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封蓮貴  作者: 如月皇夜
第一章 旋律
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第2夜 神の子08

鳳凰の間から自室へ戻ると、琥珀と紫苑を喚びだした。

フワンッと現れた二人は愛羅に視線を向けた。


「愛羅、動くの?」


「うん、そろそろ本格的に動きたい」


「学校へは…行かないのですね」


愛羅の格好を見た琥珀は小さく苦笑した。

普段なら制服を纏っているのだが、今朝は仕事の時の正装を身に纏っている。

「単位の方は大丈夫なんでしょうか…」と心配そうに呟く琥珀に、焔は「大丈夫だ」と声をかけた。

出席日数は少ないだが、成績がずば抜けていいのだ。

少々出席日数が足りなくても、そちらの方でカバーできる。

しかも家系が家系なだけに、学園の方も了承済みだ。


「…水城に連絡入れなくて平気?」


紫苑の言葉に、ピタッと準備をしていた愛羅の動きが止まる。

が、すぐに準備を再開した。


「大丈夫だよ。蓮の事だから、察してフォローしてくれる」


「愛羅は、水城さんにかなりの信頼を寄せてますから」


「あぁ、あいつは頼りになるよ。勿論、皆もね」


準備を完璧に終えた愛羅は焔達に視線を向けて、「行こう」と窓の枠に手を掛けた。

もしかしなくても窓から出て行くつもりらしい。


「おい、玄関から行けよ」


「嫌だ、いつあの人に捕まるかわかんないからね」


「あの人…愛羅の父親?」


「成る程、愛羅はお父上が苦手でしたね」


琥珀が苦笑しながらも、窓から出ようとする愛羅を補助する為に、外の窓の下に柔らかい竜巻を造った。

愛羅の自室は三階と意外に高い場所にある。


「だからって、仕事の度に窓から出て行くのはいい加減止めろよ」


若干呆れた様子を見せる焔を、笑顔を浮かべて有無を言わせず肩に乗せ、桟に足掛け窓から飛び降りた。

琥珀の造ってくれた竜巻のおかげで怪我せず下に降りた愛羅の元に、琥珀と紫苑もフワリと降り立った。


「そういえば、紅林は喚ばれないんですか?」


「あぁ、紅林は必要なときに喚ぼうと思って。紅林の『気』は強すぎるから」


『魔』の頂点に立つ紅林は、頂点に立つ5人の中でも一際強い『気』を放つ。

その彼女を出したままだと、あの場所に強く影響を与えてしまう、と愛羅は危惧した上での判断だった。


「うん、紅林の『気』は強いから色々影響与えそう」


紫苑も愛羅と同じことを思ったのか、頷きながら同意した。


「そうですね、場所と今までの経緯を考えるとそれが最善の判断ですね。それでは行きましょうか」


「うん。琥珀、お願い」


「お任せください」


こくんと頷いた琥珀は、ヴォンッと大きな鏡を造り上げた。

鏡の中はどこかと繋がってるのか、真っ暗闇で何も見えない。


「ひとまず、旧校舎入り口前へ繋げました」


「上出来、ありがとう琥珀」


「いえ、愛羅のお役に立つことが、私達の喜びですから」


ニコッと笑う琥珀を撫で、ズプズプと鏡の中に入っていく愛羅に、焔達も続いた。


ヴォンッという奇怪な音と共に愛羅が姿を現した場所は、琥珀の言っていた通り旧校舎の入り口前。

早朝だからなのか、それともこの場所が独特だからなのか、辺りは静まり返っている。


「……相変わらず霊気は濃いね」


「けど、霊の気配はしませんね…。霊気そのものが“霊”として存在しているようです」


「琥珀でも霊の気配は感じられない?」


「はい、残念ながら」


琥珀の言葉に愛羅は考え込む。

琥珀は探索のエキスパート。

彼女が『見つけられない』と言うのなら、ここには霊なんてものが存在しないということになるが…。


―…ーンッ


「…今、聞こえた?」


「うん」


「はっきりと。どうやら鈴の音のようですね」


「鈴?今回の依頼で被害者が聞いたのは『旋律』だろ?鈴の音なんて報告はないはずだ」


焔の言葉に愛羅も頷く。

今回の元々の依頼は『謎の旋律』が主な内容だった。

色々ありすぎて自体は大きくなっているが、元の依頼は『旋律について』だった。

その中で『鈴の音』なんて言葉はなかったはず。


―…リーンッ


「だんだん、音が大きくなってる」


―…リリーンッ


「と言うか、近づいてきてる…?」


…チリリーンッ


はっきりと、鈴の音が聞こえた瞬間


グニャァッっと周りの景色が歪み出した。


「どうなってる?!」


「わからないっ。紫苑ッ、琥珀ッ?!」


「私にも分かりませんっ」


「……異空間に繋がる」


「紫苑?!それはどういう―――」


紫苑に問いかける途中で、愛羅は意識を手放した。


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