子』だった。

ただ、あの時とは違い、服装は中華風で鎖が絡められている。


「冥府の神子…様」


「皇夜」


「……は?」


「俺の名前。『冥府の神子』とか仰々しく呼ばれるのは嫌いだから名前で呼んで」


「しかし、『真名』は……!!」


「大丈夫。『皇夜』って言うのは君達で言う『愛称』だ。『真名』じゃない」


『真名』を知られるのは危険な事。

『真名』を敵に握られると言うのは自分の命を握られたも同然。

それを、こう簡単に人に教えるなんていいはずがない。

ましてや『冥府の神子』と呼ばれる彼の名は、それこそ軽々しく口にしてはいけないはず。

そう危惧している愛羅に、皇夜はケラケラと笑ってそう告げた。

確かに、彼は元人間だとしても現在は神の眷族に当たる。

おいそれと『真名』を名乗るはずがない。

そう己を納得させた。


「……では、皇夜様」


「『様』もいらないし、敬語も要らない。君とは普通に話したい」


「……あなたは、『神の眷属』と言う立場を分かってますか?」


「分かってるよ。けど、『偉い』のは父さんで俺じゃない。それに俺は元人間だ。愛羅達とは普通に『皇夜』として話したい」


「…わかった」


全く譲る気のない皇夜に愛羅は小さく溜息を吐いて了承するように頷いた。

こうでもしないと話が進まないと思ったのもあるが、話している間皇夜が見せた寂しそうな表情が愛羅を頷かせた。


「で、最初に戻るけど、ここは君達の言う『異空間』。俺の住処だよ」


「ここが…皇夜の…」


「そっ、ここは云わば生と死を分かつ場所。向こうに見える川を渡れば冥府だから渡らないように」


そう言って指差された奥の方には確かに幅の広い川が流れていた。

川の向こう側に微かに見える地、あそこが冥府の玄関口。

ぼぅ…と川を眺めていると、皇夜が愛羅の名を呼んだ。


「はい?」


「とりあえず、社の中においで。君の使い魔もパートナーも中で休んでる。君も社の中へ呼んだつもりだったんだけど…どうやら、君の妖力は俺の力より強いらしい。本能的に俺の力をはじき返したみたいだね」


くすっと笑って社へ導く皇夜の後を、愛羅は大人しくついていく。






社に着くと、皇夜の言った通り三人がそこにいた。

心配してくれていたらしく、愛羅が姿を見せた途端三人に飛びつかれた。

その様子を皇夜はケラケラ笑いながら眺めていた。

一通り抱擁を済ませたのか、四対の瞳が皇夜へ向けられた。


「私達を呼んだのはあなたでしたか、皇夜様」


「うん、ちょっと強引だったけどね。まぁ、事態が事態だから」


「それにしても、もう少しやり方があった」


「君がいたからこのやり方にしたんだよ、虚空の君。それに万が一の事があってもここは俺のテリトリー内だし、幽華の君がいるのも確認できたから」


琥珀や紫苑と話す皇夜に、愛羅は眼を瞬かせた。


「琥珀、紫苑…皇夜と面識あったの?」


愛羅の問いに、二人ともこくんと首を縦に振った。


「我々と冥府の方々は意外と接点が多いんですよ、愛羅」


「特に、琥珀と私は冥府の特質を持ち合わせてる。彼らと面識があるの、おかしくない」


「そうなんだ…知らなかった」


少なからずショックを受けている愛羅の頭を皇夜はヨシヨシと撫でた。


「知らなくても仕方ないよ。そんな話、知ってる方が特殊だ」


慰めてくれる皇夜に、愛羅は小さく「ありがとう」と笑った。


「で、俺達をわざわざ呼んだ理由は何だ」


焔の言葉に、皇夜はスッと愛羅から離れ奥へ続く廊下へ出た。


「君達に見せたい物がある。ついておいで」


そう言って奥へ向かう皇夜の後を、不思議そうに首を傾げながらもついて行った。




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